20歳になったら神様がある程度の願いを一つだけ叶えてくれる世界の話。

市伍 鳥助

誕生日プレゼントは・・・

僕は明日、二十歳の誕生日を迎える。

自室の布団の中で改めてそのことを思い浮かべる。

15歳、もしかしたら10歳の頃から僕はこの日をずっと待ち望んでいた。興奮が冷めずニヤニヤしたりバタバタしたりしてしまうのも仕方ないことだろう。


「あぁ、早く明日にならないかなぁ!」


明日の正午には神様が僕の願いを一つだけ叶えてくれるのだ。気分は自分の人生でも最高潮と言っても差し支えないほどに高揚している。

自分の願いは決まっているとしても、神様に変なことをしないとも限らないし今のうちにおさらいしておこう。

僕らの神様が願いを叶えてくれると言っても、世界のバランスが崩れるようなことや本質的に出来ないことは叶えてもらえない。具体的に言うと、僕がよく読んでいるライトノベルの神様のようにチート能力を授けたり、不老不死にしたりはできないということ。できないと言うよりしないのかな。

この世界を作った神様が星の開拓の報酬として「願いを叶える」というのを提示したらしく、そのときに"こういう願い"は叶えないと宣言していたらしいし。

そういった理由で大抵の人はお金が欲しいと願ったりするようだ。俗物的とは罵れない。何故なら直近で自分のためになるし、最も役に立つ願いの使い道と言えるからだ。まあ、お金を願っても現金が貰える訳ではなく、願った額分の資源が与えられるというのが現実なんだけど。

明日への期待でドキドキして寝れそうにないけどそろそろ寝ないといけない。誰にでも与えられる権利とは言え、この世界を作って下さった神様に会うのだからコンディションはしっかりとしておかないと。




「んん…眩しい…」


カーテンの隙間から零れる陽光の眩しさに目が覚めた。

時間を確認すると、どうやらちょうど7時になったところだった。寝過ごすことがなくて安心したものの、アラームで設定した時間から1時間ほど遅れての起床になんだかやらかしてしまった気分になる。

今日は土曜日なので母さんも仕事が無いはずだ。ということは…


「母さんが起きてくるのいつも通り10時頃かな?龍也も学校に行っただろうし、朝ごはんは自分の分だけでいいかな」


龍也というのは僕の弟のことだ。通信制の高校に通っている17歳で、自分が週に5日ほどバイトに行っているからと僕のことをニート扱いしてくるやつだ。家事を何一つとして手伝わないクセに横暴に振る舞うその姿勢に母さんと僕は結構イラつくことが多い。最近は夜遊びも増えてきて、余計に心労が増えている。注意しても「ニートの言うことなんか聞けるかよ!」とか言って全く聞く耳を持たない。

僕は大学生だし、二週間に1回くらいはバイトのシフトが入っているからニートじゃないというのに…。

あー、せっかくの記念すべき日なのに朝から憂鬱な気分になってしまった。

これではいけないと思った僕は日課である神様へのお祈りを済ませ、朝ごはんの準備をするためリビングに行くことにした。




朝ごはんを食べたり、母さんの昼ごはんの準備をしているうちに神様にお願いをする時間が近づいていた。

神様に会うのに失礼がないように身を清めて、滅多に着ないスーツに着替えた僕は、自室で正座して時計の針がカチカチと動くのを目で追っていた。

時計の長針と短針が重なり正午を指したとき、目の前の空間が歪んで一人の男性が現れた。綺麗な黒い長髪を後ろで束ねており、柔和な笑みを湛えている。とても優しそうな雰囲気の方だ。


「やあ、こんにちは。二十歳の誕生日おめでとう。私は神様の使いの者だよ」


そう言うと彼はおもむろに手を差し伸べた。僕はその手を取りながら挨拶をする。


「こ、こんにちは、です。御使い様」


挨拶に敬語があるのか知らず、なんだか変な挨拶になってしまった。緊張のせいか声も震えていた。

しかし御使い様はそんなことは特に気にしていないようで、僕が手を握るのと同時に手を引き僕を立たせてくれた。


「じゃあ、神様のところに行こうか?そのまま手を握って離さないでね」


御使い様は微笑みながらそう言った。自分が女性だったら思わず恋に落ちてしまうだろうと思えるほどに魅力的な笑みだった。

彼に言われた通りに手をしっかりと握り、神様の御座す場所へ連れて行ってもらう。「少し時間がかかるけどごめんね」と、僕の手を引き空間の歪みに入っていく御使い様。

どうやらしばらく時間があるようなので、その間に少し疑問に思ったことを尋ねてみることにした。


「あの、御使い様。少し質問があるのですが、よろしいですか?」


「ん、なんだい?」


「神様にお会いするのって僕の部屋ではないのですか?」


その質問に彼は「ああ、そのことか」と妙に納得した風に頷いた。


「どうしたのですか?」


「いや、ね。神様のところに行くときには大体の人がその質問をするからさ。質問と聞いて答えられるものかどうか身構えたけど、それなら答えられるよ」


御使い様は「良かった良かった」とうんうん頷くと質問に答えてくれた。

御使い様が言うには、なんでも神様は僕らより遥かに高い次元の生命体らしく、普通に見てしまうと次元の差異により僕らの気がふれてしまうことがあるという。そのため神様にお会いする際には神様が結界を張って下さった特殊な場所へ向かうのだとか。「私たちは『お社』と呼んでいるよ」と御使い様は言った。

『お社』…。そこに僕は向かっているのか…。歪みの中はとても暗かったので少し不安に思っていたのだけど、目的地の名前を聞くとちょっと安心した。




そうこうしているうちに白いモヤモヤした光のようなものが見えてきた。


「そろそろ着くよ」


なるほど、どうやらあれの向こう側に『お社』があるようだ。

神様にお会いできる期待とお願いを聞いて頂けるという事実が自身の気持ちを否応なく高揚させる。

しかし、ちゃんとしっかりとした挨拶できるかな…と御使い様とのファーストコンタクトを思い出しての不安が首をもたげる。

興奮と不安で頭がグルグルしていると、御使い様が白いモヤモヤに手を翳した。すると、そのモヤモヤに徐々にヒビが入り、ついには大きな穴ができた。

御使い様に手を引かれてその穴をくぐると、そこは鬱蒼と木が生い茂る森の中だった。

ここが『お社』なのかとキョロキョロしていると御使い様がある建物を指して、


「あそこが『お社』だよ」


と教えてくれた。

その建物は木で出来ており、昔の人やたまにお金持ちの人が住んでいたりするお屋敷みたいだった。あれって神様の『お社』を参考にしていたんだなぁと関係ない思考がつい流れてしまうくらいに呆けていた。


「とても綺麗ですね…」


僕は思わずそう呟いた。厳かな雰囲気を放ちながらも、誰であろうと受け入れてくれる気がする…そんな不思議な気配を醸すその建物に魅入られたから。

そうして『お社』に見惚れていると、中から和服を着た少女が現れた。多分あの方が神様なのだろう。


「おーい。そんなとこで突っ立っておらんと、早う中に入らんか」


神様らしき方がそう言うと、御使い様が『お社』まで先導してくれた。御使い様に尋ねてみると、あの方はやはり神様だった。

『お社』の中は普通の一般家庭みたいな感じで逆に驚いた。神様なのに高価そうな物は全くと言っていいほど置いておらず、そのかわりに廊下や柱などはとても綺麗にされており、この『お社』の美しさがよく分かるというものだった。

