第176話 ミネとリノ4
おおお落ちる〜〜〜っ 落ちちゃう!! と言うかもう無理。見知らぬ男の人ごめんねっ
「『フライト』!!」
念のために魔法は使うけども落ちる速度を落とすくらいにしか役に立たない。私が魔法を使ったのとほぼ同時に穴の中へと私の体は落ちていく…当たり前だった。浮いたことによって支える力がなくなったんだもの。
「きゃあああああ……あ?」
あれ…浮いてる。手は離していない。男の人は気絶してるけど……落ちてる? 落ちてない? 下を見て上を見る…あれ? …あれ??
男の人の手を離す。私と男の人の距離は変わらない。『フライト』を解除するとストンと足が地面についた。男の人の横に私は立っている。
「落とし穴って…あはっ」
よく見ると穴の中の壁は色が黒かった。深そうに見えるただの仕掛けだ。深さは5mくらいかな…落ちてもちょっとあざが出来る程度だ。
「ミネー?」
「リノこっちーっ」
どうやらリノが戻ってきたみたい。私は再び男の人をロープで縛るとそのロープの先を持って『フライト』で穴の外へ出た。
「なんで、穴?」
「この男が逃げてファーナの罠にかかったのよ…」
「罠なの、これ…」
会話をしながらもリノはロープを引き男を引き上げる。よくこの体のサイズからこれだけの力が出るものだと感心してしまう。そんなリノの様子をじっと眺めていたら睨まれてしまった。
「…ミネ、お仕置き」
「ふぇっ?」
悪いのは私じゃなくてこの男の人なのに…なんで私が怒られてんのっ? なんか納得いかない~~!
「ミネ、多分、仕事、終わり」
「あ、うんそうね…」
無事男たちの回収が終わるとロープで縛った男たちを引きずりながら私とリノは出口へと向かう。これでこのダンジョンも無事攻略されて消滅することだろう。ダンジョンがなくなるのなら私たちの仕事は終わりだ。
「ファーナには悪いことしたね」
「しかたない、これも、仕事」
3人には調査だっていってたけど実は私とリノはダンジョン内で起きると予想される犯罪を取り締まっていた。このダンジョンは訪れた人数が少なくてとても楽だった。最初ファーナを疑ってしまったけども、今となってはそれもただの思い出だ。
「新しいダンジョンが出来るまでは休暇だね」
「ん、そうね。次も…近場がいい」
「そんなのダンジョンが出来るまでわからないよ」
ダンジョンの外に出ると眩しくて私は目を細めた。少しだけ楽しかった出会いとの別れ…これから訪れる休暇への期待。さみしいような楽しいような不思議な感覚で私とリノは依頼元であるギルドへと向かうのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます