第9話 マジックなキノコ
◇ ◇ ◇
――三日目。
そろそろどこかに辿り着きたい……。
今日は思いきって冒険をして、森の少し奥の方にある大きな樹に登って見ようと思う。遠くまで見渡せるような樹にね。
いい加減この樹海を抜け出したいし、切実に!
森の奥に行けば行くほど強い魔物が出て来て危険なのはわかっているけど、今は少しでも情報が欲しい。何か見えたらいいんだけど。
昨日まとめて作っておいたホーンラビットの蒸し焼き肉を木の上で食べてから、『索敵』して周りに魔物がいないことを確認しつつゆっくり降りる。
街道に近い木の上で寝ているからここら辺にはほとんど魔物はいないんだけどね。
いつも以上に慎重に、『隠密』スキルも平行して発動させながら奥へ奥へと進んでいく。
ラッキーなことに魔物と戦闘せずに、目星をつけていた大きな樹の下まで来ることができた。よかった。
目の前にあるのは以前だったら絶対に登らないような巨大な樹木。
でも今なら登れるってわかる。これがエルフの本能なのかも。
樹に手をかけてロープもなしにするすると上まで登って行き、あっという間に頂上部に着いた。
これだけ高いと、さすがに遠くまで見えるなぁ。エルフの視覚だし余計にね。目を凝らしてこれから向かう予定の方角を見てみると……。
――ん?
んむむっ、これは……。
やったぁっ、ついにやりました!
遠くのほうに何か、人里のような人工物が見える……ような気がするっ。 ほら、あそこの街道の先の森が開けているところ。
うん、間違いない。何かはあるよこれ。
危険だったけど、ここまで来て本当によかった! ぼっちで山の中をさ迷うのも精神的な限界が来そうだったし、いい加減安全な場所で寝たいし。
支援魔法で、HP・MP回復の効果が切れるごとにかけ直してるからか、ほとんど寝れてなくてもこのハードなサバイバルで意外と体調は悪くないけど、限界が来るその前に見つかって助かった。
距離的にはこれまでの『マップ作成』のデータを見た感じだと、 此処からすっごく急いで街道を走れば夜中にはたどり着けそうだね。まあ、しないけど。命大事に、安全第一に、だからね!
できるなら友好的な種族が住んでてほしいよ切実に……。
さて、目的も果たせたことだしもう降りますか。
慎重に樹を降りていく途中、目の端に何か鮮やかな色が映った。
なんだろあれ? 木々に隠れてよく見えないけど、色彩的に花か何かかもしれない。異世界の花かぁ……ちょっと興味あるなぁ。
どうせ道筋だし、ここから近いから少しだけ見て行こうか。
人里をらしきものを見つけて心に余裕ができたこともあり、寄り道していくことにした。
生い茂る草をかき分けて樹の上から見た方向へと進んでいく。
やがて、木漏れ日の当たる、ちょっと開けた場所に出た。
――あ、これ茸だっ。
花じゃなかったけど、でも可愛い!
傘の部分はどれも薄桃色でそれに水玉模様があって。
水玉の色は四種類、赤、青、緑、黄色。
まるでお伽噺話に出てくるような茸、それが一面に生えている!
でもこういう配色のものって地球だと毒キノコが多いんだよね。
――鑑定して確かめてみるか。食べられるといいんだけど。
ではさっそく……『鑑定』!
【 赤の水玉茸:マジックキノコ
効能:火魔法上限値+1上昇
可食:可能 生食も可
どんな食べ方でも効能は変わらない
採取:同属性魔法で可
一度根元から外れたら手で触れる事ができる 】
あっ、良かった食べられる。
それにこれ、普通の茸じゃなくてマジックキノコだったの!? なんか効能もすごいこと書いてあるよ。
赤の水玉茸が火魔法、青が水魔法で緑が風魔法、黄が土魔法で、それぞれの属性魔法の上限値が+1上昇するって。
――回復じゃなくて上限値の上昇って、もしかしなくてもすごいのでは!?
確か、この世界のポーションは、魔力の回復や一時的な上昇は出来ても、魔力総量の
これを食べれば魔力総量を上昇させる、とは書いてないから、単純に火魔法に限り技の威力が増す、とかなのかな?
採取する際も条件付きだし、『鑑定』なかったら確実に採るの失敗してたやつだよね、これ。
どうやら私に採取可能なマジックキノコは二種類。
現時点で使える魔法が火魔法の他には水魔法だけだから、赤の他に青の水玉茸も採れるってことか。
ただ、この採取条件、『鑑定』スキルがレベル1と低いからか、そこそこの情報しかないような……う~ん。
同属性魔法以外で採れないってことと、根本から採る前に手で触るのはダメっていうのは分かったけど、例えば、周りの土を手で崩したり、道具を使って採っちゃダメとは書いてない。
――という訳で、ちょっと実験してみよう!
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