第493話 暗殺者はつらいよ

 とある日の夜、ずっと帝都で動いていた黒の騎士団ブラックナイツの暗部がようやく準備を済ませたのか動き出したので、ケビンはお出迎えの歓迎会を開くことにした。


「前回は飲んだくれの集団だったが、今回はちゃんと下準備やら情報収集の活動をしていたから楽しめそうだ」


 それからケビンは、前回のように思考誘導でケビンの部屋まで来るように仕向けたら、部屋の中には古典的なトラップを配置していく。


「くく……トラップに驚いて面白い顔が見れるかもしれないから、魔導撮影機で録画しておこう」


 敵の放った暗殺者相手に真面目な対応をする気がサラサラないのか、ケビンは全ての準備を済ませると狸寝入りのためにベッドへと潜り込んで、途中で笑ってしまわないように毛布を被ってその時を待つのだった。


 そしてしばらくした後、気配が段々と近づいてくるのを察したケビンは、耳をすませてドアが開くのを待っていた。


(や……ヤバい……想像しただけで笑いが込み上げそうだ……)


 すると、気配がドアの前で立ち止まったのがわかり、今か今かとケビンはその時を待つ。


 静かに開かれたドアの隙間から暗殺者が体を滑り込ませると、部屋の中へと入ってきて最初のトラップが発動する。


 天井から吊るされたコップがひっくり返り、中身が暗殺者へと降りかかると、その液体が冷っとしたのか声を漏らしそうになる。


「っ――!」


(引っかかった! ということは、あまり強い暗殺者じゃないな。てっきり団長でも来たのかと思ったけど……)


 トラップに引っかかって心臓がバクバクと高鳴る暗殺者は気を取り直すと、ケビンが起きていないかベッドへと視線を向けて息を潜める。これで起きてしまったのなら、さっさと殺って撤退しようと考えていたからだ。


 しかし暗殺者の警戒は杞憂だったようで、動く気配のないベッド上のケビンを見ては安堵する。


 そして暗殺者は静かに懐からナイフを取り出したら、ケビンを殺すためにベッドへと近づいていった。


 1歩、また1歩と慎重に足を進めていき、ようやくベッド脇に到達したところで、暗殺者が今からベッドの上にあがろうかとした途端、不意打ちで更なるトラップが発動する。


 一切の音なく足首を絡め取られた暗殺者は、驚きのまま逆さ吊りにされてしまう。更には手に持つナイフで縄を切ろうにも、いつの間にやら両手首までもが後ろ手で縛られてしまっていたのだ。


 さすがにここまでされては逃げきれないと思った暗殺者は、速やかに口内に仕込んである毒薬を噛み潰して自害を図ったが、歓迎会を開いているケビンの領域でその行為は笑いの種となるだけである。


「ごふっ……」


 お約束通り暗殺者はひとまず毒の効果が現れて血反吐を吐くが、何故か死ねずにそのまま静かな時を過ごしていく。


「……?」


 暗殺者が視線を動かすと、自分の目の前には明らかに吐血したあとがまざまざと見て取れるのに、何故か苦しくなって死ぬどころか、逆に苦しみなどなかったかのように症状がなくなっていき、気持ちのよい目覚めみたいな爽快感に包まれていった。


「あれ……?」


 任務を達成するどころか自害すらもできない状況で混乱してしまい、暗殺者は何を思ったのか暗殺者とは思えないほどのありえない行動に出る。


「あのー、どなたかいらっしゃいませんか? おかしなことになっているのですけど……その……皇帝さん、起きてください。何だかおかしなことになっているんです」


 あまりにも普通に誰かを呼ぼうとする行動でケビンは我慢の限界がきたのか、思いっきり大笑いを始めてしまいお腹を抱え込むのだった。


「ひー……腹痛てぇ……」


 ひとしきり笑ったケビンがランタンを起動すると室内はほどよく明るくなり、そこで初めて暗殺に来た者と顔を見合わせる。


「あ、どうも」


「あ、こちらこそどうも」


 ケビンと顔を合わせた暗殺者が挨拶をすると、条件反射からかケビンも挨拶を交わして不思議な空間が生まれてしまう。


「「……」」


 だが、挨拶を交わしたものの1人はケビンを殺しに来た暗殺者で、もう1人は殺される側のケビンだ。2人はどうしたものかと不思議な空気が流れる中で沈黙してしまうが、先に声を出したのは暗殺者の方だった。


「あの……初めまして……私は貴方を暗殺しに来た者なのですが、何だかおかしなことになってしまって、こうして吊るされているのですけど……」


「おかしなこと?」


 どうやら2人は不思議な空気のまま言葉を交わすことにしたようで、普通ならありえない暗殺者の自己紹介と、それを気にもせず話を進めるケビンによって独特の雰囲気が流れ始める。


「はい。えぇーっと、部屋に入ったら何かを被ってしまって冷たくて声を出しそうになってしまいましたが、何とか堪えてベッド脇まで移動したらこのように吊るされてしまって、それで任務に失敗したと思って自害したのですけれど、死んでいないどころか体が軽くなって元気になってしまって……」


「それはおかしなことですね……そこの血溜まりは貴女のものですか……」


「ええ、汚してしまってすみません」


「とりあえず綺麗にしますね。シミになっては大変ですので」


「お手数おかけします」


「そうだ、貴女の口周りも綺麗にした方がいいですね」


 そしてケビンがそう告げると、カーペットの血溜まりと暗殺者の口周りや口の中を魔法で綺麗にするのだった。


「私まで……どうもありがとうございます」


「いえいえ、お安い御用ですよ」


「「……」」


 再び訪れる沈黙。ケビンはそろそろ話を進めるかと思い、ネタばらしをするのである。


「実はここって自動回復の魔法がかかってるんだよね。だから、いくら自害しても勝手に回復しちゃうから、毒を飲んだところで死ぬことができないわけ」


「え……」


「だってムカつくだろ? 勝手に殺しに来といて失敗したら自害してカーペットは吐血で血みどろとか。せめて血を吐かない死に方にしてくれよって思わない? 片付ける方の身にもなれってんだよ」


