閑話
真っ白な空に緑豊かな草木が生え、清らかな風が緩やかに流れる。一人金髪でウェーブがかり胸元が大きく開けたドレスを纏う女性、この世界で人族を守護する神エウラロノースと真っ白い人型をし顔すらない付き人が数名、この世界にいる。そしてこの場に一つだけ豪華な装飾されて水瓶にたんまりと浸る水。
水鏡にし映し出される世界、その水鏡を通し人族の様子を観ていた。
「ふふふっ〜ん。 さぁどうなったかしらぁ」
エウラロノースは、手を軽く拍手し微笑ましい笑顔で上機嫌に水鏡を覗く。
「早速、殺し合って……うーん?あぁっ?」
エウラロノースは、映し出されるカツオフィレの上空から覗く大地、そしてランドベルクに侵攻するカツオフィレ軍を探している。
「あの糞男……カツオフィレの王の心に潜んであった妬み嫉み僻みの感情を刺激してあげたのだし、聖女にも念を押してランドベルクを攻めさせたのだから、もう阿鼻叫喚の嵐に期待。 ふふふ」
街道沿いをランドベルク方面に進む大軍とカツオフィレ王を目にしたエウラロノースは、目を丸くし口角が上がっている。
カツオフィレの大軍が、陣形を組み鬨の声を上げ相手に迫っている。
『弓部隊!! 放てぇぇ!!』
『魔法部隊! 援護しろ』
『第三、第五陣形を保ちつつ斬りこんで行く!!』
そして、喚き散らす悲鳴と悲痛が混ざりあい反響して更に増幅させていく。
『なんでこんな所でぇ!! うぎゃぁぁぁぁああああ』
『にににににげろぉぉーおぉぉ』
『しし死にたァくねぇ』
水面スレスレに鼻の先が、近くエウラロノースの目は瞬きすらせず水面に映る逃げる者、殺されかける者の声で、身震いをし更に口角を上げる。
『逃亡は、死罪!! 騎士団長も刑があると思えっ!!』
『たった一匹だぞっ!! 魔法部隊、弓部隊!! 援護出来んのかっ』
兵士が吹き飛ばされ、地面で血が噴き出しその上を兵士達が、通過していく。
その、戦いを見ているエウラロノースの耳に入った『たった一匹』と言う言葉。
「こいつら、何と戦っているの? ランドベルク軍では無くて?」
近づいていた顔を引き、水面に映し出される世界を動かす。
「なな何なのこれっ!!」
カツオフィレ軍を圧倒し壊滅させようとする一匹の黒くて丸くて大きい物体を目にしたエウラロノースは、ため息を漏らす。
「はぁ。 人族と人族の殺し合う鳴き声が聴きたかったのにぃ。 まさか魔物だなんて」
水瓶から離れて飽きている顔をするエウラロノースは、付き人がいる円いテーブルに向かいイスに座る。
「お茶を出して、少し休むわ」
「……」
「まぁ仕方ないわね。 ブラックワイルドボアなら」
そう呟き真っ白なティーカップの取っ手を摘みながら付き人が入れた紅茶を飲んでため息を漏らす。
数日後再びエウラロノースは、再び世界を覗く。
「ふふっ、そういえばやられてたカツオフィレ軍ヤツらどうなったのかしら。 後、城に残ってた聖女と勇者も気になるぅ」
水瓶の水面を覗きカツオフィレの様子を観るエウラロノースだが、水面に映し出されるのは真っ黒な靄。
「なななん? なんで映らない? カツオフィレ何かあったの? まぁ仕方ないけど、まぁ観れないもんは。そうそう、勇者もどうしている……あっ」
映し出されるランドベルク軍と魔王バスダト率いる魔族軍。
「魔王誕生してたの? あいつ連絡なんも寄越さんなぁ。 そういえばあの靄って魔族の国を見ようとした時もあんな感じだったような……。 まぁそれよりもえっ?」
映し出される光景は、魔族が悲鳴を上げ次々に崩れ落ち地面に這いつくばって藻掻いている。
「さすが、勇者……。 私の選ん?」
