第159話 レイノアールは見ていた4

 あの3人の男達は5階層の探索に入った。初日は陸の上をくまなく探索しているだけだったけどやはり海の中へと入らないといけないことに気が付くのが早い。次の日すぐに海に潜る準備をしてやってきた男たちはさらにその奥のダンジョンへと足を運んだ。ここの攻略もあっという間だった。

 力任せで進むこの男たちはあのファーナという人に会ったら一体何をするつもりなんだろうか。考えただけでも恐ろしい。私のダンジョンの中でとんでもないことをしてくれないことを祈るばかりだ。


 男達が6階層へ足を踏み入れた。リビングアーマーに囲まれて少しだけ進行速度が落ちた。リビングアーマーの体力を削るのに少しだけ時間がかかる。それでも立った1日でボス部屋前までたどり着いてしまう当たり実力があの人達より上なのが分かる。


 ちらりと別の画面を見るとあの人がいつもの場所でバットを振り回していた。ふらりと立ち上がりあの人のいる3階層へと向かった。すぐ隣に座り込み何をするでもなくただじっと作業の様子を眺めた。

 意思を伝えるのは多少なりとも魔力を消費するので言葉を口に出すことはしない。もう一度最後にあの男達の妨害が必要かもしれないからなのだけど…こんなことをしてるって前のダンジョンマスターに知られたら怒られてしまうかもしれないわね。


 軽く息を吐きだした後私は立ち上がり自分の部屋へと帰ることにした。再びぼーっと目の前の画面を眺める作業だ。


「あっ」


 あの人と男達が接触。男達が一方的に話をしてあの人を押しのけて帰っていった。とりあえずケガなどはしていなさそうで胸をなでおろす。本当にいろんな人がいのものだ。あの人だって別に言葉遣いとか丁寧なわけではないけれど、いやな感じはしない。でも男達はずっといやな感じがまとわりついているのだ。


 一度頭を振りマニュアルを眺める。マニュアルの表紙を軽くなでため息をついた。幾分気持ちも落ち着いてきたので私は普段の仕事へと戻ることにした。今日は9階層の状態を確認に行くことになっている。もうじきあの人たちが来ることになる階層だ。そして多分今までで一番危険な階層でもある。


「正常に機能するようにだけはしておかないと…」


 まずはモニター越しに表面上の異常がないかの確認をして、それから現地へ足を運び細かい調節をする。一通り確認が終わると私は体をベッドに横にし、少し眠ることにする。念のためダンジョンに誰か足を踏み入れたらアラームが鳴るようにはしてあるのでそれが聞こえるまでが私の休息時間となる。


「ダンジョンマスター…か」


 軽く言葉を紡ぐとその後は何も見えなくなった。


 

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