第374話 パパさんの機転

 世界樹の秘密がわかった日から数日後、ケビンは代わる代わる嫁たちの相手をしていた。それもこれもソフィーリアが発言した妊娠させるだけさせておいて、出産時期をずらすという神の御業を嫁たちに使うと言ったせいでもある。


 兎にも角にもケビンはまず残る正妻組であるクララとクズミをそのまま妊娠させることにして、時期をずらすのは他の側妻たちから始めることにした。


「主殿よ、私やクズミを孕ませるのは難しいぞ?」


「大丈夫だ。俺の魔法を使えば1発で妊娠する」


「よもや私が人の子を孕む時がこようとはな」


「ケビンはん、うちにも魔法を使うてくれはるん?」


「ああ、クズミにも俺の子を産んでもらう」


「ケビンはんの子ならきっと可愛い子が生まれるえ」


 その日は2人を抱いて魔法を使うと、たとえ異種族であろうが関係なく妊娠させることに成功するのだった。


 そして数日後のこと。


「ケビンさ~ん」


「どうした? ナナリー」


「孕ませてください」


 ナナリーの突拍子もない言葉にケビンは絶句する。


「ふふっ、私は聴き逃しませんでしたよ」


「な、何を……?」


 ナナリーがケビンへ伝えた内容は、以前ケビンがダークエルフのお悩み相談の話し合いをしている時に、うっかり口を滑らして“懐妊魔法”のことを言ってしまっていたことだった。


「マジか……」


「正妻組の残る2人にも確認を取りましたよ。2人とも妊娠したんですよね? それにソフィ様と話していましたよね? ね?」


「な、何のことかな?」


「みんなが同じ時期に出産ってならないようにずらすんですよね?」


「それは……」


「花見の2次会の時に野外でしたように愛してください。元の体型へ戻す前に襲いにきた時よりも良かったですよね? ほら、ケビンさんの好きなおっぱいですよ?」


 ナナリーはケビンの手を取ると服の中へ入れて直接触らせるのだった。


「あれ? 下着は?」


「いつでも襲ってもらえるように外してきました。もちろん下も」


「ナナリー!」


「きゃっ」


 ケビンは居ても立っても居られず、そのまま通路でナナリーを孕ませてしまうのだった。


「ふふっ、幸せです」


 そしてそれを目にした他の嫁たちがケビンを襲いに次々と足を運んで、何処であろうと構わず抱かれていくのだった。


 更には1度抱いていたにも関わらず暇さえあればケビンを襲いに再度抱かれにくる嫁たちが多発して、ケビンが執務をしていようが関係なくやって来ては自ら腰を振ってケビンを襲った。


 そのような生活を送っていたケビンだったが、強制的にシャットアウトした時がある。それはティナとクリスが産気づいた時だ。


 さすがに他の嫁たちもその時ばかりは2人の出産を優先して、いつもの生活に戻っていった。


 ケビンは同時出産となったことで何かいい方法はないかと思案したら一縷の望みを賭けて自身に対して【複製】のスキルを使ってみると、ものの見事に成功してしまいケビンが2人となってしまったのだった。


