第418話 女性騎士団入団式兼発足式
数日後、新人騎士たちが生活に慣れてきた頃、当初の予定であった入団式典を行うことになり、ケビンは今更感がとても強く取りやめたかったのだが、任命式も兼ねているので是非やって欲しいとターニャからお願いされて仕方がなく式典を開くことにした。
「書類上はもうウチの騎士なのに……」
そして式場は訓練場を使うことになり、やりたくないケビンがその準備で追われてしまう。
わざわざ壇上を作ってはそこで騎士へと任命するため幅広な設計で作られており、溜息をつきつつも着々と作業を進めていく。
そのケビンが嫌々ながらも作業を続けられているのは、ひとえに監視役兼指示出し役のターニャが傍で見張っているからだ。
「ケビン君、両サイドに階段を作ってね。上がる時と下りる時は別々にするから」
「はぁぁ……はいよ」
「もうっ……そこまで嫌な顔をしなくてもいいじゃない」
「だってねぇ……先月即位式典をやったばかりだってのに……今月もまた式典だよ……」
「今回のは女性騎士団発足の意味もあるからちゃんとしたいの」
「女性騎士団ならターニャたちを迎え入れた時点でできてんじゃん」
「私たちは5人だったから女性騎士団じゃなくて女性騎士班よ。名ばかりの女性騎士団だったから今回のはちゃんとしたいの」
「それにしても自由に決めていいとは言ったけど、新規で50人も必要なの? そんなに仕事はないよ?」
「これでも少ない方よ。本当は100人くらいの規模にしたかったけど、私たちが5人だから先ずは1人で10人くらいの面倒を見れる割合でいこうって話し合いで決めたの」
「へぇーということは、慣れたら増やすんだ」
「将来的には増やしたいけど帝国にいる限り戦争は皆無っぽいから、ケビン君が言った通りで仕事が帝城にいる女性たちの護衛くらいしかなさそうなのよね」
「そうだね」
「とりあえずさっさと式場を作りましょう。今日中に式典は終わらせたいから」
「作りましょうって作ってるのは俺なんだけど。しかも式典の参加も俺なんだけど」
「もうっ、わかったわよ。ちゃんとできたら夜にサービスするから。ね? だから頑張ろう?」
「よっしゃっ! 俄然ヤル気が出てきた。ターニャ、どんどん指示を出してくれ!」
「もう……現金なんだから」
夜のサービスというご褒美で嫌々やっていた作業を見る見るうちに終わらせてしまうケビンを、ターニャはご褒美で態度が変わるその子供っぽさに呆れながらも、可愛げのある部分に顔を綻ばせていた。
それから式場を完成させたケビンは午後一で行う式典の準備のため、昼食後は儀礼服へ着替えることとなる。
そして迎えた女性騎士団入団式兼発足式は、進行役のケイトの手によって開始される。
「それではこれより女性騎士団入団式兼発足式を開始します。先ずは今年騎士へと入団した新人の任命式を行います。皇帝陛下、ご登壇」
ケイトの指示が出たことでケビンは壇上へ上がっていく。ケビンが位置について辺りを見渡すと、騎士鎧に身を包んだ女性たちが整然と並び膝をついて頭を垂れていた。
その最前列にはターニャたち第1班の面々が膝をついており、その後ろから第2班、第3班と列を成してそれが第6班まで続いている。
(こうやって見ると壮観だな……)
ケビンがその眺めに感嘆としていると、小さな声でケイトから早く進めろ的な指示が飛んでくる。
(え……何をすればいいんだ?)
『サナ、緊急事態だ! 何をするか忘れた!』
『「面をあげよ」です!』
『うわっ、偉そうな物言いだな。「面をあげぽよ」じゃダメなのか?』
『奥さんたちからのジト目を浴びたければそうしてください。ちなみにギャル発信でもギャル語じゃありませんからね。元々は鹿児島弁で鹿児島人が使いますから。今でも使っている方がいるかは存じませんが』
『!?』
『早くしないとケイトさんが睨んでますよ。既にジト目1号となってます』
『いや、それよりも鹿児島弁の方が凄く気になる! なに、そのトリビアネタは!?』
『さて、何へぇ獲得するでしょうか?』
『へぇへぇへぇへぇへぇ――』
ケビンがサナのこぼしたトリビアネタにもの凄く関心を示して盛り上がっていると、ケイトはとうとう我慢の限界がきたのかケビンへ最小限の声の大きさで注意した。
「ケビン、先に進めなさい! 皇帝でしょ!」
思わぬところでケイトからきた叱責に、ビクッと反応したケビンが慌てて声を出す。
「お、面をあげぽよ!」
「……」
「あ……」
やってしまったケビンがその間違いに気づいても後の祭りではあるが、幸いなことに「あげぽよ」が通じるのはソフィーリアかサナくらいしかおらず、この場にいる者たちは意味がわからなくてただケビンが勢い余って噛んだくらいにしか思っていなかった。
だが、ケビンにとっては痛恨のミスで、式場が静まり返っているのはとても痛々しいものでもある。
『ここで間違うとかマスターって実はギャル男ですか? ぷーくすくす。あげぽよ、ウェーイ!』
『くっ……サナが変な情報与えるからだぞ!』
『まぁまぁ、そう落ち込まずに。ケビっち、あげぽよー』
『くそー、サナのくせにー!』
地団駄を踏みたくなるサナからの揶揄いに対して、ケビンは何とかしてひと泡吹かせてやりたいと思ってしまうが、式典は続いているので再度ケイトから注意が飛んできてケビンはサナへの逆襲を保留にするのだった。
「面をあげよ」
今度は間違えずにちゃんと言えたケビンの言葉で、騎士たちは面をあげると壇上のケビンを見て新人たちがザワザワとし始める。
「静まれ、不敬であるぞ!」
