野望と陰謀(6)
戦艦ベゼルドラナンの広いブリーフィングルームには、随伴する戦闘空母ラーチカル及びムーフラッテの艦長以下、オペレーター、パイロットなど戦闘に関する要員が一堂に会していた。それにより大規模な作戦が展開されるのを皆が察し、その場は緊張感に包まれている。
大型の2D投映パネルが空中に現れると、作戦説明役を任ぜられたオペレーターのハーン・ジーケットが進みでる。
「これらの情報により、このイーラ―基地から大部隊が進発する準備が整っているものと思われます」
緊張しているのか、しきりに唇を舐めつつ説明を続ける。
「おそらくはナクトホーン及びポートデリーの『ハーディー市民軍』の決起に合わせて鎮圧行動に出てくる企図の集結と考えられます。無論、我ら
「それを視野に入れての同時決起と共同作戦だったはずですが?」
「治安維持軍にも焦りがあるのだろう。勢いを削ぎたいのではないか?」
事前に聞いていたより厳しい状況にダイナが疑問を挟むと、ガイナスは相手の意図による状況の変化だと予想を述べる。
「ダイナ隊長が言った通り、かなり厳しい状況となっております。しかし、本作戦は様々な条件を考慮した上で勝算あっての決定なのです。それに、勝利した暁には治安維持軍に多大なる物理的精神的ダメージを与えることが可能で、今後の活動にも影響が有るものと思われます」
作戦の重要性が説かれ、皆が納得できるだけに口をつぐまずには居られない空気に変わっていく。誰も彼も常にぎりぎりの戦いを演じてここまで来ている。今更守りに入れば付け込まれる不安もあるのだ。
「では作戦詳細に入らせていただきます」
ハーンは続ける。
内容的には戦力配分が主になる。
都市内部の制圧はハーディー市民軍によって行われ、警察の治安隊などを駆逐し、自治庁舎等主要機関を占拠する。XFiは外部から鎮圧に乗り出してくる治安維持軍に当たり、撃退することで両都市の解放が成される算段である。
大都市ポートデリーには相応の規模の鎮圧部隊が投入されると考えられる。それはラーチカル、ムーフラッテ両艦のアームドスキン隊五十機で迎撃を行う。
ナクトホーンへの鎮圧部隊も同等の規模かもしれないが、精鋭部隊であるベゼルドラナンのアームドスキンが対応する作戦である。
どちらの都市でも市街地への侵入だけ防いで時間を稼げば制圧が完了し、その戦力が迎撃にも参加する。そうなれば情報にある治安維持軍の戦力から考え、撃退は難しくないであろうと思われた。
「ここで一つ問題がある」
「私のところにも入ってきたばかりの情報なのだが、近在の都市エルハーケンでも同時決起が予定されているそうだ。おそらく両都市の同時決起を知った抵抗組織『解き放つ槌』は、そちらまで治安維持軍の鎮圧部隊は配せないだろうという思惑で同時期の決起となったのであろう」
「閣下がお気になさる気持ちは分かりますが、戦力的に援軍は困難かと思われます」
ポートデリーに配置される部隊長が苦言を呈する。削られるとしたらそちらだと思ったのだろう。
「うむ、それは承知している。ただ、一応は同盟を結んでいる以上、無視するわけにもいくまい」
「それは……、確かに」
「今回は部隊行動が要となる。迎撃ラインを整えての戦闘だ。残念ながらそれを不得手とするパイロットが我が艦には居るのだ」
ガイナスの視線が動き、後ろのほうの席で我関せずを決め込んでいたリューンを射抜く。そこに込められていた感情を読み取ったのか、オレンジの髪の少年は顔を上げて視線を合わせた。
「俺のことかよ。まあ、他には居ねえよな」
教授は頷いている。
「君とて重要な戦力とは考えている。ただし、今回の作戦要件上、苦手な戦術を強いることになるのは心苦しい。なので、代表として君にはエルハーケンに向かってもらいたいと思うのだ」
「そっちで勝手に暴れてろってのか? やれって言うならやるがよ」
「意味はある。僅か一機の増援でも、勇名高い剣王を送ったとなれば同盟の価値があったと思ってくれるだろう。ここは私の顔を立ててくれんかね?」
意図を読むようにガイナスを窺っていたリューンも肩を竦める。
「厄介払いができて、自分の面子も立つってんだな。分かったよ」
「当然サポートはする。ターナ
「はい!」
彼女は元気よく返事する。単機に付けるには十分なサポートだとハーンも思う。
「では作戦内容を伝えよう。『解き放つ槌』は十六機の作業用アームドスキンを保有しているそうだ。現地で合流したら、彼らの先導で治安機関を制圧していくといい。エルハーケンには管区警察署が三つだけらしいので相手するのは累計で十五~二十機程度だと予想される。君には物足りないくらいの数ではないかね?」
今度はガイナスが少年の様子を窺う番だった。
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