しばらく歩いて奥の座敷に着いた。ここに神様がお待ちしているらしい。


「本日の請願者をお連れしました」


御使い様がそう言うと部屋の中から先程と同じ声がした。ちなみに請願者というのはそのままお願いする人のこと。


「入るが良い」


御使い様がこちらを見て頷いたので、そっと襖を引き、姿勢を低くしながらお座敷の中に入る。


「顔を上げよ」


「はい!」


神様から許可が下りたので顔を正面に向ける。するとそこにはコタツが。コタツの少し奥に目を向けると、艶やかな長髪をまとめることなくそのままにし、綺麗に整った顔をぐでーんとだらけさせた白髪金眼の美少女が目だけをキリッとさせてコタツの中からこちらを見つめていた。


「か、神様ですか…?」


自分の想像する神様像とは遠くかけ離れたその姿に、僕は思わず尋ねてしまった。これ結構礼を失しているのでは、と思った僕が謝ろうとすると神様はなんでもないように、


「ん?そうじゃよ?わしがお主らの言う神様というやつじゃ」


と答えてくださった。やはり願いを叶えてくださるほどのお方だ。神様はとても器の大きい方なのだ、多分…。


「ん…」


神様は伸びをし、肩をグルグル回して首をポキポキ鳴らすと改めてこっちに目を向けた。


「お主が今日の請願者かの?」


「は、はい!」


「ふむふむそうか。二十歳の誕生日おめでとう、とまずは祝っておこう」


誕生日を神様に祝ってもらえるというのはやっぱり嬉しいね。それだけで今日まで生きてて良かったと思えるし、何より神様は美少女だ。眼福というものである。


「それでは早速本題に入るとしよう。お主の願いは何じゃ?ある程度のことなら叶えてやるゆえ、申してみよ」


神様が先程のダラけた表情などなかったかのように威厳のある表情でそう告げた。

その言葉を聞き、ようやくだと、やっとだと、今までの苦労を思い出しながら自分の想いを口に乗せる。小さい頃からずっと願っていた。この願いを叶えてもらうためだけに生きていた…。


そして────この現実もようやく終わる。


そう、僕の願いはただ一つ…。


「僕の…いえ、私の願いは、神様より『死』を賜ることです」


「……はぁ?」


神様が口を大きく開けて呆けておられる。その表情を見るとやっぱり神様って人間みたいだと思うね。こたつに入ってだらけてたし、神様で創造主様だけど僕らと似たようなものなのかもしれないな。


「ちょぉーっと待つのじゃ。お主、今、死にたいと?そう申したのか?」


神様がそう仰った。どうやら混乱から復帰したようだ。まあそうなるよね。願いを叶えるって言ったら死にたいって答えたんだもの。わけがわからないと僕も思う。けど、僕は今日この日のために、このお願いを叶えてもらうためだけに生きてきたのだ。絶対に叶えてもらいたい。


「はい!神様のお力でどうにか私に速やかな死をください!」


もう土下座だ。おでこを地面にスリスリだ。絶対叶えてもらうぞう!


「あ、アホかぁ!一生に一度の願いを叶えるチャンスに死を望むなど…アホかぁ!」


神様、どうやら初めてのことらしく相当に混乱しておられるご様子。何を思ったのか地面にスリスリしている僕の後頭部をその御御足でふみふみされております。あ、ちょっと気持ちいい。


「神様!どうか!何卒我が願い、聞き届けて頂けないでしょうか!」


「……お主、どうしてそうも死にたがる。死が怖くないのか?」


「いえ、怖いですよ。怖いから神様に頼んでるのです」


「なにゆえそうなるのじゃ!怖いなら死なねばよかろうに!」


死ぬのは怖い。それは生きている者なら当たり前のことだ。それに、神様の疑問も最もなことだ。死ぬのが怖いクセにどうして死を希うのか、矛盾しているようにしか見えない。けどこれにはわけがあるのだ。酷くみっともないわけなのだけど。


「ぼ…私は13歳の頃に飛び降り自殺をしようとしました。理由は、まぁ、家庭の問題とあと中学の部内でのいじめ…のようなものです。今ぼ…私がここにいるように自殺は失敗したのです」


