第309話 ソフィーリアの嫉妬

 翌朝気持ちよく目覚めたケビンは、周りに寝ている嫁たちを見て唖然としてしまう。目に見えている光景は事後と言わんばかりに、誰しもが一糸まとわぬ姿だったからだ。


(睡姦された?)


 この場にソフィーリアがいなければそういう思いも過ぎらなかっただろうが、相手が神である以上、ケビンを目覚めさせずに致してしまうことなど容易のことだろうとケビンは推測したのだった。


 やがてそれぞれが目覚め始めると、ソフィーリアが揶揄うような表情でケビンへと告げる。


「してないわよ?」


 ソフィーリアの言葉に嫁たちは首を傾げるが、ケビンの考えていたことを伝えられると顔を真っ赤に染め上げるのだった。


 それから昨日の出来事をソフィーリアが伝えて、ケビンは寝落ちしてしまったあとの配慮に感謝の言葉を告げると、ソフィーリアが言葉もいいけど愛が欲しいと告げてケビンへと襲いかかる。


「ちょ、ソフィ!?」


 ケビンからの問いかけにソフィーリアが答えた。


「聞いているのよ? 今更言うのもなんだけど、ニーナに初めてをあげたそうね?」


「え……?」


 ケビンは何のことだかわからなかったが、ソフィーリアが続きを話して理解するのである。


「ご奉仕してもらったのでしょう?」


「あ……」


「私はあなたの1番であることが望みなのよ? ニーナに先を越されて1番が取れなかったわ」


「それは……その……」


「それにティナにもあげたのでしょう?」


「ん? ティナ……?」


「後ろで初めてしたのよね?」


「そ……それは……その場の雰囲気に負けたというかなんというか……」


「ねぇ、あなた……私だって嫉妬するのよ? 知っていたかしら?」


「ソフィ……」


「あなたが言ってくれれば私だってしたのよ?」


「いや……女神様相手だと冒涜的な行為かなって思って……」


「あなたに会う以前ならそうね。でも今はあなたの妻なのよ? 女神である前に1人の女なの。ニーナに聞いてから私だって負けないようにいっぱい勉強してるのよ?」


「……マジ……?」


 ソフィーリアが勉強している光景を想像してみたケビンは、たまらなくなり反応してしまうのであった。


「マジよ。あなたのどんなプレイにも対応できるように勉強中なんだから。でも、寝取るのはいいけど寝取られとかはやめてね。あなた以外の男に抱かれたくないから」


「俺もソフィや他の女性たちが誰かに抱かれるのは我慢できない。それを知ったら怒り狂って即闇堕ちして暴れる自信がある」


「独占欲が強くて良かったわ、あなたに寝取られ属性がつかないから」


「それと次からはソフィを1番にするよ。触手くんはティナを最初にしちゃったけど」


「それなら許してあげる。ティナのはお仕置だから別にいいわ」


 ソフィーリアが舌なめずりをしながら、どんどんケビンを追い詰めていった。


「あなた、ティナに今度コスプレをさせるのでしょう?」


 ここまでされてしまうとケビンもソフィーリアが何を望んでいるのかわかってしまうため、ソフィーリアの満足がいく答えを返すのであった。


「1番最初はティナじゃなくてソフィからしてもらうよ」


「ふふっ、嬉しいわ」


 周りの嫁たちは2人の睦あいの激しさというよりも、ソフィーリアの普段からは想像もつかないほどケビンをガンガン攻めていく姿勢に、顔を染めながらもしっかりと見学していたのだった。


「何が着てみたい? というか、ソフィなら自分で服装は変えれるだろ?」


「あなたが私のために作ってくれた服を着るのがいいのよ」


 ケビンからの質問でソフィーリアが悩んだ末にリクエストしたのは、ケビンの前世であった学生服のブレザーだった。


 ソフィーリアが言うには先輩と後輩の関係でやってみたいということで、要望を聞いたケビンが服を作り出していると、周りの風景はソフィーリアが担当して寝室が作り替えられていき、放課後の教室という如何にもなシュチュエーションが整う。


 何をどうやっているのかケビンにはわからないが、窓の外には夕陽を背景にグラウンドが存在していて、外では部活に勤しむ生徒たちで賑わっていたり、他には下校している生徒たちまでもいる。


(幻惑魔法か……?)


 ちなみにサーシャとスカーレット、そしてアビゲイルの3人は廊下側の席に何故か裸のまま座っており、これから始まる睦あいを見学するために万全の態勢で待っていた。特に3人の中でも、新しいことに目がないスカーレットが興味津々で眺めているのだった。


 そしてケビンとソフィーリアの着替えが終わると、ソフィーリアは自身で決めた設定を語りだす。


「あなたが3年生の健先輩で私は後輩で1年生の莉亜よ。2人は家が隣同士で昔から仲が良くて今年から付き合っているけど、まだ手を繋ぐくらいしかしてないわ。あと、赤ちゃんは保護してあるから気にしないで大丈夫よ」


