第465話 告白

 ケビンがクララとアブリルを打ち倒して軍議用天幕の中へ戻ると、一部の者から生暖かい視線に晒される。


「え……何?」


「ケビン、防音の結界を張り忘れてたわよ」


「……」


「激しかったわね。何回戦したの?」


「ケビン……お姉ちゃんにも聞こえちゃた……」


 サラから指摘されたケビンが言葉を失ってしまい、マリアンヌが感想をこぼすとシーラは恥ずかしそうに答え、フィアンマたちは顔を赤らめて俯いており、ユソンボウチーたちは大人の対応ですまし顔をしていた。


「と、とりあえず、兵たちの移動をしようか?」


 ケビンが取り繕うようにやるべきことを口にしたら、それに対してユソンボウチーが答えた。


「陛下が頑張られておられる間に、帝国軍は移動が完了しておりますぞ。あとは離れた場所にいるアリシテアの軍だけですな」


「皇帝陛下、我が軍を移動なさればまだ時間もありますゆえ、もうしばらくお楽しみの時間が取れますぞ」


 ウカドホツィ辺境伯の気遣いにケビンは居た堪れなくなり、天幕を出るとアリシテア王国軍をそそくさと転移させる。そしてウカドホツィ辺境伯もその場に転移させたら、戸惑っている兵たちへの説明を任せた。


 そのような作業を行っていたケビンの元へ、顔を赤らめたままのカトレアが気まずそうに近寄ってケビンの横に立つと、ケビンの顔を直視できないのかチラチラと視線を流している。


「どうした、カトレア?」


「うん、あのね……」


「気になることがあるなら気にせず言っていいぞ」


「……する?」


 ケビンはカトレアが何を言っているのかが理解できずに首を傾げていると、カトレアは勇気を振り絞って別の言葉を口にする。


「エッチ……」


 カトレアからの発言でケビンの思考が停止してしまい唖然としていたら、カトレアは恥ずかしそうに口を開いた。


「ケビン君と初めてお喋りした時、私の瞳が綺麗だって言ってくれたよね?」


「……そうか?」


「もうっ、忘れないでよ。私、すっごく嬉しかったんだよ。1人で他国に住んで知り合いが誰1人としていない中で、ケビン君だけが私の安らぎだったの」


「お前、1人だったのか? ボッチだな」


 ケビンの茶化した言葉にカトレアは頬を膨らませるが、ケビンらしさは今に始まったことではないので、少しむくれながらも続きを話す。


「私が調子に乗ったせいでケビン君が怒って、そのあと記憶がなくなったって知った時、胸が張り裂けそうな思いだったの」


「別に記憶云々はお前のせいじゃないだろ」


「親善試合で再会した時も綺麗な瞳だって言ってくれたよね。そして今回、再会した時もまた言ってくれた」


「まぁ、お前の瞳は綺麗な色だしな」


 ケビンがそう告げるとカトレアはケビンの真正面へ移動して、ケビンの目を見つめた。そして勇気を振り絞って言葉を口にする。


「ずっと……ずっとケビン君のことが好きです! 瞳のこと褒めてくれた時から気になりだして、一緒に過ごしているうちに段々と好きになりました! 私を……私をお嫁さんにしてください!」


