第124話 約束のおやつ

 次の日5階層のパネルの前で合流すると俺はリノとミネの鎧を合成し、俺達と同じように防御力を上げた。上がる数値に驚き大変喜ばれ、出来ることならもっと強化したいと頼まれた。もちろん俺は快諾したのだが、いかんせん材料が足りない。2人には材料集めもお願いしておくことになった。ファーナさんにも本来ならお願いしたいのだが、あの男達と1人で会ったら何が起こるのかわからないのでやめてもらう。


「じゃあ早速6階層へ行こうぜ!」

「ちょっとまってケンタ。その前にヨシオからおやつ貰わないと…!」


 目をキラキラとさせながらファーナさんがこっち見てる。もちろん忘れてたわけじゃないよ?

 俺はリュックからレジャーシートを取り出すと足元にひき、水筒と箱を2つ、それと紙コップもその上に置いた。いつも健太が持ってきているのが洋菓子系なので、今回俺が持ってきたのは和菓子だ。箱の蓋を開けると中に入っているのはこげ茶色をした四角い棒状のもの。某有名店の栗羊羹だ。


「これは?」

「ちゃんと甘いおやつだよ」


 ナイフで切り分け紙コップに水筒のお茶を注ぐ。もちろん中身は温かい緑茶だ。このくらいなら俺の家にだってあるし、自分で入れてこれる。抹茶じゃないのかと言われるかもしれないが、水筒でもってくるものでもないし、俺には入れられないし、そもそも一般家庭にあるわけが無い。

 羊羹に人数分楊枝をさすと俺はみんなの前に差し出した。真っ先に持っていったのはやっぱりファーナさんだ。甘いものと聞いて黙っているわけがない。一口パクリと食べるととてもいい笑顔をした。


「ファーナさんお茶も飲んで」

「あ、うん」


 お茶を飲んだファーナさんはさらに幸せそうな顔になっていた。やっぱりお茶と和菓子の組み合わせは最高だよな。あっという間に食べ終わってしまったファーナさんは残念そうな顔をしていたのでもう1つの箱を差しだす。


「これも同じだけど、約束だからファーナさんに」

「やった! あ…でもこのお茶も私のところには無いのよね。う~ん…今食べちゃおうかな」


 いやいやいや…さすがに羊羹1本丸ごと食べるとかやばいでしょう。まあもちろんおやつ大好きファーナさんがそういうことを言い出すことも考えていたので、ペットボトルの緑茶も渡す。これで俺もファーナさんの餌付けに成功してしまったかもしれないな。まあ…トゲトゲした態度でいられるよりはいいのでよりとしておこうか。


 ちなみにリノとミネも羊羹が美味しかったらしく。少しだけ名残惜しそうにしていた。

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