第148話 一石二鳥



「それで、この二つってレベルはいくつなのかな?」


「片方がレベル2で、もう片方がレベル3だな」


「ああ……うん、そうなんだね。ありがと」


 成る程、言われてみれば何か分かるかも……。


『隠蔽』スキルの付与については私の『鑑定』では妨害されて読み解けなかったけど、レベルに関してはなんとなくこっちかなって思ったので合ってるみたい。

 こういった種類のスキルが付与された魔道具って、スキルの無い人には自力で見つけられない仕様だね。


 しかし魔道具ってやっぱり高いなぁ。レベル1なら手が届く値段なんだけど……レベル2だと3000シクルだよ! でも、ラグナードがこの二つを選んでくれたって言うのはこのレベルのが必要なんだよね?


「う~ん。レベルの高い方のが安全だし、良いのはわかるんだけど……」


 すっかり貧乏性が身についているからね。買うのに躊躇してしまう。

だって、レベル1なら1000シクルで手に入るけど、レベル2のはその3倍だし、レベル3に至っては何とっ、大銀貨5枚! 5000シクルだよ……日本円だと五十万円だよ……? た、高い……。


「何故レベル1を選ばなかったのか、なんだけどな。今日練習してみて、ちょっとは使えるようになったが、スキルとしてはまだ生えなかっただろう? だからだ」


「え、どういうこと?」


「うん。もう少し詳しく言うと、魔道具って使っているうちに、そのスキルを身体が覚えてしまうことがあるんだ。スキルの種類にもよるんだが、魔道具無しでやるよりコツを掴み易いというのか……だから感知しやすい方がいいと思ってな」


 自分のスキルとして習得するには、レベル1の魔道具よりレベル2の方が、より特徴を感じ取れるので早く覚えやすいらしい。

 スキルの種類以外にも、種族だけでなく個人によっても得意不得意が違うし個人差はあるので、きちんと努力はしないと身に付かないみたいだけど。

 ただ持っているだけで簡単にスキルが発生するという訳ではない。ある種、出たとこ勝負の博打のような部分も含んでいるけど、スキル獲得の可能性が上がることだけは共通しているのでお得だとのこと。


「成る程。スキルの習得が、ショートカット出来る可能性が高くなるっていうのは凄いねっ。そんなふうに魔道具を使えるなんて知らなかったよ」


「そうか。こういう裏技を覚えておくと便利だぞ。それに完全に自分のものにした後には、その魔道具を売ってしまってもいいわけだしな」


「おおっ、まさに一石二鳥と言う訳だね」


 ――益々お得だ。


 お買い得とか一石二鳥とか、そういった言葉には弱いので、お金があったら爆買いしてそうですよっ。


 というわけでラグナードが選んでくれたものを……魔力総量の少ないリノには思いきってレベル3のを、私のはレベル2のを購入する事にした。


 動力源となる魔石を取り替えればずっと使えるし、この出費は長い目で見ればお得だから、不足分は予定通りラグナードに補填してもらって購入したよ。拠点を移したら、頑張って稼いで早く返さなきゃね!




 店主のマールさんにお金を払って魔道具屋さんを出た後は、薬屋に向かうことになった。



 HP・MP回復効果のある下級ポーションならジニアの村のジーンさんがいた、酒場にある冒険者ギルドの簡易出張所で手に入るらしいんだけど、品質の高い高価なポーションは品数が薄いらしく、この町で買いだめしていくことになった……ラグナードが。


 私とリノの財布は、さっきの魔道具屋さんでのお高い買い物で、又々すっからかんになったからね? むしろ、マイナスになったからね……もう何も買えません……。


 そんな私達の懐事情をよくご存知の彼は、村にいる狼人族の友人にも頼まれている分として何種類かの中級のポーションを選んだ後に、ちゃんと薬師のお弟子さん達が作成した劣化品など、通常のものよりお手軽に買える下級ポーションも一緒に購入してくれた。料金後払いでいいと言って、半額くらいのを中心にね。


 

 正規品よりは回復率と回復速度が落ちるけど、私とリノには一番欲しい効果だし、支援魔法や魔道具を上手に組み合わせていけば十分役立つから。

 こういった劣化版は薬屋の名誉にかけて他には流通させないというし、直営店でしか手に入らないから助かったよ。


「ありがとう、ラグナード」


「ああ、品切れになってなくて良かったな。予定の本数よりは少ないが……まあ、無くなったら又、俺だけでもこの町に来て買い足すから心配するな。だから、ポーションの数が少ないからって、使い惜しみをするなよ」


「うん、分かった。肝に銘じるよ」



 ――命大事に、だからね!



「それと、魔法薬もいくつか購入しておこう」


「魔法薬?」


「ああ、こっちにあるやつだ」


 魔法薬というのは、薬学スキルを持った薬師が製作過程で魔力を使って作る薬のことらしい。一般的には経口摂取や、経皮吸収できるものが多いようだ。

 様々な薬草を薬学スキルを使って組み合わせることにより薬効を上げた上で、魔力を練り込んで作る。そうすることで通常の薬より即効性や効能の高い薬に仕上がるのだそう。


 毎回、聖魔法で治すのもいいけど、これからもっと森の奥に入って強い魔物と戦うようになった時に、攻撃用に魔力を温存しておいた方がいい場面が出てくる。


 ちょっとしたものを治すのには、ポーションより安くて気楽に使えるからと、まずは経皮吸収するタイプの軟膏の購入を薦められた。





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