あまりにも出会いが無さすぎる俺は、妹に黙って出会い系アプリを始めたのでした
『良かったら一度、何処かで会えませんか……?』
俺はその文字を見て高揚した。
◇
平日の昼下がり、今日の学業が終わった俺はマリーと帰宅して今は自室のベッドで横になってた。本当なら学校に残ってクラスメイト達と話すのもアリだが、マリーが俺のクラスに降臨されて共に帰ろうと頼んできたのでそのまま帰宅した。
最近マリーに対しての抵抗力が少し失われているのは俺の気のせいなのかは分からないが、マリーの言動に意を唱えるのが少なくなってきた。
しかし校内での女子との接点が断たれた今だが、俺だって思春期真っ盛りの高校生。彼女の一人や二人欲しい――二人はダメか。
そんな訳で俺はマリーとの約束の所為で校内では女子とお話出来ないのだ。しかし裏を返せばそれは校内だけ、校外なら接触しても契約違反ではない。
なので俺はマリーに黙って出会い系アプリを使って女子とお話を楽しもうと策略を立てていた。
「さてさて……まずは登録か」
基本データを登録したら、様々な女の子のアカウントが出てきた。見た感じ清楚系な子が多いが、恐らく大体がビッチだろう。
女の子なら誰でもいいとまでは言わなし、話すならお淑やかで俺の事に興味を持ってくれる子がいいなと思っているが、こんなアプリを使ってる時点でそんな子は早々いないだろう。しかしその考えは、ぱっと目に止まったアカウントによって否定される。
「金剛真里か……この子のプロフィール画像本人のかな?」
綺麗な金髪の後ろ姿の画像を使用しているそのアカウントの持ち主は『金剛真里』と書いてある。黒い服装が綺麗な金髪を更に際立たせていた。
その髪色に俺は妹のマリーを思い出すが、後ろ姿からだとマリーには見えない。まあマリーがこんなアプリをやっている訳ないしな。俺はその子のプロフィールを確認する。
「え、十六って俺の一つ下じゃん。学校もウチの高校から近いとこだし!」
こんなに細かく書いて大丈夫だろうかと心配するが、そのおかげで俺はこの子の情報を確認できた。家事が得意だったり、花が好きだったりと、とても女の子らしいこの子に俺は初めての連絡をした。すると数分で返信が届き、俺は高揚したのだった。
◇
「ま、まじかよ……しかも直接会えるとか!」
もしや今俺はモテ期という奴なのではないだろうか。トークアプリを通してでも良かったが、直に会えるなんて思いもしなかった。
しかしこのタイミングだと、今日の約束を付けるのは難しい。休日はマリーとの契約で、マリーの許可がないと外出が出来ない。
こんな内容を伝えて許可が降りる訳無いので、出来れば平日の高校が終わった後が望ましいが、その願いも神様はちゃんと聞いていてくれた。
『急で申し訳ないんですけど、今から会えたりしますか……?』
申し訳ない顔をしたウサギが、上目遣いをしているスタンプでおねだりしてきた。スタンプのセンスや文章から伝わる、内気そうだが意外と積極的な感じに惹かれた。最高に可愛い。
「やばい……可愛すぎるこの子……」
年下のおねだりとか拒否する訳ないじゃん。この子それをわかってやってるのかは知らないが、このタイミングでそのカードを切ってきたのは天才だな。甘えん坊将軍の名を付けてあげよう。
「『大丈夫だよ、どこで会う?』っと」
甘えん坊将軍に場所を指定してもらい、打ち合う場所は決まった。数分で返信が来て、場所と時間が決まったので後は最後の難関『マリーの門』をくぐり抜けねばならない。
門番のマリーをどうやって攻略するかが鍵となるが、内容を話せばまず外に出れない。隠しながらボロを出さずにマリーを欺くには何か秘策を用意しなければいかんな。
特に案は無いが、時間も迫っている為に俺は玄関に向かう。するとリビングのソファーに腰掛けていたマリーが、俺に気づいて声をかけてくる。
「どうしたのお兄ちゃん?」
「ああ、ちっと買い物にでも行こうかなと」
「お菓子も飲み物もあるよ、何を買いに行くの?」
「うーん、まあ暇だしコンビニにでもってね」
「私も行くよ!」
やはりそう来たか。俺の事が好きすぎて自分の手元から離さないようにするマリーは、俺が目の見える範囲から出ようとすると止めにくる。束縛が激しいんじゃ。
「いや、マリーは家で待っててくれ。俺が帰った時にマリーが居ないと寂しいし」
「そういってお兄ちゃんホントはコンビニじゃない所に行こうとしてるでしょ?」
鋭い目つきで俺の思考を見透かしてくる。流石に門番マリーの名は伊達じゃ無いな。どうしたもんかと考えていると、家のインターホンが鳴った。マリーは俺を訝しい目で見ながら玄関へ向かう。
その隙に俺は庭から外に出た。マリーには悪いが、今回こそは女の子と楽しくお話しさせてもらおうか。
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