眠っていた俺は、真っ暗な空間に監禁されていたのでした

 目を覚ますと真っ暗な空間にいた。

 先程までは花ちゃんと一緒に夕食を頂いていた筈だがここは何処か。


 ひとまず状況確認をしようと立ち上がる。

 ――しかし手も足も動かせない。


 どうやら椅子のような物に手足を固定されている様だ。


 真っ暗な空間に身体を固定されている。

 そんな状況に恐怖心が芽生えてしまう。


 もしや俺は知らぬ間にマリーに捕まってしまったのか?

 だとしたら花ちゃんは無事なのだろうか。


「だ、誰かいませんか……?」


 とりあえず助けを求めてみる。

 しかし恐怖のあまり声が上ずってしまう。


 情けない話だが、あまり暗闇は得意では無い。

 何も見えないから安心だと言う人もいるが、俺は何か近くにいるのでは無いかと不安になってしまう。


「――どうしたの?」

「うわあああああああああ!」


 暗黒の中、耳元で俺に囁く者がいた。

 堪らずそれから離れようとすると、固定されている椅子と共に倒れこんだ。


 身体の右半分に激痛が走る。

 幸い下には絨毯じゅうたんの様なものが轢かれていた為、痛みは少し和らいだ。


 それよりも未だ姿が見えない者にとても恐怖する。


「だ、誰だ!」

「誰だなんて酷いなー」


 先程から囁き声の為に誰なのか特定出来ない。

 しかしこいつこそが俺をここに監禁した張本人なのは明白だ。


 相手を刺激したら何をされるかわからない。

 下手な抵抗はせず、まずは状況確認からだ。


「ここは何処だ?」

「あなたが知らない所かな」

「お前は誰だ?」

「当ててみてよ」


 核心に触れる様な質問には答えない。

 そこは徹底している様だ。


 一つわかった事はこいつがマリーでは無いという事。

 マリーならこんなまどろっこしい事はせずに、姿を見せるだろう。


 暗闇で姿を見せずに俺を監禁するなど、趣味の悪いやつとしか思えない。


 そんな事を考えていたら、不思議と恐怖心が弱まってきた。

 それと同時に脳が冷静さを取り戻す。


「花ちゃんには手を出してないよな?」


 先程から花ちゃんの事が気になってしょうがない。

 俺は兎も角、こんな事に巻き込まれてなければ良いが……。


「心配なんだ?」

「ああ」

「――じゃあ会わせてあげる」


 ひそひそと話すそいつは足音を立てながら遠くへ向かう。

 足音が消えた直後、天井から照明の明かりが辺りを照らす。


 遂に犯人の姿を捉えるとこが出来た。

 ――しかしそこにいたのは真っ白なワンピースを身に纏った花ちゃん本人だった。

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