第182話 俺に似た人
「うをおおおおおおーーっ 何だこりゃ、なあよっすー よっすー??」
後から10階層へと移動したはずのよっすーに声をかけるが返事がない。振り返って後ろを見るとそこにいたのはよっすーじゃなくて俺に似た知らない人だった。
「誰だ…?」
訊ねてみるが相手は返事をしない。どうやら答える気がないようだ。それにしてもよっすーだけじゃなくファーナさんもいないじゃないか…というか俺ひとりじゃん! やっべーなにこれ無理ゲー?? 積んだ?
「なあ誰か知らないけどここって10階層であってるのか??」
再び俺に似た人に話しかけるがやはり返事はない。というか俺と同じように首傾げんじゃねーよキモイな。
こういう時は下手にうろつかないほうがいいと思うんだが埒があかねー…っていうか両手を横に伸ばしてみても壁もねえときたもんだ。とりあえず床はあるから立っていられるみたいだから進んでみるか? そのうちよっすーたちにも会えるだろう。
「………」
とりあえずまっすぐ歩き始めると俺に似た人も後ろをついてくる。ほんとなんだよこいつ…うぜえ。走って引き離すか? いやまてよ…そもそもこのダンジョンにいた人たちってみんな顔見たよな。じゃあやっぱ誰だよこいつ…敵っていうか魔物とかだったりするのか? そういえばRPGとかで物まねをしてくるやつとかいなかったっけ…それか?
振り返って相手をじっと眺めてみる。やっぱり俺にそっくりだ。右手を上げると相手は左手を上げた。前に突き出すと相手も同じように手を前に突き出した。その手が俺の手に触れる。
「…なんだこれ、温かくも冷たくもないとか」
どう考えても普通じゃないってことは流石に俺にもわかった。ということは敵ってことでいいよな? 俺はベルトに差していた短剣を取り出すと構えた。もちろん相手も同じように構える。
「めんどくせぇ…」
こういうのってどうやって倒すんだ? 多分おんなじ動きするってことなんだよな。反対の手に持っている盾でとりあえず相手にぶつかってみる。やっぱりぶつかってくる。というかお互いぶつかったら押されて尻もちついた。相手も同じように座り込んでいるがな。ということは短剣で切りかかったらやっぱ痛いのかなー俺が。やだなー何か方法ないんだろうか…あーそういえばこいつ喋らないよな。
「『俊足』!」
お…こいつより早く動けるかもこれだと同じ動きしても俺のほうが先に逃げれるんじゃね? ということは切りかかって逃げる! これしかないな。というかこのスキルすっかり忘れてて初めて使ったわ!
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