 カトレア一世一代の大告白がケビンの耳に届くと、ケビンは茶化すことなくそれに答えた。


「俺は嫁さんがいっぱいいるぞ?」


「サラ様に聞いたから知ってる」


「お前の祖国と戦争するやつだぞ?」


「あれは……教団のトップが悪い。ケビン君を魔王呼ばわりするから」


「昔と同じで自由にフラフラしてるぞ?」


「束縛したりしない」


「俺は独占欲が強いぞ」


「いいよ。ケビン君に独占されたい」


「魔王の嫁になっても後悔しないな?」


「後悔するような半端な気持ちじゃない。ずっとケビン君のことだけが好きで、他の男性とは付き合ったこともないんだよ」


「……わかった。俺の嫁になって欲しい。これからはずっと一緒だ」


「……ぃ……はい!」


「ちなみに正妻だからな」


「えっ……何で……?」


「付き合いが長くて思い入れがあるからだ。俺のことをずっと想っててくれてありがとう」


「ケビン君……」


 ケビンはそう答えを返したらカトレアの手を取り、左右それぞれの薬指へ指輪を嵌めた。そしてカトレアの瞳を見つめては抱き寄せて、ゆっくりと唇を触れ合わせる。


「ん……」


 やがて唇が離れお互いに見つめ合うと瞳を潤ませていたカトレアから、一雫の涙がこぼれ落ちる。


「やっと……やっと告白できた……」


「そんなに好きだったのか?」


「うん……ケビン君じゃなければ一生独り身でもいいと思えるくらい」


「そっか……」


「ケビン君は私のこと好き?」


「嫌いな相手の瞳を覗き込んで褒めるわけないだろ」


「……ねぇ、言葉にして言って欲しいな」


 カトレアのささやかな願いを聞いたケビンは少し逡巡すると、吐息のかかる距離まで顔を近づけ瞳を見ながら気持ちを伝えた。


「好きだ」


 そしてケビンが再び唇を重ねるとカトレアはピクっと反応するが、ケビンへその身を委ねる。やがて離れた唇を名残惜しそうにカトレアは見つめ、ケビンへと声をかけた。


「エッチ……する?」


「……はぁ……まさかこの状況でそれを言うとはな。そんなにしたいのか? もしかして欲求不満か?」


「ち、違うよっ! ケビン君がさっきまでしてたから、エッチが好きなのかなって思って……ケビン君も男の子だし……その……そういう気分になっちゃって2人を抱いたのかなって……」


「あれはクララとアブリルに襲われたんだ。俺からしたわけじゃない」


「そ、そうなの?」


「お前はいったい俺を何だと思ってるんだ?」


「お嫁さんがいっぱいいて、みんなを満足させるほどエッチな人?」


「おい……」


「それでもまだ足りなくてお嫁さんを増やしてるって……」


「……誰情報だ?」


「……サラ様とマリアンヌ様」


「はぁぁ……」


 ケビンは2人の母親があけすけに情報開示をしている様を容易に想像してしまい、空を見上げると大きく溜息をつくのである。それから天幕の中へと戻った2人を歓迎したのは、その母親たちだった。


「ふふっ。良かったわね、カトレアちゃん」


「一生懸命な告白が可愛かったわよ」


「これでカトレアは私の義妹ね!」


「え……き、聞こえて……」


「天幕の傍であれだけの告白をしたんだから、中に聞こえてしまうのは当然よ」


「あ、あわわ……」


 マリアンヌから教えられたことによってカトレアは瞬時に真っ赤となりワタワタとし始めたら、そのようなカトレアをサラが抱きしめた。


「これでカトレアちゃんは私の義娘ね」


「え……サラ様……?」


「ケビンをよろしくね」


「は、はい! あの……お義母さんって呼んでも……」


「いいわよ。当然じゃない」


「……サラお義母さん……」


「ふふっ、なぁに?」


「サラお義母さん、サラお義母さん……」


「甘えん坊ね」


 サラの母性に包まれたカトレアはサラをギュッと抱きしめて、サラの名を呟き続けるのだった。そして部下のカトレアが告白を成功させてケビンの嫁となったことで、上官3人は自分たちのことで話し合っては楽しくお喋りをする。


