98話
地面に引き詰められた雪が無くなり、土色が目立つ。激しい爆裂音が重なり、奇声と思える掛け声が、次々に届く。
魔将スノーとアイスクォール四天王が、勇者側に入った事で魔王ノライフは、怒りに満ち溢れその顔が紅潮している。
ユカリやリフィーナの数多くの斬撃が、空を割き魔王ノライフの体を狙う。聖女の力を持つ魔王ノライフは、 損害庇保殻膜を使いユカリ達の攻撃を防いている為、その体に傷一つ付いていない。
魔王ノライフは、手のひらをユカリ達に向け様々な属性の魔法を放ち攻めるユカリ達に攻撃を仕掛ている。
だが、フェルトの大盾で防げる魔法は、大盾で防いでいたり、ミミンの魔法で魔王ノライフの放つ魔法を防ぎいたり相殺をしている。
レベルの高い魔王ノライフ一人にユカリ達は、引けを取らない勝負をしている。そこに魔将スノーとアイスクォール四天王が入った事でリフィーナやフェルトに余裕が持てたような戦いぶりだ。
「アイシクル……スピアッ」
「みんな姫様に続け」
「「「はいっ! アイスニードル」」」
魔将スノーの上に浮かぶ大きな円錐の氷の塊が、三つ現れ、魔王ノライフに向け放たれアイスクォール四天王四人とも無数の細く鋭い氷の針が、作られ魔将スノーが、放ったアイシクルスピアと共に魔王ノライフを狙う。
「えぇぃっ。 この魔王に、そんな矮小な魔法効くかっ」
魔王ノライフは、力拳に何やら黒いオーラを纏うとそれを魔将スノーと四天王が、放った魔法に解き放つ。
その黒いオーラを突き破る魔将スノーが、放ったアイシクルスピア。そしてその隙間を通るアイスニードル。
「なにっ!?」
「何度も何度も防がれたなら、その対処するわ」
驚く魔王ノライフに突き刺さるアイシクルスピアとニードル。だが、損害庇護保護膜でその魔法が砕け散る。
「ライトニングボルトッ。 ストンバレットッ」
ミミンの杖から迸る電撃が、魔王ノライフに直撃。
目を見開き驚愕の顔をし硬直している魔王ノライフに、さらに数多の石つぶてが襲う。
真っ白な肌にうっすらと赤い血が、滲む魔王ノライフは、ミミンを含むユカリ達に苦痛を耐えるかのような歯をかみ締めながら睨んでいる。
「離れても無駄。 貴方には皆の魔法が襲いかかる」
「貴様の攻撃すらまともに受けてないのだぞ。 よく言える勇者ユカリよっ」
黒いオーラに包まれ焚き上げる魔王ノライフ。
既にこの場から積もっていた雪が無くなり、茶色い大地でユカリ達は、魔王ノライフと戦っている。
――――そう言えばだが、魔王ノライフのレベルってどうなんだ?高いと思っていたが、知らないからな。
「コベソかトンド。 魔王ノライフはどうなんだ?」
「既に見ているが、魔王ノライフ相当やばい」
「レベル……四十八。 やはり死霊系の魔王に聖女のスキル持ち」
「これは、やばい」
「なんで?」
「カツオフィレの聖女の力が、どうか分からんが魔王ノライフのレベルで補正され」
「補正され?」
「勇者のユカリ嬢ちゃんの力と魔王がくっついたと思えば」
「ユカリが、ピンチになったら……。 あぁ、もうユカリ達が、離れてくれたなら」
ペルセポネが、馬車に寄りかかりながら呟く。
――――まだ、あのドラゴン回収を狙っているのか。
目を青く光らせながらコベソとトンドが、魔王ノライフに凝視している。
フェルトの大盾スキルが、発動すると魔王ノライフの注意が大盾に向けられ魔法を発動を止め握り拳を振りかぶって殴りかかってくる。
その握り拳をフェルトは、大盾で防ごうとする。
間合いを狭め攻撃を仕掛ける魔王ノライフにユカリとリフィーナは、斬撃を繰り出す。
だが、目を大きく開け我に返る魔王ノライフは、バックステップで二人から攻撃を躱す。
その隙をつくミミンと魔将スノーに四天王の魔法が、魔王ノライフを狙って降り注ぐ。
「クリムゾンランスゥッ!!」
「アイシクルスピアッ」
「「「「アイスニードルッ」」」」
地面が抉られ地面の形が変わっていくが、魔王ノライフは、放たれ迫る魔法を左右に避け躱していく。
「当たらないっ」
「やはり、私たちの力では」
「いいのです、倒すのは勇者であるユカリなのです。 私達は彼女らを援護出来れば」
「「「「姫様……」」」」
アイスクォール四天王が、当たらない魔法に悔しさをこぼすが魔将スノーは、激を飛ばす。
