第66話 3階層のボス

 それから10分ほど歩いたところでボスが見える位置を見つけた。


「……」

「…そうきたか」

「2階層じゃやっぱ情報不足だったな」


 俺達の視界に見えているのはイノランタでもトンヤーでもなかった。枝を振り乱し歩き周る木…そうゲームやファンタジーとかで言うところのトレントに見える。


「モックンは私の矢とケンタのナイフじゃ火力不足だわ…」

「何なら有効なんだろう…やっぱ火とかか?」


 木で出来た魔物なら火が効きそうではある。やはりそうらしくファーナさんは頷いている。つまり俺のプチメテオでしか今のところ俺達には倒す手段がないということだ。


「あとは大きな刃物や重たい武器なら倒せるかもしれないです」


 なるほど…まあそれもボス部屋に行かなければどの道倒すことは出来ないし、早めに知ることが出来てよかったね、くらいだな。


 この時俺達は油断しすぎていたんだと思う。さっきファーナさんの攻撃が離れたところにいたイノランタを倒したばかりだったというのに…

 ヒュンッと音が聞こえたかと思うとその音を出したものはファーナさんに纏わりつきすぐ近くの木にファーナさんごと絡みついた。


「え…?」


 少し離れたところにいたモックンが枝を伸ばしファーナさんを木に縛り付けてしまったのだ。幸いなのはファーナさんの縛り付けられた向きがモックンからは見えない位置に貼り付けられている。これならひとまず直接攻撃を受けることだけはないだろう。


 俺と健太も慌てて近くの木の陰に隠れた。ファーナさんが腰にある短剣を取り出し少しづつ枝を切ろうと試みているが、うまく動かせないようで苦戦しているみたいだ。つまり相手を倒さない限り俺達は帰ることが出来なくなった。

 このままモックンを放置して逃げようとすれば背後から襲われてしまうだろうし、もちろんファーナさんを置いていくわけにもいかない。そして唯一の攻撃手段はプチメテオだけときた。だけどこの状態で魔法を使えばファーナさんも巻き添えを食らうだろうことが目に見えている。


「参ったな…」


 どうにかしてあそこまでいって倒すしかないだろうか…でもその間にこの場がこのままですむ保証もない。せめてモックンにだけ攻撃できる手段でもあればいいのに…


「くっそ~こっちが攻撃できないからって卑怯だぞ。俺の攻撃が通用するならタイマンとかでもやるのにっ!」


 いや~~それいっちゃう健太…さっきまさにファーナさんがやったじゃん。まあそれはいいや、それよりも何か考えないと…ファーナさんを解放する方法とここからどうにか逃げる方法。それと今のまま攻撃する方法とこんなところだろうか。ん…タイマン?


「よっすーどした?」


 俺がリュックの中をあさりだしたから健太が気になっているみたいだ。まあそれは放置でリュックの中から俺は筒を取り出した。そうまだ覚えていなかったスキル『ソリスト』…まさにタイマンスキルってやつだ、俺は紐を解きそのスキルをすぐに習得した。

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