第190話 ようこそプレハブダンジョンへ!

 健太の願いはまだまだダンジョンに行きたいことだったみたいだ。その願いも叶いダンジョンは俺の部屋と繋がっている。そしてファーナさんの願いはおやつではなく、ダンジョン攻略後も俺たちと会えるように…だったとか。なんだかんだでファーナさんも一緒にダンジョンで過ごした時間がとても楽しかったのだろう。まあ俺も楽しくなかったといえばうそになるがね。でももう10階層のようなボス戦はごめんだ。


「なるほどです…それで3人ともここに現れたのですね」


 楽しそうにレイノアールが笑った。ダンジョンに見せられた内容からは考えられないくらいに楽しそうに。


「あれーー? ここ何?」

「新、発見?」

「…ミ、ミネッ リノッ??」


 突然部屋にミネとリノが現れた。キョロキョロと見回し俺と目が合う。


「あれ? ヨシオたちじゃない。なんか新しい行き先が出てたから覗きに来てみたんだけど、ヨシオたちも?」


 ミネとリノの無事な姿を見て俺も健太もファーナさんもほっとした。このまま会えなかったらどうしようかと思っていたのだ。だけど…


「レイノアール…いくらここもダンジョンだからと言って、こう気軽に人が来ると困るのだが…」

「そういわれても…あ、そこの壁にあるタッチパネルで何か操作できないかしら?」


 外へと出る扉とは反対側の壁に見慣れたタッチパネルがあった。レイノアールと一緒にそのタッチパネルを覗き込むと一応出入りをロックすることが出来るようだ。ただ俺が内側からロックしたらもう誰も入れなくなってしまうだろう。それはそれでファーナさんやミネとリノもちろんレイノアールもだが、みんなと気軽にはあえなくなるだろう。


「閉めちゃうんですか?」


 レイノアールがじっと俺のほうを見ている。ファーナさんもどうなるのか気になっているようでこっちに視線を向けているし。


「ねーほんとここは何なの?? というか知らない人もいるし何なの??」

「説明、欲しい」


 ミネとリノに詰め寄られる。仕方がないのでざっと攻略したこととこの部屋のことを教えた。


「わー10階層ってもう一人の自分と戦うのか~」

「チャレンジ、したい」

「ふぇ?」


 そういうとミネとリノはがっちりとファーナさんを両脇から捕まえている。どうやら9階層の罠の解除のために連れていきたいようだ。


「ええー私もー?? というか今からー?」

「「もちろん」」


 ずるずると引きずられるようにしてファーナさんを連れて2人はタッチパネルへと進んでいく。


「ヨシオ、ロック、だめ。ケンタ、ファーナは、人質…」

「な、なんだそりゃ…」


 それだけ言い残すと3人はダンジョンの中へと消えていった。後に残された俺と健太は顔を見合わせてつい笑ってしまった。


「俺もちょっとだけダンジョンいてくるかな~ 締め出しすんなよ~?」

「はぁ…わかったよ」


 にやりと笑った健太もダンジョンへと行ってしまう。残された俺はため息をつきつつも実はうれしかったんだろうな。なんか少しだけ顔が緩んでしまった。ファーナさんの願いだもんね。勝手に閉じるわけにもいかないだろう。


「あなたはいかないのですか?」

「ああ、俺はこの部屋の管理者だからな」

「そうですか」


 夏休み突然俺の部屋になる予定だったプレハブにダンジョンが出来ていた。健太と一緒に色んな体験をし、出会いもあった。まさか俺の部屋であるプレハブがダンジョンになってしまうなんて思いもしなかったが、今はそれなりに楽しんでいる。レイノアールの管理するダンジョンへ来た人たちがたまに俺の部屋へとやってくるのだ。もちろんその中にレイノアールもこっそりと混ざっていたりする。


「なあよっすーもたまにはダンジョン行こうぜ~」

「俺は部屋の管理で手一杯だよ」

「ちぇーっ」

「ほら、また新しい人がやってきた…ようこそプレハブダンジョンへ!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ようこそプレハブダンジョンへ!~由緒と健太のプレハブダンジョン奮闘記~ れのひと @renohito

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