第491話 ダンジョン攻略開始(生徒サイド)

※ 今回は5名ほど新たな生徒の名前が出てきます。氏名が判明したものに関しては、更新として追加しています。



◆ ◇ ◆ ◇ ◆



 時は遡り生徒たちが召喚されて3ヶ月が経とうとしていた頃、日々の訓練を頑張っていた生徒たちへ、ウォルター枢機卿からとある指示が発表される。


「もうかれこれ3ヶ月が経とうとしていますが、みなさんが訓練を頑張っているおかげで、日に日に強くなっているのは騎士からもちゃんと報告が上がっています。よって、準備が出来次第ダンジョンへ潜り、実地訓練を行っていただきます」


「ダ、ダンジョン!?」


 ウォルター枢機卿が言った『ダンジョン』という単語に反応したのは、やはりそれ系の知識を持つ者たちだった。彼・彼女らにとってみれば、ダンジョン攻略は待ちに待ったイベント回収の1つとも言える。


 そのような者たちが浮き足立つ中で、ウォルター枢機卿はダンジョン攻略を安全に行うために、その際は騎士団の団長を同行させることを伝えた。


「初めてのダンジョン攻略で不安になることもあるかもしれませんが、まずは初心者用ダンジョンへ行ってもらいますので、今の皆さんの力だと少し物足りなくなるかもしれませんが、何事も最初は基礎から始めるものですから、そこのところはご了承ください」


 こうして生徒たちはウォルター枢機卿の指示により、異世界名物のダンジョン攻略をすることになるのであった。


 そして数日後、前日の訓練終了後に準備が整ったということを知らされた生徒たちは、この日ダンジョンへ向けて出発するために、初めて神殿の外へ出ることになる。


 すると、その出発の前の生徒たちが準備を終えて集合している場所へ、同行者の団長が現れた。


「私は神殿騎士団テンプルナイツの総団長であるガブリエルと申します。本日からダンジョン攻略が終わりここへ帰還するまでの間、みなさんの護衛として行動を共にしますので、よろしくお願いします」


 ガブリエルの挨拶が終わり生徒たちも挨拶を返すと、教育実習生は1人で来ていたガブリエルが気になったのかそのことを尋ねる。


「あの、同行される方はガブリエルさんだけなのでしょうか? 騎士団の方たちが同行されるとかは……?」


「攻略の同行者は御者をする騎士たちを除けば私1人だけです。初心者用ダンジョンなので、騎士団を使うまでもありません。私1人だけでも攻略可能である簡単なダンジョンですから」


「そ……そうですか……ガブリエルさんはそれほどお強いのですか?」


「ええ。貴女方の練習光景を見させていただいたこともありますが、私1人だけで貴女たちが束になって襲ってきても勝てます」


「それは聞き捨てならんな。この俺が率いる軍団に1人で勝てると思ってい――」


 幻夢桜ゆめざくらがガブリエルの言葉に反応して反論をしていた最中で、皆の視界からガブリエルの姿が消えたと思ったら、周りの生徒たちが気づいた時には幻夢桜ゆめざくらの真後ろに立っていた。


「どちらを向かれているのですか? 私はここにいますよ?」


 そして背後からいきなりかけられた言葉によって、幻夢桜ゆめざくらがビクッと反応してしまうとガブリエルはそのまま続きを話し出す。


「これが貴方と私の実力差です。これ程の実力差が開いているのに、貴方は私に勝つつもりなのですか?」


「くっ……」


 その光景を見た教育実習生はガブリエル自らが1人でも攻略可能と言うのなら、ダンジョンでは安全に生徒たちの実地訓練が行えるという結論に達し、ガブリエルへそのことを伝えるのだった。


「ガブリエルさん、実力を見せていただきありがとうございました。お強いガブリエルさんが同行してくれるなら、生徒たちも安全に攻略できます」


「私が同行するとはいえ油断はなさらないでください。何が起こるかわからないのがダンジョンですから、慢心している者から足元をすくわれていきます」


「助言感謝いたします」


「それと、この人数ですから泊まるのは宿屋ではなく、主要な街にある教会を利用することになります。騎士団の遠征訓練にも使用していますので最適です」


「わかりました」


「では、出発しましょう」


 既にガブリエルへ噛み付いた幻夢桜ゆめざくらのことなど、当の本人であるガブリエルは気にも止めておらず、教育実習生とガブリエルの間で話は進んでいき、用意されている馬車へ乗るため生徒たちは歩き始める。