「…わざわざ一人称は直さんでよいぞ。いつも通り話すがよい。して、それで、なぜわしに死を願うのじゃ?」


やはり神様は懐が広い。「僕」の方が喋りやすいので素直に感謝だ。頭を下げようとすると神様はそれを手で制して話の先を促した。


「簡単なことです。僕は死ぬのに失敗して足の骨を折りました。それ以来自殺という行為がとても怖くなったのです。でも、僕はずっと死にたかった…ほんとにずっと死にたかった…そうした感情がグチャグチャになって、自分では死ねないと思いました。なので神様に…」


「違う、違うぞお主。わしが聞きたいのはそうではない…。どうして死のうなどと思うたのじゃ?わしが知りたいのはそこじゃ」


ん?神様は何を言っているのだろう。死を願う理由はさっき言ったような…。


「いえ、ですから、僕が死を望むのは家庭の問題と中学時代にいじめられたからですよ」


「ふむ、その程度か?その程度で死を望むのか?家庭の問題も、いじめも、多くの人間が経験しておるが、お主ほど死を想う者はおらなんだ。しかもお主は今日二十歳になったばかりの若者ではないか」


神様は何故か少し寂しそうな表情をしながら質問をなさる。その様子はまるで僕に別のことを願って欲しいと思っているように見える。けど僕は願いを変えられない。もう自分の先が見通せないから。


「神様、僕は人が死を想う心に大小はないと思うのです。人によって事の大小は変わりますから。小さなことでも死にたくなる人は死にたくなります。僕がそれというだけです」


「ふぅむ…」


やはり納得して頂けないらしい。神様がここまで渋るということは、叶えられる願いということだ。自分の意思が固いことを知ればなんとか死なせてくれるかもしれない。


「これは僕の持論なのですが…」


神様がきょとんとした顔でこちらを見る。そりゃそうだ、突然持論を展開しようとするなんて突拍子も無さすぎる。頭にクラッカーでも積んでんじゃないの?と言われても仕方がないほどに唐突だ。でも言わせてもらう。自分が速やかに死ぬために。少しでも死ぬのに納得してもらうために。


「なんじゃ、申してみよ」


「…人生とは、戦いです。現実という巨大なモンスターに自信という武器を持ち、自己肯定感という鎧でその身を覆い、心の拠り所を盾として立ち向かうのです」


「ふむ、確かに一理あるの。お主らの遊ぶゲームで例えるとそのような感じじゃろ」


神様はそこまで言うと少し息をついて続きを口にする。


「しかしな?それでは友人や家族、恋人の存在はどうなるのじゃ?皆で手を取り合って同じモンスターと戦うこともあるのではないか?」


確かに、神様の言うようにいわゆる普通の人はそういう風に戦って生きていくだろう。しかし違う。僕とは違う。僕のような一部の人間とは、違う。


「それは違います。神様、僕のように自信も無く、自己肯定感など得たこともないような者が、なぜいると思いますか?」


「ふむ、なぜじゃ?」


「それはですね、神様。自分以外の誰かは僕のような者たちにとって味方には絶対にならないからです。鎧のない状態で信用出来ない人と轡を並べはしないでしょう?つまりはそういうことなんです」


一息つく。


「普通の人は誰かと仲間になります。だからモンスターとの戦いも中々負けません。ですが、仲間のいない僕らは弱いんです。弱いから負けます。負けたら死にます。そして僕は既に負けています。だからこのまま生きて苦しみを味わい続けるより、早く死にたいのです」


言ってて途中から涙が出てきた。どうしても自分の惨めさが浮き彫りになるからつらいのだ。でも幸い涙だけで嗚咽とかはないしいつもよりはマシだね、よし。

僕がそうして心を整えているとなにやら神様がワタワタとし始めた。


「お、おいおい!泣くでない!お主もう二十歳じゃろう!しっかりせんか!」


神様が慌ててらっしゃる。ごめんなさい神様…。困らせてごめんなさい。そのうち止まるんで堪忍してください。


「あぁもう!ほら、泣くでない!よーしよし」


「?」


なんだか柔らかいものに包まれた気がして目を開けると、なんと神様が僕の頭を抱えて撫でてくれていた。え!?なんで!?と僕が混乱しているのに気がついているのかいないのか、神様は僕の頭を撫で続けている。


