第7話 魔石は綺麗でした



 はぁぁぁ、良かったぁ。もう緊張し過ぎて胃が痛いんですけどっ。


 初戦闘に弱そうな敵を選んで正解だった。恐怖心からミスもしたし、あんまり弱いとは思えなかったけど。


 一度に六体は多かったかなぁ。連携とかして来なかったからなんとかなったけど、知能が少しある魔物だったらヤバかったかもしんない。ゴブリンとかね。




 しかしこれ、森をあちこち黒焦げにしちゃったや。ここの樹皮も真っ黒になってて、ううっ、ごめんよ。


 ちょっと燻ってるところも残ってるから火魔法で『消火』してっと。


 消火器より簡単に一瞬で消せてとっても便利だけど、やっぱり火魔法は気をつけて使わなきゃね。炎上したら洒落にならないし、もっと練習して命中率をあげておきたいな……。




 でも私、思ったより落ち着いている。


 もっとパニックになってたかもしれないのに、ちゃんと逃げずに戦えてた。頭の中ではパニクってバタバタしていたけれども。


 初めて生き物を直接殺したし、結構血とか飛び散っててグロい事になっているのに……『精神耐性』のスキルがあるからそれがいい仕事してくれたのかな? わかんないけど。


 まあいいや、ポイズンラットの魔石だけ取り出してさっさと移動しよう。


 解体中が危ないっていうし、血の匂いが他の魔物を惹き付けるかもしれないし。


 毒があるから直接触らずにその辺の木の枝を使ってっと。


 心臓の隣にあるらしいからこの辺を探れば……あ、このちっちゃいのがそう、かな? 微量ながら魔力を感じる。


 宝石みたいにキラキラしてて、とても奴の中に入ってたと思えないくらい綺麗だけど本当ちっちゃいな。


 魔石は売れるから、聖魔法でちゃんと『浄化』してきちんとポケットにしまう。肉は毒入りで食べれないって『鑑定』に出てるから放置でっ。錬金素材に使えるらしいけど放置で!


 これ仮に毒抜きすれば食べれるって言われても無理だから。まだ生々しい生肉を捌く覚悟できてない。




 この魔石、売りにいくにはやっぱりあそこだよね。


 冒険者ギルド。


『異世界知識』にもあったし。


 この世界にコミュニティーがない私が就ける職は、冒険者ぐらい。


 そこで身分証明としてギルド証を手に入れて、討伐や採取でお金を稼ぐしかない。


 本当は安全な町中で働きたいけど、なんたって私、住所不定無職で、おまけに記憶がなくてお金もない状態だから。……自分で言っててなんだけど、こんな不審者雇ってくれるまともな所とかないわ。


 と言うわけで職業選択の余地なく一択で、今は冒険者にしかなれないってことです。




 それにしても『鑑定』で簡易とはいえステータスが見れると、便利なだけに欲が出てくるなあ。


 1回の戦闘でどれだけ成長したのか、経験値的なものが見れればいいのにとかね。努力すればレベルアップするって例の白い部屋の人も言ってたし、可視化できた方がやる気が出ると思わない?


 身を守るためにも効率的にやりたいけど、どうすればいいのか分からない。実戦しかダメとか何か制約があったりするんだろうか?


 今回、初めて魔物を倒して、ちょっとワクワクしながら『鑑定』したステータスを見てみた。けど、表示されたスキルレベルは変化なしで、スキルポイント表示とかも出なかった。


 この世界に来てからも努力すれば新たなスキルって取れるのか、白い部屋の時のように好きなスキルをポイントで選べるのか、どっちなんだろ?


 あそこでみたスキル一覧表、今も少しは覚えているけど欲しいのいっぱいあった。


 検証したいのはやまやまだけど、そういうのは安全な場所に着いてから。


 今は生き残ることと、お金に換金出来そうなものを道すがら探すことを優先させる。軽くて持ち運びやすくて単価の高いものだと尚良いよ。


 そういうわけで、まだ陽がある内に出来るだけ距離を稼ぎますか。







 それから、太陽が真上にくるまで二回戦闘をした。


 ゴブリンを倒し、ホーンラビットを狩ったところで一旦止まってお昼にすることに。


 安全確保の為に街道近くまで出て、見晴らしの良いところでホーンラビットを捌いてから魔法で火を起こし、調理していくことにする。


 グロいとか言ってられないものだね、お腹が空き過ぎてると。自分で動かないとどうにもならない状況だし、グニュっとしたお肉にちょっと涙目になったけど、不器用ながらもなんとか最後まで解体出来た。けっこう時間は掛かっちゃったんだけどね。


 初めはナイフもないしどうしようかと思ったけど、ホーンラビットの鋭く丈夫な角がその代わりに使えた。


 それに、聖魔法の『浄化』がちゃんと汚れをきれいにしてくれたから良かったよ。手も服もナイフ代わりの角も、油でべとべとになっちゃったし、無かったら大変だったはず。




 『異世界知識』によれば、どういう訳が解明されてないけど、この世界の魔物はあえて血抜きをする必要がないんだとか。

 一説によると、心臓が動きを止めると活動魔力が一瞬で魔石に吸収されてるんじゃないかと言われているみたい。

 まぁどんな理由があれ、やらなくていいなら極力やりたく無かったからいい事だ。


 ちなみに魔石を取り出さずに体内に残したままにしておくと、肉が腐りにくい状態になるらしい。

 それでも極端に暑かったら腐るし、時間が経ち過ぎると聖魔法で『浄化』しなかった場合、アンデッド化するから限度はあるみたいだけどね。





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