ミンディからの一喝で新人たちが静まり返ると辺りは再び静寂に包まれてケビンは居ても立っても居られないが、針のむしろを避けるためにそそくさと進行していく。
「ミンディ、大目に見てやるが良い。此度は女性騎士団入団式兼発足式である。多少の羽目くらい外そうと気にするでない」
『おいっ、この喋り方っておかしくないか?』
『威厳ある喋りでいいじゃないですか』
『はぁぁ……』
「陛下の御心のままに」
ケビンがサナに物申しているとも知らずにミンディは返答するが、ケビンの耳に入っているかどうかは不明である。
「新人諸君らがこの度我が帝国に属してくれたことは、大いに喜ばしいことである。よって諸君らを騎士へと任じ、今後は騎士として我が国へ貢献することを期待する。これにより、女性騎士のみの編成とした女性騎士団の設立をここに宣言する。騎士団長ターニャ」
「はっ!」
「規律を維持し、練度を高め、団の維持に努めよ」
「謹んで承ります」
「副騎士団長ミンディ」
「はっ!」
「騎士団長を補佐し、第2班以下、班長を指導し騎士の育成に努めよ」
「謹んで承ります」
「第2班から第6班班長」
「「「「「はい!」」」」」
「規律を維持し、練度を高め、班の維持に努めよ」
「「「「「御意!」」」」」
「第2班から第6班副班長」
「「「「「はい!」」」」」
「班長を補佐し、班員の育成に努めよ」
「「「「「御意!」」」」」
「騎士諸君らに告ぐ。騎士たることに誇りを持ち、日々己を高め、民草を案じ、滅私奉公に努めよ。以上を持って、女性騎士団入団式兼発足式の閉会を宣言する」
(決まった……)
『いや、ドヤっているところ悪いのですが、勝手に終わらせるのはどうかと思いますけど……』
『え……ダメなのか?』
『それはケイトさんの仕事でしょう。ほら、口を開けてポカンとしていますよ』
『ヤバいな……』
『しかも、騎士たちを登壇もさせずにその場で指示出ししていましたよね? 何のために階段を作ったと思っているんですか』
『でも、ターニャたちとか普通に返事をしていたぞ』
『それはマスターがアドリブで暴走したから合わせてくれたんですよ。臨機応変に対応したっていうやつです』
『もういいや。過ぎてしまったことは仕方がない』
ケビンはさっさと気持ちを切り替えてケイトからのお叱りをどう言い訳して逃れようかと画策していたら、視界の中に1人の女性が目に入ったのでうっかりしていたことを伝えることにした。
「第2班ネア・ミリオン」
「は、はいっ!」
「先般の答えは皇帝だ。次回のクイズを楽しみにしておくがよい」
「ひゃいっ!」
伝えるだけ伝えたケビンはケイトが放心している隙に、そそくさと憩いの広場へ逃げていく。
そして、ケビンが立ち去った式場では、我に返ったケイトがふつふつと怒りのボルテージを上げながらケビンがいるであろう憩いの広場へと向かい、残された女性騎士団はターニャの指示の元で、今日はこのまま解散となり明日に備えることとなる。
このあと、結局ケビンはケイトに捕まって叱られてしまうが、ターニャたちが上手く式が終わっていたから問題ないとフォローを入れたのでケビンは事なきを得る。
そしてケビンは以前にダンジョンでGを倒した時の貸しを返してもらうのと夜にサービスをするというターニャの言葉で、とある要望をターニャたちへ伝えていく。
それを聞いたターニャたちは困惑しつつも了承したので、ケビンは悪い笑みを浮かべて計画を練っていくのであった。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
その日の夜、ケビンはターニャたちへあることを頼んで部屋へ来るように伝えていた。
そして部屋へ訪れたターニャたちは何も知らされていないので、こうなることは露ほども想像していなかったのだ。
「ケビン君、何で手と足が縛られたんですの!?」
手と足の自由を奪われ転がされているターニャたちが藻掻くと、ケビンに頼まれて着込んできた騎士装備がガチャガチャと音を奏でる。
「“くっころ”……人はそれを女騎士の宿命だと言う……」
いきなり語り始めたケビンにターニャたちは困惑顔で耳を傾けた。
然るにその内容とは、早い話がターニャたち本物の女騎士にくっころを言わせたいケビンの思惑が隠されていたのだ。
そして、新人騎士たちが入団したことで今やケビンを止められる者はいない。そう、ケビンはくっころを満喫しつつターニャたちを妊娠させようと考えついたのだった。
「君たち女騎士は今から凌辱を受けるのだ。いでよ、《触手くん》!」
パチンと指を鳴らしたケビンの部屋の床に魔法陣が現れると、ピンク色の触手くんたちがうにょうにょとその姿を現していく。
「な、何ですの、それはっ!?」
出現した触手くんたちがターニャたちを絡めとると、どんどん宙吊りにしていくのだった。
そして今回の触手くんはなんと媚薬成分配合で、以前のものよりバージョンアップされている。これを使われた女性は「天にも昇る快感」(※個人の感想によるもので効果を保証するものではありません)と言わしめるほどの出来栄えである。
「き、気持ち悪いですわ!」
ケビンは触手くんたちによってターニャたちが拘束されたのを確認したら、手足を縛っていた縄を解いて触手くんたちを操り身動きが取れないように操作するのだった。
「さぁ、触手くんたちによる狂宴を開催しようではないか!」
こうしてケビンはターニャたちを次々と抱いていき、ターニャたちが望んでいた妊娠をさせて朝までノンストップで続けていくのであった。
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