 そう言い終えたソフィーリアが指をパチンと鳴らすと容姿が変わり、黒髪ロングストレートのブラウンアイへと変貌して、身長も160cmそこそことなる。


 如何にも優等生然とした高嶺の花だと言わんばかりの風貌に、ケビンはゴクリと唾を呑み込み、ただただ呆然と見蕩れてしまう。


「ふふっ、あなたは黒髪でもカッコイイわね」


 そう言われたケビンが我に返ると、窓に反射する自身の容姿を見て黒髪へ変わっていることに気づくのであった。


「俺よりもソフィの方が凄すぎるんだが。何だその優等生感は……それに学生でその胸は凶器だろ。童貞殺しかよ……」


 ソフィーリアの胸はティナをも超えるダントツの大きさであり、そのままの状態でブレザーなんて着ているものだから、一部の自己主張が激しく今にもボタンが飛んでいってしまいそうな雰囲気を醸し出していた。


「それじゃあ始めましょう」


 そう言ったソフィーリアがその場から消えると、ケビンは未だ心の準備が整っていないため必死で役作りに没頭するのだったが、不思議現象を引き起こしているソフィーリアの姿を廊下に捉えた。


(え……廊下に出れるの!? どういう仕組み!?)


 ガラッと扉を開けたソフィーリアが、ケビンへ向かって近寄りながら声をかける。


「あ、先輩。やっぱりここにいたんですね。一緒に帰ろうって約束してたじゃないですか。下駄箱の所でずっと待ってたんですよ」


「え……あ、うん」


(下駄箱まであるの!?)


 未だ状況に追いつけていないケビンは、健先輩になりきれておらずしどろもどろとした返事をして、ソフィーリアが設定上で言っただけの下駄箱に反応してしまうのだった。


「先輩どうしたんですか? 何だか今日はおかしいですよ?」


 莉亜が後ろ手に手を組んで前かがみで上目遣いをすると、健の視線はモロに胸へと集中してしまう。


「せ・ん・ぱ・い」


 莉亜に呼ばれた健は視線が上へ向いて、ジト目をした莉亜に見つめられていたのに気づくのだった。


「もう、見すぎですよ。ただでさえ男子たちにジロジロと見られて嫌気がさしているのに」


「ごめん」


「仕方のない先輩ですね……どうぞ、彼氏さんの特権で見ていいですよ」


「あ、できれば上着を脱いで」


 見てもいいという言葉についつい本音が出てしまった健であったが、莉亜はため息をつきつつ呆れながらも上着を脱いでイスへかけるのだった。


 そして健へ見せるために頬を染めつつ斜め下へ顔を向けて、後ろ手に手を組んだまま姿勢を正したのだが、予期せぬ……ある意味予期できたとも言えることが起こってしまう。


(プチンッ)


 その圧倒的な質量に耐えきれなくなったのか、縫いとめていた糸が千切れてボタンが飛んでいき、健の額へと罰を与えるかの如く当たってしまう。


「いたっ」


「せ、先輩、大丈夫ですか!?」


 額を押さえる健に駆け寄った莉亜だったが、枷が外れてしまったブラウスを押し広げるかのようにできた隙間からピンク色の下着が見えてしまい、健は痛みよりもそっちの方へ気が向いてしまう。


(エ……エロい……)


 健が大して痛がる風でもなく、視線が1点に集中していることに気づいた莉亜が何に気を取られているのか理解してしまい、バッと両手で隠してしまうのであった。


「先輩……エッチです……」


 瞳をうるうるとさせて抗議する莉亜に、健は抗いようのない衝動に駆られて莉亜を抱き寄せる。


「きゃっ」


「莉亜……」


「ダ、ダメです、先輩……ここ、学校ですよ? 私は生徒会役員の一員として模範的行動を取らないといけないんです」


 莉亜の抗議は健に聞き入れてもらえず、健の拘束は一向に緩む気配はない。


 そして健は抗議を続けている莉亜の唇を塞いだ。そして抗議する莉亜の唇が一旦離れるが健は逃がさずに再び塞いでしまう。


「んっ……ダメ……んん……」


 やがて唇を離した健に、腕の中で包み込まれたままの莉亜が力なく抗議する。


「ダメって言ったのに……」


「莉亜は嫌だったか?」


「……嫌じゃないです。でも、初めてはもっとムードのある場面が良かったです。それに不意打ちだったし……」


「放課後の教室も中々ムードがあると思うけど? 誰かが来るかもしれないっていうドキドキ感があるよ」


 2人のやり取りを見ている観客席の嫁3人は、妙にリアリティのある劇でも見せられているかのようで、その動向を食い入るようにして見つめている。


 これから2人はどうなってしまうのか続きが見たくて仕方ないが、逸る気持ちを抑え込みながら生唾を飲み込む音だけが3人の間で響きわたる。


「莉亜……」


「先輩……」


 お互いに見つめ合う2人は自然と顔の距離が近づいて、再び静かに唇を重ね合わせるのだった。


 そしていつもとは違う雰囲気のなせる技か、健の情欲はどんどんと膨れ上がっていき、軽く唇を触れ合わせるだけのキスでは満足ができなくなってしまう。


「ダメ……ここ、学校だから……先輩……」


 莉亜はいつしか抗議するのも忘れて、学校で演じている優等生のメッキが次第に剥がれ落ちていき、プライベートで健と過ごしている時のいつもの莉亜へと戻されていく。


「健にぃ……健にぃ……莉亜のこと好き?」


「ああ、大好きだ」


 それから2人は観客がいることも忘れて愛し合うのであった。

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