「はあ……」


 気のない返事を返してしまう暗殺者は、何故か死んだ後のカーペットの汚れのことを指摘されてしまい、確かに改めて考えると申しわけないような気もするのであった。


「で、捕まった暗殺者の末路は知ってるか? 情報を吐かせるために尋問されるんだけど……」


「ええ、ですからその前に自害をしようと思ったのですけれど……」


「まぁ、失敗だな」


「……そうですね」


「それじゃあこうしてるのもなんだし、今から尋問を開始する」


「貴方自らがですか? ですが、痛みの訓練は受けていますので何をされようとも吐きませんよ」


 拷問に耐えうる訓練を受けていた暗殺者は、先程までの雰囲気とは一変して強気な姿勢を見せると、どのような拷問を受けようとも決して情報は吐かないように決意を固める。


 そのような暗殺者を見たケビンはニヤッと笑みを浮かべると、暗殺者に対しての尋問を開始するのであった。


「喋りたくなったらいつでも喋っていいからな?」


「戯言ですね」


「さて、まずは名前から聞こうかな? 何て言う名前だ?」


「答えるわけがないでしょう」


 頑なに尋問をしても答えようとしない暗殺者に対して、ケビンは一計を案じると筆を【無限収納】から取り出して、くすぐり地獄の刑を執行したら早くも暗殺者は屈してしまい、呆気なく名前を白状するのだった。


「うひゃひゃっ! しゃべ、喋りますから! 私の名前はセリナです! や、やめてぇーお腹が苦しい!」


「へぇーセリナか……次は組織について喋ってもらおうか」


 だが、あっさりと名前は白状したのに対して、組織については頑なとなり白状せず耐えて見せたセリナへ、ケビンは痛い拷問はしたくなったので快楽責めを試みることにした。


 そしてケビンから快楽を刻み込まれていくセリナはお預けを何度も受けてしまい、最終段階へ入ろうとしたケビンに対して、よく耐えた方だが結局は白状してしまう。


「ダ、ダメっ! わ、私には夫がいるの! それだけはダメ!」


 その言葉を聞いたケビンは暗殺者が普通に暮らしているのを不思議に思ったのか、セリナに対して問い返していく。


「ん、夫? 暗殺者なのに夫がいるのか?」


「私たち暗殺者は、任務以外の平時は通常の生活を送って身を隠しているのです。プライベートは一般人なのですよ」


「あれ? そんな情報を簡単に教えても良かったのか?」


「ッ!」


 セリナはついうっかり暗殺者の平時のことを喋ってしまい、これがバレてしまうと処刑されると思って慌ててしまう。


 そこでまたもやケビンの焦らしプレイが始まり出して、セリナは中々スッキリしない感覚を続けられていき、その先の道を焦がれていく。


(あう……欲しい……ダ、ダメよ、セリナ! これ以上許したらきっと出されちゃう……でも、スッキリしたい……夫じゃ経験したことのないあの感覚を……)


 そのような中でケビンは焦らしプレイをしつつ、もう1つの気になることをセリナへと尋ねる。


「なぁ、夫婦なのに子作りしていないのか?」


「んっ……私は任務があるから、まだ子育てをするわけにはいかないのです。養育費のためにお金も貯めないといけないし、う、動いちゃダメぇ……」


「避妊魔法か避妊薬を飲めばいいのに。それに旦那は任務のことを知っているのか?」


「避妊魔法なんて高価な処置は、一般人を装っている私ができるわけないです。避妊薬だって高い割に効果が確実じゃないから信用できないのです。夫は私が暗殺者であることを知りません。秘匿事項ですので冒険者と名乗っております」


「ふーん……今回も冒険をしてくるって言ってきたのか?」


「はい、定期的に冒険をして、その稼ぎを家へ入れていますので、怪しまれることはありません」


「暗殺者も大変なんだな」


「ケビンさん……」


「ん? 初めて名前で呼んだな」


「お願いします。最後までしてください……」


「旦那は?」


「言わないで……今……今だけはケビンさんの女になります……だから、お願いします」


「わかった。じゃあ、今からセリナは俺の女だからな」


「はい……」


 セリナからの返答を聞いたケビンは緊縛からセリナを解放したら、そのままベッドへ連れて行って寝かせると、セリナの耳元で囁くのだった。


「愛してるよ、セリナ」


「はぁん……」


 そしてケビンがキスをしようとすると、セリナが顔を背けて避けてしまう。


「俺の女なんだろ?」


「……まだ気持ちが追いついてないので、したければ強引に奪ってください」


 その言葉を聞いたケビンがセリナの顔を手で背けられないように固定すると、そのまま強引にセリナの唇を奪った。


「んっ!?」


 しばらくケビンがセリナの口を蹂躙していたら、次第とセリナが自らケビンの舌を求め始めると、ケビンは最終確認をセリナへと暗に問いかける。


「セリナ?」


「はい……いっぱい感じさせてください」


 セリナの言葉を聞いたケビンはセリナを抱いて、再びセリナは快楽へと溺れていくのだった。


「ケビンしゃん、もっとぉ……もっとしてぇ……何でも話しましゅからぁ……」


 こうしてただの尋問から始まった行為が、ここまでのものになってしまうとはケビンも予想しておらず、どうしたものかと考え込みながらも再びセリナを抱いて、とりあえず朝ご飯の前まで続けるのであった。

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