第21話 脱いで!

「おわっなんかドロッてしてる!!」

「直ぐに洗い流してっ」


 どうもファーナさんに余裕がない様子だ。健太が戻ってくると健太とスライムの間に立ちふさがる。普通弓使いは前には立たないものだと思うのだが…


「早く!洗い流して入り口まで戻らないとっ」

「わ、わかった!」


 俺はリュックからペットボトルを出し水を健太の足にかけた。でもズボンが水分を吸うだけで直ぐには落ちない。その間もファーナさんがずっと矢を打ち続けている。


「あーーーーもうっその服脱いでっ…ついたままじゃだめ!!」

「わ、わかった!」


 ファーナさんの様子が普通じゃない…言われるまま俺は健太のズボンを脱がしにかかる。こんなときでもしっかりとベルトで止められており面倒くさい。カチャかチャとベルトを外そうとすると健太が慌ててそれを抑えた。


「ちょっ…いくらなんでも女の人がいる前で脱ぐとか!」

「恥ずかしいとか言ってる場合じゃないの!!そこで脱げないなら早く出口向かってから脱いでよっ」

「そうするわっ」


 俺達は走り出した。持ち来た道を戻り出口まで…ファーナさんがしんがりを勤めてくれててたまに振り返りながら矢を放ち足止めをする。それを繰り返していたら段々とスライム達との距離が開いていき緑色の姿も見えなくなった。


「はぁはぁ…」

「…っふぅ」

「ぜはぁ…っぜっごふぉっごふぉっ」


 走って乱れた呼吸を整えつつ俺達はその場に座り込む。周りをキョロキョロ見ながらファーナさんは俺達に背中を向けた。


「後ろ向いてるから早く服脱いで直接洗い流して」

「ああそうだな…所でさっきのスライムが吐いたのはなんだったんだ?」

「あれは…」

「ごふっ」


 ビチャッと赤いものが地面に落ちた。健太が突然血を吐いて体を抑えうずくまる。その状況についていけない俺は脱がせようとしてた手を止めおろおろする。


 すると後ろを向いていたはずのファーナさんが慌てて駆け寄り、健太のズボンをナイフで切り裂いた。あわられた健太の素肌はまるでどこかにぶつけたかのように一部分が変色していて驚いた。


「く…っここまで変色してたらもう水じゃ間に合わないっ…ヨシオ聞いて!ダンジョンを出たら解毒剤を購入してケンタに飲ませて。持っていればよかったのだけど薬高いから…だから、これも売って足しにして。」


 そう言うとファーナさんは今日拾ったアイテムを全部俺に押し付けてきた。


「え…でもこれもらったらファーナさん今日何も拾わず帰ることにならないか?」

「バカいわないで!お金より命のが大事でしょ?!」


 その言葉に怒られているはずなのに心が温かくなるのを感じた。この分はちゃんとお礼をしないとな…

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