第25話 私、万・能・説!

 あくる日、王城から使者が訪問して国王様からの出頭命令が伝えられた。何となく予想はつくが多分お披露目会のことだろう。


 あの場にいて対処できたのは、母さんぐらいなものだからな。何やら褒美云々言ってたし。


 別人が嘘をついて名乗り上げてくれればいいものを、そういうことはなかったらしい。


 証拠を見せろと言われて嘘でしたとなったら極刑になるのだそうだ。“不敬罪”というものに当たるらしい。そこら辺のことはマイケルに聞いたら教えてくれた。


 かと言って名乗り出るのも面倒だしどうしたものか? 何か逃げ切れる方法はないものだろうか。


 そんなことを考えてリビングで寛いでいると、母さんがやってきた。


「ケビン、どうしたの? 浮かない顔して」


「いえ、王城に出向くとか面倒くさいなぁと思いまして」


「王城に出向くとしてもお母さんだけよ? ケビンはここにいて構わないわ」


「もし行かれるとして報告するのですか?」


「そんなことするわけないじゃない。可愛い我が子を晒すことはしないわ。知らぬ存ぜぬで通すつもりよ。最悪行かなくてもいいのだし」


「行かなくていいのですか? 国王様からの命令なのに?」


「大丈夫よ。いくら国王でも私を敵に回したくないでしょうし」


 母さん、どんだけだよ。国王が敵に回したくないって最強じゃないか。


「でも、母さんが行かなくて悪者になるのは嫌です」


「ふふっ。私のことを心配してくれるの? ケビンは優しいわね」


 そう言った母さんは相変わらず俺を膝の上に乗せる。なんかもう定ポジションになりつつあるな。一体幾つまでされるのだろうか? 大人になってもされたら恥ずかしいぞ。


「ケビンが心配するからちょっと王城まで行ってみるわ。知らないって報告すれば終わるのだし、それでいいかしら?」


「わかったよ。母さんの帰りを待ってるね」


 その後、母さんはマイケルを従者に王城へと向かった。その間は暇になるので、今回のことを踏まえてスキル製作に当たろうかと思う。


『サナ、今の俺の状態で【無詠唱】は作れるか?』


『私がサポートすれば可能ですね』


『じゃあ、作るとするよ。イメージしながら……【創造】。よし、終わりだ。いつもながら思うんだけど、代償ってどうなってるの? 俺のMPじゃ足りないんだよな? 魔力も低いし』


『足らない魔力は私が補佐をして、足らないMPは空気中の魔素を掻き集めてMPに補填しています』


『空気中の魔素で支払ってるのか? ぶっちゃけ何でも作れるんじゃね?』


『その通りですよ。がいればの話ですが。ここに来てまさかの“私、!”』


『自分で言ってりゃ世話ないな。【無詠唱】も手に入ったことだし、次は【魔力隠蔽】だな。これは【隠蔽】スキルじゃダメなのか?』


『別に【隠蔽】を使ってもいいですが、毎回指定しないといけませんよ。ぶっちゃけ面倒くさいですよ』


『そこは、サナがやってくれればいいんじゃないのか?』


『嫌ですよ。面倒くさい』


『お前さっき“私、万能説!”って熱く語ってたじゃないか! その気概は何処へいった!』


『燃えそうにないゴミの日に捨てました』


『……えぇぇ』


 切り替え早ぇーな、おい。サポナビの癖して自由過ぎるぞ、こいつ。ソフィは何でこんなやつを作ったんだ? 失敗作か?


『ふふっ。あなたは今『何でこんなやつを作ったのか』、『失敗作か』とお考えになりましたね』


「――ッ!!」


『何故、わかった?』


『お答えしましょう……それこそが“私、!”』


『いや、お前さっき『燃えそうにないゴミの日に捨てた』って言ってたろ!!』


『……過去に囚われない女。それが、私』


『もう、どうでもいいや。とりあえず思いついたのどんどん作っていくから、サポートしてくれ』


『仕方ないわね。別にあなたの為にやるんじゃないんだからね。勘違いしないでよ』


 次はツンデレかよ……どんだけ引き出し持ってるんだよ。


 とりあえずスキルに関してはソフィが言ってたものも作るか。あっても困らないものだしな。


『えーと、【無限収納】【体力増大】【魔力増大】【気配探知】【気配隠蔽】【魔力探知】【魔力隠蔽】【睡眠耐性】【毒耐性】【麻痺耐性】【石化耐性】【魅了耐性】【呪い耐性】【即死耐性】【鑑定】【偽装看破】【隠蔽看破】【千里眼】くらいだな』


『作り過ぎですよ! どんだけ作るんですか!? しかも、こんだけあったらステータス見にくいし、俺TUEEEEでもしたいんですか!?』


『備えあれば憂いなしって言うだろ? 因みに俺TUEEEEは基本しない。色々と面倒くさいし』


『ちょっと多過ぎるのでスキル統合の許可を』


『何だそれ?』


『似たような種類のスキルを併せて上位互換へと進化させるんですよ。その際は代償としてLv.1からのスタートになりますが』


『構わん、やってくれ。自分で作っといて言うのもなんだが、見づらいのは面倒くさい』


『了解。【気配探知】【魔力探知】を統合して、【完全探知 Lv.1】を新たに獲得。【気配隠蔽】【魔力隠蔽】を統合して、【生命隠蔽 Lv.1】を新たに獲得。【病気耐性】【睡眠耐性】【毒耐性】【麻痺耐性】【石化耐性】【魅了耐性】【呪い耐性】【即死耐性】を統合して、【状態異常耐性 Lv.1】を新たに獲得。【鑑定】【偽装看破】【隠蔽看破】を統合して、【完全鑑定】を新たに獲得。以上となります。ご清聴ありがとうございました』


『いや、なんかもう……色々とすまん。調子こいて作りすぎた』


『あなたにも謙虚な姿勢というものが存在したのですね。新しい発見です』


『“私、万能説!”を実感できた。やっぱりサナは凄いよ』


『それ程でもぉ……あるかな』


 とりあえず大変な作業だったのは理解できたし、煽ててれば次のときもやってくれるだろう。あとは現状のスキルでも確認するかな。


『ステータス、スキル』




スキル

【言語理解】【創造】【センス】

【隠蔽】【偽装】【千里眼】

【完全鑑定】【無限収納】【無詠唱】

【剣術適性】【魔法適性】

【体力増大】【魔力増大】【剣術 Lv.3】

【身体強化 Lv.3】【属性強化 Lv.4】

【完全探知 Lv.1】【生命隠蔽 Lv.1】

【状態異常耐性 Lv.1】【魔力操作 Lv.EX】




 中々のもんだな……スキル統合はやってもらって助かった。やらなかったら、さぞ見づらかったんだろうな。


 しばらくは、スキルのレベル上げに専念でもするか。

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