『影〇身の術』


『いや、叩かれても消えないから。俺の意思でオンオフ可能だから』


「「よし、これでひと安心だ」」


 目の前のケビンがいきなり2人になったことでティナとクリスは驚きで目を見開くと、衝撃的な光景が影響したのかそのまま出産体勢に移行してしまう。


「2号、お前はクリスの方を頼む」


「任せろ、1号。ティナは頼んだぞ」


 それから滞りなく2人の出産を終えると、それぞれに赤ちゃんを見せるのだった。


「ティナ、男の子だ。種族はハーフエルフみたいだな。ティナと違ってちょっと耳が短い気がする」


「ケビン君、嬉しいよぉ……」


「クリスは女の子だ。クリスに似て美人に育つんだろうな」


「ケビン君、ありがとう。私、幸せだよ」


 ケビンは2人をベッドへ転移させると、赤ちゃんをそれぞれの隣へ寝かせた。


「ティナの子はシルヴィオ。森を愛する者って意味だ。エルフっぽいだろ?」


「クリスの子はオルネラ。聡明で機転の利くって意味だ。クリスみたいな女性に育って欲しいからな」


「シルヴィオ、ママだよー」


「オルネラ、元気に育ってね」


 ケビンはそのまま2人の傍でしばらく過ごして、なんちゃって分身の術を維持したまま2人それぞれの相手をするのであった。



◆ ◇ ◆ ◇ ◆



 その日の夜、ケビンはソフィーリアの寝室を訪れていた。


「テオは寝た?」


「ええ、さっき寝たわ。今日はどうしたの?」


「怪我の功名でできたことを1番にソフィへ試そうと思ってね」


「ふふっ、何かしら? 楽しみだわ。その前にテオが音で起きないようにしないといけないわね」


 ソフィーリアが力を行使するとテオの周りに遮音の結界を張るのだった。


「結界くらいなら俺がやったのに」


「ただの結界じゃないわ。朝までゆっくりお休みする結界よ」


「夜泣きしないってことか」


「そういうこと。さぁ、朝までゆっくり楽しみましょう」


 ソフィーリアがそう言うとネグリジェを脱ぎ捨てて、見事なプロポーションをケビンへ見せつける。


「体型が崩れないのは神ならではか?」


「そうよ。出産した子たちにもしてあげたのよ。みんな喜んでたわ、あなたに体を見せられるって」


「それにしてもデカくなったな」


「ふふっ、健のイニシャルでもあるKカップでキングよ」


「ケビンもKだけどな。それよりもソフィは女性だから、どちらかと言えばクイーンだろ」


「Qカップはさすがに無理よ。ただ大きいだけでバランスが悪いし、見栄えが悪い体はあなたに見せられないわ。それで、あなたは何をしてくれるの?」


 ケビンも服を【無限収納】の中へ回収すると、さっそく【複製】でなんちゃって分身の術を使うのだった。


「「凄いだろ?」」


「健が2人になったわ。それで同時出産をこなしたわけね」


「「たっぷり可愛がってやるからな」」


 2人のケビンがソフィーリアへ近づくと押し倒して、それぞれ別々でソフィーリアを可愛がるのであった。


 そして1回戦が終わった頃、ケビンがソフィーリアへ終わりでないことを告げる。


「「まだまだ終わりじゃないからな」」


「ふふっ、素敵よ健。いっぱい愛してくれるのね」


「「次は激しくいくぞ?」」


「望むところよ。朝までに私をダウンさせられるかしら?」


 何を隠そう、神であるソフィーリアをダウンさせるのは人を相手にするのとでは全然違い、ケビンも過去に1回だけ24時間耐久レースでしか達成していなかった。


 だがその時は二刀流も分身も編み出していない時だったので、今となっては不敵な笑みを浮かべるソフィーリアの挑発にあえて乗って、朝までにダウンを取れるように意気込むのである。


「「やってやる!」」


 再び意気込みを見せるケビンたちだが、本体である1号がスキルを使って更にケビンを増やすのだった。


「3号、言わなくてもわかってるよな?」


「当然だろ。俺はお前、お前は俺なんだからな」


「ふふっ、仲間を増やしたのね」


 ケビンがもう1人増えたことによって、ソフィーリアはこれから始まることへの期待感で胸を膨らませるのである。


 それからケビンたちとソフィーリアは互いに戦って、ケビンはソフィーリアをダウンさせる目的のため、ソフィーリアはケビンからダウンを取られないために体を貪り合うのであった。