 だが、恥をかかされた幻夢桜ゆめざくらはプライドを刺激されてしまい奥歯を噛み締めてしまうが、生徒たちの後方でついて来るその姿を誰にも見られなかったことが、本人にとってはせめてもの救いだったのかもしれない。


 そして馬車に揺られて皇都セレスティアを出発した面々は、数週間後にはダンジョンへと到着するのだが、その旅の途中で寄った街ではある程度の自由行動が許され、生徒たちは思い思いにお店などを見て回っては楽しんでいた。


 奇しくもアウトドア派の女子たちは、溜まっていたストレスを幾分か発散することができて、そうでない女子たちも異世界のお店が珍しく、何気に楽しむことができていたようだ。


 そうなってくると心に余裕が出てくるのか、他のことへと思考のキャパシティを割り振ることができて、1人足りない生徒のことが話題となってしまう。


「ねぇ、皇都を出る時に九鬼君を見た人はいる?」


「私は見てないよ。冒険者をやってるならお仕事とかしてるでしょ?」


「はぁぁ……無事だといいんだけど……」


勅使河原てしがわらさんも言ってたじゃない。命の危険のない清掃活動とかもあるって。きっと街のどこかで清掃活動をしているんだよ」


 九鬼が既に魔物狩りをしていることなど知らない女子たちは、街のゴミを拾ったり溝掃除をしている九鬼の姿を想像しては、苦労しているだろうと勝手に思い込むのであった。


「私たちもこれで認められれば給金とかもらえるのかな?」


「え、給料が欲しいの?」


「そうしたら九鬼君にお金を渡せるじゃない。きっと大した稼ぎもなくてひもじい思いをしてるよ? 隙間風とか吹くボロい宿屋で、寒い思いをしているかもしれないし」


「いや、仮にも皇都だからボロい宿屋はないでしょ」


「でも、いい宿屋はお金がかかるから、スラムとかのボロ屋にいそう……」


「ありえる……」


「襲われたりしていないかな?」


 女子たちは座学によってこの世界の一般常識を既に手に入れているため、九鬼の置かれている状況をあれやこれやと予想を立てていくが、全くもって見当違いであることなど気づきもしない。


 そして、そのような一幕が道中でありつつも、生徒たちは無事にダンジョンへと辿りつく。今回は野営などする予定がないので、近場の街からの通い攻略という形となるのだった。


 それから御者を務めた手馴れている騎士たちによって拠点が構えられると、生徒たちは集合させられてガブリエルからの説明を受ける。


「まずは全員で中へと入り訓練に臨みます。その後は慣れた頃にパーティーを組んでから交代でのダンジョン攻略となりますが、どちらも私と騎士が4名付き添いますのでご安心を」


 それを伝えたガブリエルは残りの4名の騎士に拠点防衛を告げると、先頭をガブリエルとしたら左右に1名ずつ最後尾には騎士を2名配置して、生徒たちを挟み込むような形で陣形を組むようにした。


「では、索敵は私たちがするので、みなさんは敵が出た際に攻撃をしていただくことになります。その際にはこちらの指示に従って行動するように。くれぐれも自分勝手な行動は慎んでください。その行動によって他のみなさんが命を落とすことも充分にありますので」


 その他にもガブリエルはダンジョン内での注意事項を生徒たちへ伝えていき、それが終わるといよいよもってダンジョン攻略が始まるのである。


 そしてダンジョンへと足を踏み入れた生徒たちが、興味津々でダンジョン内を見回していると、ガブリエルから急に声がかかる。


「スライムです。まずは魔法を専門としている方から攻撃してください」


 そのガブリエルの指示を聞いたら、数匹のスライムに対して魔法を生業とする生徒たちが一斉に詠唱を始める。詠唱を始めた生徒たちの扱う属性は様々だが、その詠唱が終わると色とりどりの魔法がスライムたちを襲った。