「なぁ、あたしたちも告白すべきなのか?」


「どうかしら~フィアンマちゃんはケビン様のことが好きなの~?」


「わかんねぇ。会ったばかりだしな」


「メリッサちゃんは~?」


 オフェリーからいきなり話を振られたメリッサは不意打ちにドキッとして、上手く喋れずモゴモゴとしてしまう。


「わわ、私は……その……」


「免疫ないからまだ無理ね~」


 図星を刺されてしまったメリッサはオフェリーへ反撃するが、軽くいなされて失敗に終わることとなる。


「そ、そういうオフェリーはどうなんですか?!」


「私は好きだよ~ずっと言ってるじゃな~い。キュンキュンしてるって~」


「本当のことだったのか?」


「そうだよ~疑うなんてフィアンマちゃんは酷いな~フィアンマちゃんだって『守ってやる』って言われたらドキドキするでしょ~?」


「あたしはあたしを守れるようなやつに会ったことねえからな。あたしより強い男がいたらあたしが団長なんてやってねぇだろ」


「ケビン様はフィアンマちゃんより確実に強いよ~戦って勝てると思う~?」


「……無理だ」


「それなら守ってもらえるじゃな~い」


「言われたわけじゃねぇし、わかんねぇよ」


「それじゃあ想像してみてよ~ケビン様がフィアンマちゃんを見つめて、『俺がフィアンマを守る。絶対に死なせない』って言われてるのを~」


 オフェリーから煽られたフィアンマはいったい何を想像したのかわからないが、急にボッと顔を真っ赤に染め上げると俯いてしまいゴニョゴニョとし始めてしまった。


 そのような時にウカドホツィ辺境伯が左翼から戻ってきて、疲れた顔を浮かべながらケビンへと報告する。


「皇帝陛下、予想通りのことがあったみたいですぞ」


「予想通り?」


「部下からの報告で、私がこちらへ来ている間に敵の総団長が協力を請うてきたようです」


「……馬鹿だ」

「馬鹿ね」

「馬鹿だわ」

「馬鹿すぎるわ!」


「総団長……」

「相変わらずだね~」

「敵としての視点で見ると、こうも愚かに見えてしまうとは……」


「それでどうなったの?」


「はあ……皇帝陛下を前にして言い難いのですが……」


「構わない。報連相は大事だからな」


「では、『全ては魔王のしたことであり、私たち神聖なる女神フィリア様の信徒がしたことではないのです。ヘイスティングスの発言も魔王の魔法により洗脳されたことが原因です。ことが明るみに出るのを恐れて、ああして処刑をして口封じを行ったのです。姿を変え魔物の巣へ送り込んだのがいい証拠です』とのことです」


 ウカドホツィ辺境伯は全てを覚えることができなかったのか、紙に書いてある報告書を読みながらケビンへ伝えていて、それを聞いた一同は呆れてものが言えないと思いつつも、しっかり感想を述べていく。


「ないわぁ~」

「凄い洗脳っぷりね」

「フィリア教団って洗脳魔法とかあるのかしら?」


「愚かにも程があるな」

「だが、これが洗脳によるものなら脅威だぞ」

「ここまで人の価値観を強要させる洗脳とは……」


「総団長、普通の時は可愛かったんだけどなぁ」

「そうね~おっちょこちょいなところが特にね~」

「保護欲を掻き立てられましたね」

「憧れの人だったのに……」


 皆が思い思いのことを口にしたら、ウカドホツィ辺境伯はケビンへ今後の方針を尋ねる。


「いかがしますかな?」


「えっ? 断ったんじゃないの?」


「それがですな、部下が仔細の報告書を書きながら対応をしている最中に、こちらへ転移されたと申しましてな」


「ま、まさかな……はは……」


 この時の一同はとても嫌な予感がした。奇しくも同じことを考えついたようであるかのように、ケビンの発言に驚きもせず賛同しているかのような表情となる。


「なぁ……まさかこちら側まで来て協力なんて求めないよな?」


「常識の上で語るならまずないでしょうが……」


「はぁぁ……バカリエルも相当だな……まぁ、来たら来たで追い返していいぞ。辺境伯も今更協力する気になれんだろ?」


「なれませんな。それどころか我が軍へ協力を求めに来た時は、兵士たちが殺気立っておったようです。よく動かず我慢したと褒めてやりましたな」


「そりゃそうだろ。協力してここまで行軍してきたのに、別の部隊がその間に村々を襲って女の子を攫った上に、乱暴したり奴隷として売り払ってたんだ。歓迎してたらそいつの神経を疑うぞ」