「…そんなにつらかったか…。すまぬな、不躾なことを問い続けてしまって。……まあ、お主の言うこともわかるし、しゃーなしじゃ。願いを聞き届けてやろう」

「!?ほんとですか!?」

嬉しさのあまり神様の手を握ってしまった。あ、柔らかい。


「お、おう…。元より叶えるほかないしの。そういう契約じゃし、しゃーなしじゃ。ほんとのところ、生き物の生死はあるがままに任せておきたかったんじゃがのう」


神様はそう言ってため息をついた。なるほど、神様が僕に思いとどまらせようとしていたのにはそういうわけがあったのか。自分のわがままで神様の想いを踏みにじってしまうとはなぁ…。しかし神様は神様の想いより僕のわがままを選んでくれたのだ。その気遣いには応えねば申し訳が立たない。


「ありがとうございます神様!もしも来世というものがあるのなら、きっと神様のお役に立てるようなんでもしますね!」


僕はそう約束した。気休めにもならないかもしれないが、自分が悔いなく逝くためにもこれは必要なことなのだ。そう思い僕は神様と目を合わせようと顔を上げた。


「ほう?」


ん?なんだか神様の目が一瞬光った気がするぞ?


「それはまことよな?」


「は、はい!それはもう!」


「そうかそうか、それは重畳…」


次に見た時には普通の神様だった。素敵な笑顔の神様フェイスである。うーん、ほんと一瞬だったし見間違いかな。あのときちょっと背中がゾワっとしたんだけど…、まあ良いか。見間違いじゃなかったとしても神様の瞳は綺麗な金色だし、光ることもあるよね。僕はそう納得したのだった。




その後、神様に「まあ死ぬにしても色々準備があるじゃろ」と言われて、PCやスマホのいやーんうふーんなデータを削除したりしなければと思い出した。神様に一週間後死なせてもらうとして、僕は一度帰宅することにした。


「じゃあ、また一週間後にの」


「はい、その節はご迷惑をおかけします」


「よいよい、気にするでない。元よりそういう契約じゃし、の」


なんだか上機嫌な神様にお礼を言って、来た時と同じように御使い様に手を引かれて歪みを歩いていく。

ああ、ようやく死ねるんだ…。その想いを胸に僕は来た時より軽くなった足取りで家に向かうのだった。




『お社』を後にした青年の背を見送り、この世界の神は呟く。


「お主はわしが絶対に幸せにしてやるからの。かならずやわしのところで永遠に幸せにしてやるのじゃ…!」


神は見抜いていた。青年が本当は何に恐れているか。青年がそれに気づいていたかは定かではないが、神は気づいてしまった。彼が「生きている」という不安定な状態を恐れていることに。


「まあつまり、不安定なのが問題なら結果を確定させてしまえば良いのよな」


神はそう嘯く。

この世界の創造主である神にとって、人間はある意味で自分の眷属であると言える。その者らとはあくまで神と人という関係で距離を保ってきた。しかし、神である自分に死を直談判しに来た青年の涙を見て、神は彼に幸せを与えたいと願ってしまった。

彼が特別不幸であるわけではない。彼が特別劣っているわけでもない。だが自分への願いを使ってまで死を希ったのは彼だけだった。

ゆえに────────必ず幸せにしようと。

二度と死を望むことがないようにと。神はそう契った。


「なぁに、言質は取っておる。死した後直ぐに魂から再生させてしまえば、そのままわしと永遠に生きる、なんてこともできるじゃろ。御使いと呼ばれておった彼奴と同じようにある意味では不老不死じゃ。これは願われた結果ではないから契約にも影響なしじゃし、あの子の生命の結果も不死に収束するじゃろう。そうすればまあ、無限の生を楽しめるようになるのではないかの?」


神はそう言って顔に笑みを象った。

青年の未来やいかに。

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