 そして様々な魔法が着弾すると、スライムたちは為す術なく倒されてしまうのだった。


「やった!」

「倒せた!」


 初の魔物戦で勝利を掴んだ生徒たちは口々に喜びを口にするが、ガブリエルが空気を読まず口を挟んだ。


「スライムは下手をすれば子供でも倒せる魔物なので、倒せたからといってあまり自分の力を過信しないよう注意してください」


 ガブリエルの口にした言葉で喜びムードから一転、生徒たちは雰囲気を壊されてしまい何とも言えない気持ちになる。


 その後もスライムと出会っては魔法による遠距離攻撃や、数が少なければ武器を扱う者たちへ近接戦闘を行うように指示したりと、ガブリエル指導の元で戦闘は繰り返されていき、1層目を全て回ると2層目へと生徒たちは進んでいく。


 そして生徒たちが順調に攻略を進めていたら、キリの良いところでガブリエルが終了の声をかける。生徒たちはまだまだ余力を残しているが帰り道のこともあるので、ガブリエルがそのことを説明するとその日のダンジョン攻略は幕を下ろすのであった。


 それからの生徒たちは朝に街を出てダンジョンへ到着すると攻略を開始して、時間が頃合いになるとガブリエルが終了の合図を出し、再び街へ戻るというのを繰り返していた。


 日に日にレベルが上がっていく生徒たちは強くなっていることを実感して、最初の頃に感じていた不安はいつの間にかなくなり、今となっては敵をどのようにして倒すかと相談し合うまで、心にゆとりができている。


 そのようにして集まっている中、やはり増長してしまうのが一部の男子で、元の世界にはなかったありえない力を手にしていることもあり、口々にパーティーで別れて行動することを口にしていた。


「もう団体行動する必要ねぇだろ?」

「確かに……全員で行動しては経験値の取り合いになるな」

「俺はどっちでもいい」


 無敵のグループがそのようなことを話し合っていると、それに便乗したのはガブリエルに苦渋を飲まされた幻夢桜ゆめざくらである。


「やはり俺という存在がここで足踏みをするなどありえん。王とは常に上を目指さなければならないゆえ、いつまでも簡単な戦闘をするわけにもいくまい」


「まぁ、お前の存在はどうでもいいが、雑魚相手にのらりくらりやるのは飽きてきたな」

「だよな! ここはいっちょ総団長に言ってみようぜ!」

「竜也が言いに行くのか?」


「え、そこは力也の出番じゃね?」

「人任せかよ」

「他力本願だな」


 そのようなところで、再度口を開いたのは幻夢桜ゆめざくらだった。


「俺が言おう。これも王たる俺の務めであることに違いない」


 この場にいる者にそれを告げると、幻夢桜ゆめざくらはガブリエルの元へと向かうのであった。


「てゆーか、男子だけで進めすぎじゃね?」

「女子の意見は聞かないわけ?」

「猿ぅぅぅぅっ!」


 男子がパーティーを組んでダンジョン攻略へと乗り気になっているところで、異議申し立てを行ったのは無敵グループの女子メンバーだった。


「千代! いったいいつまで猿呼ばわりするつもりだ!」


「だって、ずっと盛ってるもん。早く攻略を終わらせてからさっさと帰って、盛りの続きをしたいんでしょ?」


「ぐっ……」


 それがないとは言いきれない月出里すだちは、悔しいけど言い返せない何とも言えない気持ちとなる。そしてそれは図らずも肯定していると見なされてしまい、女子たちから大ブーイングが巻き起こるのだった。


「信じられない!」

「みんなで頑張るよりもエッチが優先なわけ!?」

「それなら攻略について来なくて、神殿で1人残って盛ってればいいじゃない!」

「千喜良さんの言う通りで、月出里すだち君なんか盛りがついた猿よ、猿!」


 1度火のついてしまった女子たちの非難を鎮めるのは困難であり、他の男子が仲裁しようにも自分へ飛び火してくること間違いなしなので、月出里すだちを助けるために我が身を犠牲にするような勇者は現れない。


 そのようにして月出里すだちが針のむしろとなっている状況が続く中で、しばらくしたらガブリエルの元を訪ねていた幻夢桜ゆめざくらが戻ってきて、パーティー編成が認められたことを全員へ知らせる。


