何とか隠れる場所を確保した俺は、妹から逃げ続けることを決めたのでした
「マジで恩に着るわ」
「今度飯奢れよな?」
「その程度なら喜んでさせてもらおう」
何とか一泊する事が出来たので、吾郎と共に宿泊先に向かう。
高校から近い場所に一人暮らししているらしく、自由があるのは羨ましく思える。
是非とも俺と変わってほしい。
「で、どうしたんだよいきなり」
「実は今追われててな……」
驚きの顔で吾郎が見てきた。
手に持っていたスーパーの袋を落として、俺から少し遠ざかる。
「お前……ヤったのか?」
「違うわ、妹に追われてんだよ」
「は?」
まあ説明しても分かるわけがないな。適当に話をして、ようやくアパートのドア前に到着。
中に入ると男子高校生とは思えない程に綺麗で、以外にも家事が得意な様だ。
「なんだよジロジロと」
「いや、綺麗すぎて驚いたぞ」
「ふ、家事ができる男はモテるってお婆ちゃんが言ってたからな……」
顔に手を当ててポーズを取っていう。恐らく本人はイケメンのポーズだと思っているだろうがかなり痛い。
阿保だな、このお婆ちゃん子は。
「それはいいから隠れる所は何処がある?」
「いや、家は生活するところであって、隠れる所じゃないから」
「そんな考えではヤられてしまうぞ!」
「何にだよ!?」
表面だけは完璧なあの破壊神マリーにだよ。
最近は本性を知った者が少し怯えてはいるが……。
「兎に角、俺が入れそうな空間を案内してくれ」
「……先ずは飯からな」
ため息をつきながら吾郎は飯の用意を始めた。腹が減っては戦はできないからな、俺も手伝い二人で食事を済ます。
「……クローゼットとタンスか」
「うちは人間を収納する事を想定して造られてないからな」
1Kの賃貸の収納は二つ。
マリーなら何処を選ぶだろう。
それを逆手に取って隠れなければバレてしまう。
「そうだ、チェーンと香水を貸してくれ」
「チェーンはねぇよ!」
「なら、あからさまに俺を隠しているであろうカモフラージュをフェイクの所に施しておいてくれ」
「妹さん怖すぎだろ……」
まず目を欺き、次に嗅覚を惑わす。
後は嘘の情報を流せばもう一日くらい逃げられるだろう。
「藤麻さあ、いつまでも逃げられる訳じゃないんだから早く謝れって」
俺の行動に呆れ顔をする吾郎。
謝るとは何にだ、俺は悪くない。
しかし一時的に逃げた所で完全には逃げれないのは事実だ。
「とりあえず今日は逃げる。明日になればきっとマリーも許してくれるだろう」
「まああの妹さんが激怒してたらそりゃ逃げるか……」
やっと理解した吾郎はクローゼットに俺の服を入れる。
フェイクの準備を終えた所で、借りた香水を振りかけた。
「それじゃあ吾郎、もしマリーが来たらうまく誤魔化してくれよ?」
「はいは……『ピンポーン』」
欠伸をしながら答える田中の声を遮る音が現れた。
夜遅いこの時間に、謎の訪問者による呼び鈴が、この手狭な部屋中に鳴り響いた。
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