「おのっれぇ。 貴様らぁっ!! 人族に勇者にぃっ力を貸すなぞぉっ」
魔法を避けてユカリ達から遠ざかった魔王ノライフは、右手に赤く灯る炎を燃え上がらせる。
「魔族の恥晒しがぁっ、焼き尽くせ――――」
ユカリとリフィーナが、それを阻止しようと魔王ノライフに駆け出す。
「させないっ」
「それはっ」
「――――フレイムバーストォッ!!」
右手の炎を振りかぶって魔将スノーとアイスクォール四天王のいる方向へ投げ飛ばす魔王ノライフ。
ユカリとリフィーナを通り越し、フェルトは、魔将スノーの方へ駆け出しミミンが、何か呟き杖先を魔将スノー側へ向けている。
「「「「姫様っ」」」」
「貴女達何をっ」
「あの炎。 防ぐ術がありません」
「私達が、壁になって姫様をお守りします」
「どうか、国の民を」
「幾つもの魔法を放てば……」
すぐ様アイスクォール四天王は、魔将スノーを囲み護る態勢をする。
魔王ノライフから放たれたフレイムバーストの燃え盛る炎に向け魔将スノーは、アイシクルスピアを初め氷の魔法のアイスニードルを放ち阻止しようとする。だが、それも虚しく全てフレイムバーストの炎によって消えていく。
目を潤わせ悔しそうな表情の魔将スノーは、右手を前に出した後、左から右へ半円を描くように振る。
アイスクォール四天王と魔将スノーを囲む様に半透明の、カーテンが敷かれる。
「ベールっ!! コレでもダメなら……。 みな、すまない」
「姫様……。 謝らないでください」
駆ける足を止めるユカリとリフィーナの視線は、フレイムバーストの炎の行先を追っている。
しゃがみ身を屈める魔将スノーと四天王の前に着くフェルトは、魔王ノライフの魔法フレイムバーストを防ごうと大盾を構える。
魔将スノーの放ったベールによってフレイムバーストの炎が少しだけ縮こまるが、勢いは収まらない。だが、そのベールを掠めたあと、ミミンの杖先から放たれた疾風の刃ウィンドカッター数発が、炎を切り刻む。
しかし、炎は若干衰えたが、消えることなくフェルトの大盾に着火し激しい炎が燃え上がる。
「「「フェルトォォッ!!」」」
その炎が、大きく燃え上がり大盾からアイスクォール四天王を含む一帯を一気に爆煙に包まれる。
俺とペルセポネは、フェルトと魔将スノー達を包む炎と煙を眺めている。勿論コベソとトンドも驚いている。
「あら、これはもしかして……」
「もしかしてと言うか、防御の要のフェルトが居なくなったら崩れるんじゃないか?」
「おぉ、ヤバい。 フェルトがやられたらヤバいし魔将スノーが、やられたら販路がぁぁ」
「どうするよ。 どうするよっ。 コベソォッ、このままなら」
コベソとトンドは、馬車から外に出ていた。
ユカリとリフィーナが、険しい顔で魔王ノライフを睨みつける
「魔王ノライフッ。 貴方を許さない」
「フェルトォッの仇ィッ」
「許さないダトォッ!!これが戦いッ。 魔王と勇者の戦いダァァッ」
魔王ノライフは、目を大きく開け一帯を震わす声を上げるが、その目がユカリ達を捉えた後、少しだけズレる。
魔王ノライフの視線は、俺がいるこの馬車に向けられているような気がするとペルセポネが、口にする。
「こっち見てない?」
「あぁ、確かに見ているような……。 でも俺やペルセポネでも無く」
俺は、魔王ノライフの視線の先を辿るように自らの視線を動かすと、その先にはコベソとトンドが、目を青く光らせながらスキル鑑識眼を使っていた。
その瞬間、魔王ノライフは、声を荒らげだす。
「きっ貴様らァッ!! 何故それを使えるゥゥゥッ」
魔王ノライフは、腕を上げ手のひらを上空に向ける。
煌びやかな巨大な氷が、形を作り出し先端が鋭い氷柱が出来上がり、睨みつける魔王ノライフは、力任せにその腕を俺達のいる方へ振り下ろす。
「アイシクルスピアァッ」
その行く先を視線で追うユカリ達もその大きさに驚きリフィーナが、言葉にする。
「あの氷の塊……。 あの魔将の倍……あるんじゃ……」
その魔王ノライフが放つアイシクルスピアは、戦っていたユカリ達を超え、空を切りる音を立てながら凄まじい勢いで迫ってきていた。
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