 そして翌朝のこと。


「長い戦いだった……」


「そうだな」


「ラスボスと言っても過言じゃないだろ」


 ソフィーリアが気絶している傍で、ケビンたちは戦いの感想をこぼしていたのである。


 ケビンはソフィーリアのその姿を映像に残すべく魔導具を創り出しては、しっかりと色んな角度から保存していくのであった。


「これは記念すべき勝利映像だ。永久保存版にしよう」


「1号、それなら始める前から記録すれば良かっただろ?」


「フッ、俺のくせに考えが甘いな2号」


「まさか……」


「そうだ。記憶読み取り機能を付けた。これにより4人それぞれの視点からの映像が保存されることになる」


「「業が深い……」」


 こうしてケビンは才能の無駄遣いをして、永久保存版の記録映像を入手するのである。



◆ ◇ ◆ ◇ ◆



 勝利を収めたあとに朝食を食べ終わってティータイムを楽しんでいる中で、ケビンは嫁たちへ声をかけたのだった。


「ソフィ以外の子供を産んだ正妻組は耳を貸してくれ」


 ケビンの発言により嫁たちはお喋りをやめて静まり返ると、ケビンが何を言うのか気になって注視している。


「今日はそれぞれのお義父さんやお義母さんたちへ、赤ちゃんが無事に生まれたことを報告しに行きたいと思う」


 こうしてケビンと嫁たちは、それぞれの親へ会いに行くため支度を始めるのであった。


 そして最初に向かったのはティナの実家である。ティナはシルヴィオを抱いてニコニコとしながら、実家の門戸を叩くのではなく遠慮なしに開けては中へと入って行く。


「ただいまー」


 ティナの帰宅の声に姿を現したのは母親であるミーシャだった。


「あらあら、誰かと思えばティナじゃない」


「お母さん、私赤ちゃん産んだの」


「あなたぁ~、ティナが赤ちゃんを連れてきたわよ~」


 ミーシャの呼び掛けに父親であるゼノスが顔を出すと、ケビンは軽く挨拶をしてティナとともにリビングへ案内された。


「それで? その子の名前は?」


「シルヴィオよ。森を愛する者って意味なの。ケビン君がつけてくれたのよ、素敵でしょ?」


「いい名前ね。ティナ、抱っこさせて」


「いいわよ」


「シルヴィオちゃ~ん、おばあちゃんですよ~」


 ティナから受け取り孫を抱いたミーシャはデレデレになってティナと2人でシルヴィオを可愛がると、手持ち無沙汰な男2人は世間話をしながら暇を潰すのであった。


 その後しばらくくつろいでいたケビンたちだったが、他にも挨拶回りが控えているためにお暇することにしてティナの実家を後にする。


「また来てね、ケビンさん」


「待ってるぞ」


「はい、また来ます」


 2人への挨拶を済ませるとそのままケビンたちは帝城へ転移した。


 そしてティナの次はニーナの実家へと挨拶に向かった。相変わらずカミカミであるニストに対してリシアはおっとりとしていて、落ち着いた状態で3人を迎え入れる。


「ひしゃっ、ひしゃしぶりでしゅ、へいきゃ」


「あなた、ケビンさんは息子なのよ。そんな他人行儀じゃダメじゃない」


「お母さん、この子はニーアムって言うの」


 ニーナから孫を紹介されたリシアは未だに緊張しっ放しの夫のことなどどうでも良くなり、ニーアムを抱いてはあやすのだった。


 そのような中でケビンはカミカミのニストを相手に何とか会話を成立させながら、ひと時の時間をニーナの実家で過ごしていく。


「それにしてもあのニーナが母親になるなんてね。人ってわからないものだわ」


「どういう意味よ」


「奥手なニーナが夜の営みをちゃんとしてたってことよ」


「ちょっと、お母さん!」


 開けっぴろげに夜の話をされてしまい、ニーナは顔から火が吹きでそうなくらい真っ赤に染め上げるのだった。


 やがてニーナの実家を後にしたケビンたちが帝城へ戻ると、ニーナと入れ替わりでサーシャがやって来て次なる場所へ赴くのだった。


「お母さん、エミリーを見せに来たわ」


「あ、あなた! あなたぁぁっ!」


 サーシャの母親であるイルムは必死に夫を呼びながら、そのまま奥へと走り去ってしまった。


「さ、行きましょ」


「相変わらずだね」


 何事もなかったかのようにサーシャが口にしてケビンを誘導すると、ケビンはそれに倣って苦笑いしながらサーシャについて行く。


 リビングへ到着すると興奮して必死に事情を説明している母親と、とりあえず落ち着かせようとする父親の姿があった。


「お父さん、ただいま」


「おう、おか――」


 サーシャの抱いている赤子の姿を見た父親が言葉半ばに止まってしまうと、イルムは必死に夫であるクラムスへ呼びかけるのだった。


「あなた! あなた!」


 イルムはそんなクラムスを激しく揺さぶって正気に戻そうとしていたら、やがて正気に戻ったクラムスが言葉をこぼす。


「……あ、ああ、大丈夫だ。娘が赤ちゃんを連れてきた夢を見ていたようだ」


「あなた、現実ですよ! 夢じゃありません!」


「……」


「お父さんもお母さんも相変わらずで安心したわ」


 それから落ち着いた2人へ再度エミリーを紹介すると、孫の顔を見たクラムスとイルムは破顔してメロメロになるのである。


「エミリー、おじいちゃんでちゅよ~」

「おばあちゃんもいまちゅよ~」


 娘とその夫を放置してエミリーを交互に抱いては、赤ちゃん言葉で語りかけながら至福の時を過ごす両親であった。


「我が親ながら全く……」


「幸せそうだからいいじゃないか」

 

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