「パーティー編成については、総団長もそろそろと考えていたようだ。よって、今日中にパーティー編成を終えたら、明日からはパーティーごとの攻略となる」


 その幻夢桜ゆめざくらの報告を生徒たちが聞いたあとは、教育実習生が円滑にパーティー編成が行えるようその話を引き継ぐと、クラス委員の2人を進行役として指名した。


「では、能登君と剣持さんはみんなの話を取り入れながら、生徒たちを纏めていってください」


「はい」

「わかりました」


 これにより生徒たちはパーティーを組むことになるのだが、月出里すだちの件が災いして男子とパーティーを組むのを敬遠する女子たちが現れ始める。


「男子とはちょっと……」

「今の今は遠慮したいっていうか……」


 そのようなことを女子から言われてしまえば、当然そのことを言われた男子も反発するような態度となり意固地になっていく。


「ぐだぐだ言う奴はこっちから願い下げ」

「別に女子が必要ってわけでもないし」


 こうなってしまえば論争が始まってしまうのは火を見るより明らかであり、男子と女子の言い争いが起こっている中で終止符を打ち込んだのは、教育実習生でも幻夢桜ゆめざくらでもなく無敵であった。


「ぐだぐだとうるせぇんだよ、お前らは! 痴話喧嘩するなら他所でやれ!」


「誰が痴話喧嘩してるのよ!」


「無敵君は目が悪くなったのかい?」


「痴話喧嘩じゃねぇなら言い争いなんてしてるんじゃねぇ! パーティー組みたくなけりゃ拒否すればいいだけだろうが。ピーチクパーチク囀ってんじゃねぇよ!」


「うっひょー力也がキレた! お前らボコられる前にだんまりした方がいいぜぇ。俺たちが元の世界で食み出しもんだってことを忘れたのか? それにこっちの世界でも無敵は【大魔王】で、俺たちはシークレットレア職の悪役シリーズの食み出しもんだぞ」


「竜也、三下感が半端ない」


 無敵による一喝に付け加え、月出里すだちが元の世界やこの世界での立場を匂わせると十前がそれを諌めるが、奇しくも三下感を出した月出里すだちの言葉により、言い争っていた生徒たちは誰に対して反論したのかを意識してしまい、急に沈黙してしまうのだった。


 それほどまでにクラスカーストのシステムは体に馴染んでおり、相手が不良と呼ばれている悪い噂の絶えない無敵であったことも、この場の喧騒がやむのに一役買っていた。


「能登、こいつらが面倒くせぇから、クラスカーストのグループごとでパーティーを組ませろ。その方が手っ取り早い」


「わ、わかった。それじゃあみんなは、学校で仲の良かった者同士でパーティーを組んで纏まってくれ。それであぶれた者に関しては、すまないがその者たちで組んでもらう」


 こうして始まったパーティー編成は元々つるんでいたグループで分けたことにより、特に諍いが起こる生徒同士でパーティーになることもなく、図らずも無敵による提案で適度に丸く収まることになる。


 そうして迎えた翌日、ダンジョンへ赴いた生徒たちはガブリエルの指示の元、全パーティーが潜れるほど騎士に余裕がないので、今日からは午前と午後でそれぞれ突入組が分かれると、馬車を守らせる騎士を残して1パーティーに1名の騎士をつけてダンジョン攻略を開始する。


「虎雄、そっち行ったぞ!」


「わかってる」


「千喜良、虎雄のサポートだ」


「ほいほーい」


「ってゆーか、奏音って死体がないと戦えなくね?」


「普通の魔法でカバーするわよ。夜行こそ陰陽師らしく式神くらい呼べないの?」


「まだそれ系って覚えてないんだよねー」


 まだ1層目に入ったばかりでスライムとしか出会っていない無敵グループは、前衛が奮闘する中で後衛は大した出番もなく世間話をしつつ戦いを見学していた。そのような光景を見ている月出里すだちは、後衛2人に対して苦情を言うのだった。


