脅された俺は、妹に連行されるのでした
マリー達の登場により、皆は騒然としている。
俺は依然目を合わせない。
「藤麻、迎えにきたわよ」「お兄ちゃん、帰ろ?」
俺を迎えに来たと言い張る二人はとても笑顔だ。
しかし目を見なくてもわかる。
――今二人は憤怒している。
「あ、マリーちゃん。久しぶり!」
「田中先輩、こんにちは」
能天気な吾郎はマリーに挨拶を交わしている。
そんな二人のやり取りを見て、佐々木さんは難しい顔をしている。
「マリーちゃんって金神君の妹さん?」
「そうなんです!」
佐々木さんの質問に、マリーは俺に抱き着いて答えた。
「か……可愛い!」
可愛らしいマリーの笑顔に、佐々木さんはノックアウト。
身をよじって興奮している。
流石、見た目だけは完璧なマリーだ。
しかしそんな中、マリーの手は皆が見えない所で、俺の腹にゆっくりと文字を書いていた。
『か、え、ら、な、い、と、お、こ、る、よ』
腹に書かれたその文は、脅迫状だった。
恐る恐るマリーを見ると、笑顔で俺を見ているが――細めで俺を確実に捉えていた。
怒るとは実際曖昧な表現だ。
『もう、お兄ちゃん何か知らない!』
と、可愛いものでも怒りは怒り。
但しそれは一般的な回答。
これをマリーバージョンにするとこうだ。
『もう、言う事聞かないお兄ちゃんは――マリーがちゃんと躾けてあげないとね?」
その後監禁。
こんな事があって良いものか。
まあこんな事が日常茶飯事なんですけど。
「ごめんなさい皆さん。実はお兄ちゃんこれからやる事があるんですよ」
「え、そうなの金神君?」
「はい――大事な用なんです」
「藤麻、大事な用があるなら言えよ」
無いです。
無かったです。
何ならその大事な用が何なのかを、当の本人が知りません。
知りたくも無いですけど。
俺は吾郎にアイコンタクトで助けを求める。
しかしそれをさせまいと、マリーは腹にスタンガンを当ててきた。
『い、た、い、の、は、い、や、だ、よ、ね』
再び腹にそう文字を綴る。
恐怖で震えてしまった俺は、情けなく皆に伝える。
「ご、ごめんみんな。俺用事があったわ」
「家族の用事すっぽかすのは良くねぇぞ」
「だよな、ははは……」
「じゃあ逝こっか、お兄ちゃん」
腹にずっと当てられてるスタンガンの所為で、声が上ずってしまった。
その後マリーと共に店を出て行った。
◇
「あなたが彼岸花ちゃん?」
「はい、そうです」
大人しそうだが私の盗聴盗撮グッズを破壊した子だ。
警戒は怠らないでおこう。
マリーと藤麻は先に帰り、残った私はこの子と共に外で話している。
どの様な子で、何故私の邪魔をしたのか聞く為だ。
「何で私の邪魔をしたの?」
「……あなた達が藤麻君を独占しているからです」
何となく察しはついていた。
この子も藤麻の魅力に気づいてしまったという訳だ。
流石は私の藤麻ね。
「残念だけれど、藤麻は渡さないわ。他の子を好きになって頂戴」
「……それは約束できません。失礼します」
話を途中で終わらせて店に戻ってしまった。
どうやら引く気は無さそうだ。
「警戒しておく必要がありそうね……」
夏休みで学校は無いが、藤麻を絶対外に出さないと決める。
――他の子には絶対に渡さないから。
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