エウラロノースの目に止まったのは黄白色の長い髪を靡かせ白い服に軽装の防具を付け、更に二本の剣を振るう女性と共にいる黒い髪に黒い服装の男性。
「あの女……確かカツオフィレにいた」
白い服の女性が次々と魔族を斬り、黒髪黒服の男性も魔族を倒す。
「それにあの男。 たしか美男でしたわね。 それよりも何故あの男、私があげてやった勇者スキルパックを使わないのかしら?」
悩ましい顔をするエウラロノースは、その光景覗くと後から勇者であるユカリが、倒れている魔族の喉元にまるで釘を刺すように剣を突き立てている。
「魔王までまだまだレベル足りなさそうね。 でもあの二人がいるのなら……。 でも破邪のスキル持たないとどうやっても魔王を滅ぼす事出来ないわ」
水瓶の縁を握り締めながら真剣な目で地上の光景を覗く。
「あぁ、あのでけぇ魔族やばいかも」
巨体な魔族がデカい戦斧を奮っているのが見えているが、いま勇者ユカリと共にいる二人がいるのは別の場所で、部隊長なのか大剣を扱う魔族。
『おっオぉ。 そこいらのヤツと一緒にするなよ!!』
大声で叫ぶ魔族は、黒髪黒服の男の持つ槍の様な武器で斬り捨てられる。
「ふぅ、勇者としては強くなっていて安心だ……。わっ。 何っ? あの女、こっちを見てぇぇ!!」
白い服装の女が転がっていた剣を投げ飛ばす。その剣がまるで水瓶のソコからエウラロノースの顔を目掛けて向かってくる。
「ぎぃゃっ!!」
水瓶から離れ驚くエウラロノースは、尻もちを付いて地面に倒れてしまう。
「何? あいつ。 来ないのは分かってるのよ。 分かってるの。 でも的確に私に向けて投げて来来たよね?」
息を荒らげ、額に汗を浮かばせて辺りに目を動かしながら腰を上げ再び、水瓶の縁に手を置き水面を覗く。
すると、戦斧を持つ巨体魔族が倒され、魔王バスダトと白い服装の女と黒髪黒服の男が、争っている。
「私の上げた勇者スキルパックでもレベル達してなかったら意味ないわ。 今せっせと勇者ユカリのレベル上げしているのね」
ユカリが倒れている魔族を殺している事に理解をしながらも、魔王バスダトと争う二人の光景に目が離せないエウラロノース。
しばらくすると、白い服装の女が、魔王バスダトから離れて勇者ユカリのいる方に近づく。
それを阻止しようとする魔王バスダトだが、それを遮る黒髪黒服の男。
地鳴りがし始め地上が浮き、それが次第に上がって大きな岩のよう塊を無数に分かれる。
無数の塊が、投げ出されてかのように放たれ地上のにいる幾多の魔族に襲いかかる。
「ななななななっ!! なんなのぉぉおぉアイツゥ。 ヤバいヤバすぎるよアレ。 あんな攻撃普通出来ないって地面を叩き落とすなんて」
エウラロノースの両腕が震え、額からの冷や汗が水面に落ち波紋が広がる。
何か頭の中で横切ったのか急に覗いていた水面から顔を離し、辺りを見渡して発見する付き人に聞いている。
「ちょっと確認!! 魔王ってこいつだけ?」
「いえ、今回三体と連絡ありましたが」
「おぉ、そうなん。 まぁ良か良か」
水面を覗くエウラロノースが、観たものは既に倒された魔王バスダトの首をこねくり回す勇者ユカリの剣。
「今回、あの勇者に会うの辞めよう。うん、あの男も案外ヤバいけど、更にあの女のやべぇ。 破壊しまくりだし。 私出向いてあの女ブチ切れられたら命は大丈夫だけど……絶対無事では済まないわ」
水面から顔と目を離し、ぶつくさ言って水瓶から離れていく。そして椅子に座って付き人の入れたお茶を飲んで心を落ち着かせていた。
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