「殺気立ってたのに気づかなかったのかしら?」


「大方自分の話を聞いた兵士たちが、ケビンへ殺気立ったと都合よく解釈したんじゃない?」


 サラのご尤もな意見に対してマリアンヌが答えると、その光景が目に映るかのよう簡単に想像できてしまうため、一同は揃って大きく溜息をついた。


「とにかく今のうちに兵たちへ食事を摂らせておいてくれ。食べすぎで動けないなんてことになるなよ」


 ケビンからの指示を受けた御三家と辺境伯は天幕から出ると、それぞれの受け持つ部隊へ指示を出しに向かっていった。


「俺たちも食事にしよう」


「ケビンが作ってくれるの?」


「そうだよ。決戦前だから美味しいものを食べさせるよ」


 ケビンの能力を知っているサラとマリアンヌは食事に期待していたが、それを知らないセレスティアの4人は、皇帝自らが料理をするのかと不思議に思っていた。


「皇帝陛下って料理を作れんのか?」

「男料理かな~」

「我々がしなくてもいいのでしょうか?」

「ケビン君の手料理……」


 そのような言葉をこぼしている4人を他所に、ケビンはサクサクと創造してはテーブルへ料理を並べていく。


「て、手品?」

「どこから出てきてるの~」

「りょ、料理なのですか?」

「手料理じゃ……ない……?」


 サラたちへの食事を並び終えたケビンは先に食べておくように伝えると、天幕を出て馬車へと向かう。そして馬車の中へ入ったケビンを迎えたのは、既に復活を果たしたクララとアブリルだった。


「主殿、何か用かの?」


「また、されますか?」


「アブリル自重しろ。食事を作りに来ただけだ」


 ケビンはここでも同じように食事を準備したら女の子たちへ食べるように伝えたのだが、奴隷として売られていた子たちの元気はあまりなく、視線を向けただけで食べようとはしなかった。


「お腹空いてない?」


「……死にたい」


 ボソッと呟いた言葉はケビンとしては受け入れられないもので、奴隷だった子の後ろに回ると二人羽織よろしく、食事を食べさせることにした。


「はい、どうぞ」


「いらない」


「食べないと元気にならないよ?」


「死ぬからいい」


「そんなに生きたくない?」


「穢れた」


 ケビンはどうしたもんかと悩みだし、とりあえず奴隷じゃなかった子たちに効果のあった抱きしめるという作戦に出た。


「大丈夫。君は穢れてない」


「うそよ」


「穢れてたらこうして抱きつかれると思う? みんな敬遠するんじゃない?」


「わからない」


「俺はね、たとえ男に酷いことをされた人でも愛せる自信はあるよ」


「ありえない」


「まぁ、普通はそう思うよね。周りからは哀れみの目で見られて同情され、男からは穢れたものとして敬遠されて、寄り付くのは体目的だけの男たちだけ。それが世間一般での常識だろうね」


「あなたも体目的。さっきあの2人とやってた」


「確かに俺はスケベだから抱ける人がいるなら抱く。でもやり捨てるようなことはしない」


「それもうそ」


「嘘じゃない。俺の嫁には盗賊に攫われて乱暴された人たちがいる。今は子供も産んで幸せに暮らしてるよ。それでもやっぱり思い出すらしい。乱暴されたことを思い出すけど、俺とか子供の存在のおかげで救われてるって言われたことがある」


