第5話 ダンジョンを見つけた

6/19、後半に健太視点を追加しました

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 目の前の壁が振動しながら開いていく。遠くに外の明かりが見えていて少しだけ眩しく感じた。


「で、出れた…」


 思わず口から言葉がこぼれた。はっとして今出てきた先を眺める。このままだともしかしたらあいつらが出てきたりとかしないだろうか。


「なあ、よっすー俺火傷薬塗ってくるけどどうする?」

「ちょっと怖いけどここが閉じるの確認してから出るわ」

「わかったんじゃなー」


 健太が火傷の処置のために階段を上がって外へと出て行った。1人残り開いている入り口をただひたすらに眺める。もし出てきたら…どうしようか。


 そんな心配は必要なく1分くらいで勝手に閉じた。中に入ったときも閉まるのが早かったことを思い出してちょっとバカらしくなってしまったのは言うまでもない。


 閉じたのを確認したので俺は階段を上がりプレハブに戻った。


「あっつう…中涼しかったんだな」


 そんなことにすら気がつかないほど俺は動揺していたようだ。ほっとしてお尻が汚れるのも気にせずその場に座り込む。


「なにしてんだ?」

「…いやその言葉そのまま返していいか?」


 戻ってきた健太の見た目が酷かった。リュックを背負い、何故か左手には鍋の蓋…足元は長靴を履きこの暑いのに長袖を着て頭にはヘルメットを被っている。しかもライトがついているやつ。


「なにって…探検?だってそこにダンジョンがあるんだぜぇ~男なら冒険するしかないだろう!?」

「ダンジョン…?」

「どう見てもダンジョン以外ありえねぇだろうっ普通じゃない地下へと続く通路、洞窟みたいなところにスライムだぜ?」


 頭痛くなってきた…そうだこれは暑さのせいだ。外でうるさいほど蝉の鳴き声が聞こえている。


「どう、片付けはかどって…何遊んでるの??やらないなら表にだしたものしまいなさい!!」


 頭を抱えていたら母さんが来て怒られた。


「あー暑くて水分とったら再開するよ…」

「ほんとに?まあ片付けなければ使えないんだからしっかりね」


 それだけ言うと母さんは家に戻っていった。


「なあダンジョンは?」

「……片付け終わったら考えるわ」

「お、じゃあ手伝うよ。そしたら早くダンジョンいけるしな!」


 健太はわかっているんだろうか。俺は一言もダンジョンに行くなんて言っていないことに。そもそもダンジョンとか言われても現実味がなさすぎだろう…?


 水分を補給した後は言ったとおりプレハブの片付けと掃除にせいをだした。主に健太が。俺もまあ多少はやったけどな?


 掃除が終わるころには空が赤く染まり始めどう考えても夕食の時間になってしまうため、健太は泣く泣く自宅へと帰っていった。


「夏休みはダンジョンでエンジョイだぜーひゃっほう!!」


 帰り間際頭の痛いことを叫んでいたが俺はその言葉を無視した。


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 すぐ傍で振動と音が聞こえ、それが静かになるといつの間にか横にはよっすーがいた。


「で、出れた…」


 呆然と立ち尽くしている俺を気にした様子もなく、よっすーは心底疲れた顔をしている。よっすーは自分で歩いて出てきたからいいんだろうが、俺はいきなり外だぜ?変化についていくだけでも大変なんだがな。まあそんなよっすーを見ていたら気持ちの整理もついたのか火傷が痛み始めた。


「なあ、よっすー俺火傷薬塗ってくるけどどうする?」

「ちょっと怖いけどここが閉じるの確認してから出るわ」

「わかったんじゃなー」


 よっすーがここに残るそうだから俺はまずは火傷に薬を塗りに家に帰ることにした。俺の家は健太の家から数軒離れたところに立っていて、まあいわゆる俺とよっすーは幼馴染というやつだ。なので昔からよく一緒に遊んだり、旅行にも行ったっけ。最近は親達も忙しいのでみんなで遊びに行くことはない。なのでもっぱら子供は子供同士で遊びなさいと放置だ。そんなところにこの地下へと降りる階段だ。そして中には奥へと続く通路があり、魔物がいる。冒険するしかないだろう?男ならその先へ行ってみたいだろう?

 そんなことを考えていたら俺は火傷の治療も適当に済ませ、中へ進む準備を始めていた。


 プレハブへ戻るとよっすーが座り込んでいた。掃除していないその場に座り込むのは汚れるだけだと思うんだが気にした様子もない。


「なにしてんだ?」

「…いやその言葉そのまま返していいか?」


 座り込んでいたよっすーは俺を見ると何故かこんなことを言う。はて…俺は何かおかしなことをしただろうか、はっきり言って覚えがない。しいていえば冒険の準備をしてきたくらいだが、この荷物のことをきいてきているんだろうか?


「なにって…探検?だってそこにダンジョンがあるんだぜぇ~男なら冒険するしかないだろう!?」

「ダンジョン…?」

「どう見てもダンジョン以外ありえねぇだろうっ普通じゃない地下へと続く通路、洞窟みたいなところにスライムだぜ?」


 どうやら俺の荷物のせいだったらしい。よっすーは頭を抱えている。俺としては変なことをしているつもりはないんだけどな~


「どう、片付けはかどって…何遊んでるの??やらないなら表にだしたものしまいなさい!!」


 びっくりした。いきなり背後からよっすーの母ちゃん登場。


「あー暑くて水分とったら再開するよ…」

「ほんとに?まあ片付けなければ使えないんだからしっかりね」


 酷いいいわけだなおい。まあそれで帰っていくよっすーの母ちゃんもどうかと思うけどな。まあそれよりも俺にはこっちのが重要だ。


「なあダンジョンは?」

「……片付け終わったら考えるわ」

「お、じゃあ手伝うよ。そしたら早くダンジョンいけるしな!」


 やったね。掃除と片付け終わったらダンジョン付きあってくれそうだ。こういうと気のよっすーは押せば何とかなるって決まってる。俺は俄然やる気が出てきて掃除と片付けはがんばって手伝った。多少俺のやり方だがだめで起こられたりもしたがなんとか終了。でも時間は待ってくれずもう外は日が落ち始めていた。つまり今日はもう行くのは無理って事だ。少し残念。

 でもこれからのことを考えると俺のテンションは再浮上して、ついつい叫んでしまった。


「夏休みはダンジョンでエンジョイだぜーひゃっほう!!」


 あーこの夏休みは充実した休みになりそうだな~

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