第153話『山門に入るを許さず・2』


せやさかい・153


『山門に入るを許さず・2』さくら  






 くんし山門に入るを許さず くんしゅ山門に入るを許さず


 違い、分かります?




 パンパカパーン(^^♪ そう! 小さい『ゅ』が有るか無いか!


 小4のわたしは『くんし山門に入るを許さず』と思てて、君子は『君子』で、友だちの中原君子さんは、遠足で訪れたお寺に入られへんと心配した。


 リュックとか水筒には名前とか書いてあって、中原さんが、もし『中原君子』とフルネームで書いてたらどないしょうと心配した。


 けど『中原』としか書いてないので安心したというアホな話。『君子豹変す』も、中原さんが豹に変身するわけでもないし、『君子危うきに近寄らず』は中原さんがビビリの怖がりやというわけでもないし、『君子の交わり淡きこと水のごとし』は中原さんが水くさいというわけでもない。


 まあ、小4の知識というのはハンパや云うことと、想像力とか感受性がすごいということを言いたいわけです。


 で、『君子山門に入るを許さず』ですわ。


 小6になると『君子』が中原さんとの下の名前と違って、学識経験優れた偉い人という意味も分かった。


 せやさかい『君子山門に入るを許さず』で混乱した。


 文字通り読むと『偉い人はお寺に入ってはいけない!』という意味になる。




 小6のあたしは考えた。




 お母さんの実家である如来寺が浄土真宗のお寺で、宗祖は親鸞聖人。


 親鸞聖人の教えは、むっちゃ簡単。


 仏さんは、衆生(一般ピープル)をあまねくお浄土に連れて行ってくれはる。


 生きてる間にええことをしたとか悪いことをしたとかはノープロブレム!


 どんなことをしても極楽浄土に連れて行ってくれはる。


 せやさかいに、仏さんには感謝の気持ちを表すだけでええ!


 その感謝の言葉が『南無阿弥陀仏』であるのです。


 めっちゃ明快やと思いません?


 お寺と言うのは、そのことに気づいた人々が集まって『南無阿弥陀仏』の感謝をささげる場所なんです。


 親鸞さん的に言うと『感謝の道場』という感じ。




 けどね、小6のあたしはファイナルファンタジー10やってしもたんです。




 ティーダがユウナのガーディアンになってザナルカンドを目指すRPGの大傑作!


 むかし、お母さんがプレステ2でやって感動したというので、あたしはプレステ3のリマスターでやったんです。


 その中に『エボン』という宗教があるんです。エボンの教えは『死こそ人を救う道』と教えてるんですわ。


 とんでもないカルトで、最後はユウナやティーダによって滅ぼされてカタルシスになるんやけどね。




 このエボンの教えいうのは、親鸞聖人の教えといっしょなんちゃう? と、思たわけです。




 浄土真宗:死んだら阿弥陀さんが迎えに来てくれはって、西方浄土に連れて行ってくれはる。


 エボン:死こそが救い、だから、みんな死ねばいい。


 似てると思いません?


 お祖父ちゃんも、おっちゃんも、従兄のテイ兄ちゃんも優しいええ人やけど、浄土真宗の坊主。ということはエボンのシーモア老師みたいに、一皮むいたらティーダやユウナにやっつけられる悪党!?


 そういう感じで浄土真宗とエボン教の共通点を感じたあたしは、心配になったんです(;゚Д゚)


『君子山門に入るを許さず』は、ティーダとかユウナとかいう偉い奴、つまり君子が入ってきたら、ボス戦が起こって、メチャクチャになると!


 お祖父ちゃんもおっちゃんもテイ兄ちゃんも本性を現してやっつけられてしまう!


 お母さんが実家に帰りたがれへんのんも、そのことを知ってりからや。お寺の血を半分しか受けてない娘のさくらをお寺の災厄から避けようとしてたんや!


 あたしは、自分をユウナになぞらえてました。


 いつかティーダが現れて、あたしのガーディアンになってくれて冒険の旅が始まる!


 詩(コトハ)ちゃんは従姉やさかい、リュック。ティーダとともにガーディアンになってくれて、あたしを護ってくれるはず!


「あのなあ『君子山門に入るを許さず』とちゃう。『葷酒山門に入るを許さず』や」


 小6の秋にテイ兄ちゃんが教えてくれた。




 久々に集まった本堂裏の部室で、頼子さんと留美ちゃんが腹を抱えて笑っております。




 やっと、文芸部が復活しました。


 


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