「盗賊に攫われて生きてるなんてありえない」


「それは俺が救い出したから」


「盗賊は?」


「攫われていた女性たちと同じ目に遭わせてる」


「同じ目?」


「えぇーっと、食事中に言うのは憚られるんだけど白の騎士団ホワイトナイツと同じように、女性の姿に変えてゴブリンやオークの巣に放り込んだ」


「「「「「……」」」」」


 静かに食事をしながらケビンたちのやり取りを聞いていた他の女の子たちは、先程の所業を思い出して食事の手が止まってしまう。


「あぁぁ……あまり想像しないようにね。食事が不味くなるから」


「そ、その話は本当なのですか?」


「本当。ちょっと待ってて……」


 ケビンはそう告げると以前に巣へ放り込んだ盗賊たちを【マップ】で検索すると、驚くことにまだ生きている者がいて『大事にされてんだな』と思わず感じてしまった。


「まだ生きてる。大事にされてるみたい」


「わ、わかるのですか?」


「ああ、隷属の首輪をつけて死ねないようにしたから、生きていればすぐに見つけ出せる」


「死ねないようにしたのに、生きていれば?」


「想像しないでね? どこを餌として食べられても再生するけど、誰かが首を落としたら死ぬ。それだけが唯一死ねる方法で、白の騎士団ホワイトナイツも同じようにしてる」


「「「「「うっ……」」」」」


 想像してしまったのか、一部の女の子たちは食べた物を吐き出しそうになる。だが、そのことをケビンが指摘すると、猛反発を食らってしまうのだった。


「貴方が『想像しないでね?』って言うからよ!」

「そんなこと言われたら想像しちゃうよ」

「フリ!? フリなの!?」

「「そうだ、そうだ!」」


「とてもいいことだけど、随分と元気になったね」


「貴方が目の前でクララさんたちとエッチするからでしょ!」

「こっちまでエッチな気分になるじゃない!」

「しかもいっぱいしてた」

「アイツらとの記憶よりも衝撃的だった」

「普通乱暴されたあとの女の子の前でしないよ?」

「そうだよ。気を使ってその辺の話題は避けるよ?」


「い、いや、俺は襲われた側であって、君たちと同じようなもんなんだけど……」


「うそよ! 途中から楽しんでたじゃない!」

「『ここがええんか、ここがええんか?』って言ってたじゃない!」

「クララさんたち動けてなかった」

「あれは攻めてたよね?」

「うん。バッチリ攻めてた」


「それは……何と言うか……気分が乗った?」


「やっぱり楽しんでたんじゃない!」

「自分の非を認めなさい!」

「私も気持ちよくしてっ!」


「「「「「……えっ!?」」」」」


 女の子がついうっかり言ってしまった言葉に場は沈黙してしまう。そして発言した女の子に視線が集まり注目された。


「えっ……あっ!? ……あ、あの、違う、違うのよ! クララさんたちが気持ちよさそうだったから、私も気持ちよくしてもらって嫌な初体験を忘れたいとか思ってないよ? あんなに気持ちよさそうになれる行為なら、体験してみたいとか思ってないからね?」


「それ……説明してるの?」

「白状しちゃったね」

「体験したいんだ」

「忘れたいのはわかるけど……」

「実はエッチな子なの?」


「ち……ち……」


「「「「ち?」」」」


「違うのよぉぉぉぉっ!」


 うっかりしてしまった女の子の絶叫で、ケビンが抱っこしている女の子に変化が訪れた。


「ぷっ……」


「あっ、いま笑った?」


「……笑ってない」


「笑ったよね?」


「笑ってない」


「またまたぁ~」


「しつこい」


「ほら、生きていれば楽しいこともあるだろ? だからご飯を食べような? 元気になってもっと俺にその笑顔を見せてくれ」


「口説いてんの?」


「君が生きてくれるなら喜んで口説くし、一生離さないでその笑顔を見続ける」


「……バカ」


「照れてる顔も可愛いな」


「ッ! は、早く食べさせて」


「ん? 食べないんじゃなかったの?」


「うっ……い、一生面倒を見てくれるんでしょっ!」


「はは、やっと素直になったな。可愛いヤツめ」


「~~ッ! いいから食べさせてっ!」


「仰せのままに、お姫様」


「もうっ、一生離れてやらないんだからっ! 覚悟してよねっ!」


「それは俺にとってはご褒美だな。可愛い子が傍にいるのは嬉しいだけでしかない」


「可愛い、可愛いって言わないでよっ!」


 耳を真っ赤に染めている女の子にイタズラ心が出てしまったケビンは、その耳元に口を近づけるとボソッと呟いた。


「大好きだよ、俺だけの可愛いお姫様」


「~~ッ! もうっ、知らない!」


 ケビンはそれからプンプンとむくれている女の子にご飯を食べさせていき、それが終わると他の女の子たちにも話しかけてご飯を食べるように促すと、「耳元で同じように囁いて食べさせてくれたら食べる」と言われてしまい1人目と同じ方法で食べさせていく。


 そして馬車内の食事介助が終わったケビンは天幕の中へと戻り、ご飯を食べてから開戦までの時間をのんびりと過ごすのであった。

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