「お前らもちっとは援護しろよ! 何で後衛の俺が戦ってんのにお前らはお喋りしてんだ」


「それはあんたが真っ先に突っ込むからでしょ? 後衛と主張するならその突っ込み癖を何とかしなさいよ」


「男ならガチンコだろ!」


「ちょーウケるんですけど。それって自分で猪やってるだけじゃん」


 戦闘そっちのけで月出里すだち百鬼なきりがギャーギャー騒いでいる中で、戦闘を終わらせたメンバーたちが集合すると無敵が呆れたように口を開く。


「お前ら……少しは真面目にしろ」


「え……うちらが真面目になったらあ……あ……何だっけ? あのカワイイっぽい名前のやつ……あのクマのぬいぐるみみたいな名前の……」


 無敵の言葉に対して何かを言おうとした百鬼なきりは、その何かが口から出てこずに無敵へそのまま聞き返すのだが、無敵は無敵で百鬼なきりが何を言おうとしているのかサッパリで、女子メンバーの中では頭のいい者へ問いかけるのだった。


「なぁ、千手……百鬼なきりは何が言いたいんだ? 俺にクマのぬいぐるみのことを聞かれてもわからん」


「私だってわからないよ。クマでしょ? 〇ーさんとか?」


「違うし。ハチミツ食べてるやつじゃなくて、茶色のやつだし」


「あっ、テ〇ィベアだ!」


 百鬼なきりの言う茶色のクマでピンときたのか千喜良が叫ぶと、それに対して百鬼なきりが同意を示すが未だに謎は解けないでいる。


「その名前なら聞いたことはあるがサッパリだな」


「んー……謎よね……」


「ここまできてんだって、ここまで!」


 みんながうんうんと悩んでいる中で、百鬼なきりは思い出せそうで思い出せない言葉が歯がゆいのか、自分で喉を指さしてはアピールをしていた。


「あー何とかテディなんだよ、あー何とかテディ!」


 誰も答えを出せない百鬼なきりの発言に対して、百鬼なきりは思い出せないあやふやな言葉を口にすると、それを聞いた十前がボソッと予想のついたことを口にしたらそれを聞いた百鬼なきりは大喜びをする。


「……アイデンティティか?」


「それー! 虎雄マジ卍ー!」


「アイデンティティかよ……」


「確かにティティだけ見ればテディに似てるけど……」


「でしょ? アイデア出すテディって感じじゃね?」


「その覚え方はどうかと思うわよ?」


 そのような時に言葉の意味を知らずついていけない者が、ボソッと疑問を口にしたのだった。


「なぁ、あいでんてぃてぃって何だ? クマなのか?」


「猿がバカだー!」


「おいコラ、千代! お前はわかってんのかよ!」


月出里すだちと違ってわかるしー猿にもわかるように説明すると、要するに夜行ちゃんは不真面目な私たちが真面目になったら、存在意義が失われるって言いたかったんですー」


「そう、それだ! 不真面目な私らが真面目になったら、アイデンティティがなくなるだろって言いたかったんだよ」


「まぁ、百鬼なきりの言いたいことは時間がかかったけどわかった。それなら真面目にしなくていいから協力はしろ」


「任せてちょー! でも協力はするけど、スライム相手にはいらなくね?」


「確かにな。だが、暇だからって竜也とバカ騒ぎはするなよ」


「りょ」


 こうして無敵グループは、思いもよらない百鬼なきりのクイズに参加することになって時間を消費してしまうと、付き添いの騎士がただ1人後方で『こいつら、大丈夫か?』と不安になってしまったのは仕方のないこととも言えるが、その分を取り返すかのように無敵グループはサクサクと攻略を進めていくのであった。



◆ ◇ ◆ ◇ ◆



珍名ちんみょう高校 生徒名簿


剣持 (けんもち)


十前 虎雄 (ここのつ とらお)更新


千手 奏音 (せんじゅ かのん)更新


百鬼 夜行 (なきり やえ)更新


能登 (のと)


 今回の新規苗字に関しては、『十前』以外はそのまま読めたんじゃないかなと思います。


 私は『十前』を見た時に『じゅうぜん?』とそのまま読んでしまって、まさか『ここのつ』と読むとは露ほども思っていませんでした。由来としましては凄くシンプルで、十の前にある数字は何か? ということで、『ここのつ』と読むそうです。昔の人って自由過ぎますね。笑


 千手の名前の『奏音』は、母親が音楽好きで『音を奏でる』から命名したという裏話つきです。え? 作者の意図的なもの? あ……千手さん、無言で睨まないでください。


 百鬼なきりの名前の『夜行』に関しましてはキラキラネームを参考にして、完全に作者の意図的な名付けです。百鬼なきりさん、ごめんなさい。メンチ切らないで……

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