第295話『花まつりを忘れてた!』

せやさかい


295『花まつりを忘れてた!』さくら   





 学校いくついでにゴミほり。


 いつもより多いゴミ袋に気が付いて、留美ちゃんといっしょに「「あっ!」」と息を飲む。


「花まつりだったんだよ!」


「忘れてた(;'∀')」


 四月八日は花まつり。お寺的には『灌仏会(かんぶつえ)』というのは、前に言うたよね。


 お釈迦さんの誕生日で、甘茶こさえたり、お花で飾ったり、檀家の婦人部のお婆ちゃんがらが大活躍して、お寺の行事としては珍しく華やかな行事。


 月始めは憶えてたし、手伝いもしたんやけどね。


「誕生日は祝ってもらったのにね……」


 ゴミ袋ぶら下げながら、自分の失敗のように落ち込む瑠璃ちゃん。


「いやいや、うちも完全に抜けてたし……」


「おじさんたちにお詫びしなくっちゃ……」


 留美ちゃんが立ち止まる。


「帰ってからでええよ、学校遅れるし」


「う、うん、そうだね……」


 お寺というのは段取りのええもんで、ごっついお葬式とかやっても、三十分ほどで全部片付いてしまう。


 せやから、片付いてから戻ってくると、お寺はふつうの日常に戻ってるわけで、ボーっとしてると気ぃ付けへんこともある。


 はい、今回はボーっとしておりました。


 で、なんでボーっとしてたかというと、高校の登校初日。持ち物やら服装、予定のチェックに気ぃとられてて、全然忘れてた。晩御飯のあとに「16歳の誕生日おめでとう!」も言うてもろたんやけど、檀家さんに御不幸があって、あんまりお祝いという風にはいけへんし、おっちゃんとテイ兄ちゃんはお通夜に行ってるし。それで抜けてしもた。


 ちゃんと誕生日プレゼントももろたのにねえ、ちょっと自己嫌悪やねんけども、うちが気にしたら留美ちゃんはもっと気にするし。


 ドンマイドンマイ!


 帰ったら、ふたりで「ごめんなさい」言うことで、自転車に跨る。


 あ、そうそう、誕生日のプレゼントいうのが、この自転車。


「留美ちゃんの誕生日には早いねんけど、通学の必須アイテムやし、今年はいっしょに言うことで(^_^;)」


 詩(ことは)ちゃんがテイ兄ちゃんの代わりに、お祖父ちゃん、おばちゃんといっしょに祝ってくれました。


 出資はおっちゃんとお祖父ちゃん、買いに行ってくれたのが詩ちゃんとテイ兄ちゃんということでした。


 むろん、二人で「ありがとう!」を十回ぐらい言うたんやけど、花まつり忘れてたら話になりません。



 で、自転車で学校まで行くわけやないです。


 堺東に、みなさんもご存知『スナックハンゼイ』の敷地に停めさせてもらいます。


 これも、テイ兄ちゃんの人脈のお蔭。


 堺市の駐輪場もあるねんけど、こっちの方が近いし、駐輪代いらんしね(^_^;)。


「今日からお世話になります!」


 お店のマスターに挨拶して、予備の鍵を渡しておく。


 お店の都合で動かさならあかんときあるし、うちらがポカして鍵失くした時の用心にね。


 駅に着くと電車もすぐに来るし、なんと始業三十分前に学校に着いてしまいました(^_^;)。


 


☆・・主な登場人物・・☆


酒井 さくら   この物語の主人公  聖真理愛女学院高校一年生

酒井 歌     さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。

酒井 諦観    さくらの祖父 如来寺の隠居

酒井 諦念    さくらの伯父 諦一と詩の父

酒井 諦一    さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる

酒井 詩     さくらの従姉 聖真理愛学院大学二年生

酒井 美保    さくらの義理の伯母 諦一 詩の母 

榊原 留美    さくらと同居 中一からの同級生 

夕陽丘頼子    さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王位継承者 聖真理愛女学院高校三年生

ソフィー     頼子のガード


 

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