第25話

 ユカリが、這いつくばってこの部屋というかロビーに入り立ち尽くす。血が染み込んだ絨毯から湧き出る臭いも広がり、仲間の姿、形がバラバラにされ内臓も出て悲惨な場面を目撃したユカリは、空いた口を手で塞ぎ青ざめている。


「なんなの? そっそういえば私」

「城から出ないと」

「ええ。 でも状況が飲み込め……。 そう、あの時仲間があそこ居て、私あっちに向かって……」

「ユカリ。 ごちゃごちゃ五月蝿い。 整理するよりこの城抜けるのが先決じゃなくて?」

「――――そうですね。 早く戦争を止めなくては!」


 ゆっくりと歩き出すユカリは、傍に居たペルセポネとコベソ、トンドと共に俺の所に向かってきた

途中で、膝を下ろし呆然とする男神官に声を掛けるユカリ。


「着いてくる?」

「いいえ、私にはその資格がありません。 神官として人として」

「わかったわ。 でも自分の命で守るべきものが有るなら守って」


 その言葉をかけられた男神官は、項垂れるようにし、床に頭をつけて泣いている。

 男神官を残し俺たちは、瓦礫で右腕右脚が埋まった聖女を無視し城の外へ歩みを進める。無視をされたのを知ってか、聖女の今までとは違った弱気な声で俺たちを呼んでくる。


「あ、あの〜。 助けてはくださぬか?」

「……」

「そこのお二人、どうかどうか」


 ユカリは後ろ髪引かれるかの思いで聖女の方を見ようとするが、ペルセポネやコベソとトンドがそれを遮断し外にでる。

 辺りは既に暗く、月がきれいに光を落とす。

 警備する兵士は少ないのか、城門を明ける音がしても誰も見えないし現れない。


「深夜なのか?」

「いや、まだだろ。 微かだが、街から音が聴こえるからな」


 コベソとトンドが耳を済ませてながら目を光らせ周囲を見回し、確認を取っている。


「見つかる前に早く出ましょう。 もうベットで寛ぎたい」

「ペルセポネの言う通りだな。 牢屋から血だらけの部屋だからな」

「でも、早く戦場に行かなくては」


 ユカリ以外、手を横に振り疲れた顔を見せると、申し訳なさそうな態度になるユカリは、言葉を止める。


「まずは、我が支店に。 そこから考えましょう」


 俺たちは、コベソの案内でヒロックアクツ商事の支店へ向かうが、良くも、こう支店が多いって助かると思ってたらトンドが「支店ほとんどの街に有りますよ」と態々教えてくれたが、前にも聞いた気がする。



 ハーデスたちが城を抜け街に有る支店へ向かっている最中、勇者パーティ三人や第八騎士団長バクムの死体がある中、泣いていた男神官が起き出す。それに気付く聖女は、「あ、貴方。私を助けなさい」と叫んではいるが、声が届いてないのか

男神官は、ゆっくりと歩き腸が飛び出ている女戦士の両脚を軽く持ち上げ股を開かせた。


「貴方、何しているの?」


 やはり聖女の声は届いてないのか、男神官はケタケタと不気味な低く小さな笑い声をしながら、自らのズボンを脱ぎ下半身を露わにする。

 すると、女戦士の履いているものを、脱ぎ取り女戦士を覆い被さるようにし下半身の秘部を交わせ、男神官は息を荒く動き出す。


「なっ。 何を!!」

「うっ……。 ハァハァ」


 再び不気味な笑い声をする男神官は、立ち上がり股から白い液状の物を垂れさせ糸を引き血の溜まりに落ちる。

 そして男神官は、動き出すと今度は胸が抉られた女魔法使いの衣類を剥ぎ取り、再び動き出した。


「貴方、正気では無いわ」

「そうでしょうか? 私はコイツらに散々コケにされ、嫌な思いしてきたのですよ」

「……」

「この女共の魂がここにあって。 いまこの光景を見ていたらどう思いますかねえ」

「き、……もい」


 体全身が痙攣をする男神官は、満足気な顔をし女魔法使いの股から抜き取り、白い糸を引かせると、急に女魔法使いの身体を動かしうつ伏せにさせると、両手で臀部を揉みほぐし広げ、自らの物を、排泄物がでる所に入れ動き出す。


「あぁ、異性と交わるなんて神官として罪を犯してしまいました。 だが、これも神から与えられた試練。 入れることの無い所に入れるなどと言う行為もまた試練」

「な、何言って!?」


 聖女は、汚い物を見る目で男神官の行いを眺めている。なぜなら瓦礫が邪魔をしその方向しか向けられない。

 男神官が、だらけた動きで起き上がる。


「その行為で作られた秘部では無い。 まるで羽交い締めにされ我が心の悪しき物が噴き出すかのような」


 男神官は、女魔法使いの身体を見つめ感想を呟きながら、女魔法使いの臀部を足で踏み付けていた。


「ちょっとお願いがあるの! 助けて。 瓦礫が挟まって」

「ええ、良いですよ!」

「本当に?」


 下半身を隠さず、自らの物をぶら下げて聖女に近づくと、聖女の顔の上には男神官の股が目に入る。


「失礼じゃなくて? 早く助けなさい。 でもその前にその汚い物隠しなさい!!」


 男神官は、黙って聖女の右腕を左脚で踏み付ける。


「痛っ。 何するっ!」


 叫ぶ聖女の声が、神官が跪つくと次には声が出ない程の苦痛の叫びに変わる。

 聖女の右の手のひら中心にナイフが、突き立てられていた。


「くっ、貴方何を考えているの? 早く抜きなさい。傷を治しなさい」

「そうですね、早く抜きますかぁ」

「なっ!」


 聖女のバタバタと暴れる右脚を、抑えつつ衣服を片手で剥ぎ取るが、中々行かず男神官は、離れていく。


「ハァハァ……」


 第八騎士団長バクムの死体の側までいく男神官は、転がっていたバクムの剣を持ち上げ、笑顔で再び聖女の元に戻る。

 何か悟ったのか顔が引き攣る聖女は、右脚をばたつかせ迫る男神官を跳ね除けようとしていたが、それは余り無意味で、次の瞬間聖女の太ももと床に一本の剣が突き通る。


「ぎゃぁぁぁっ!!」

「そうですね。 傷治さなくては」


 ナイフと剣が突き刺さったまま、回復魔法で傷口を塞ぎ終わる男神官は、再び聖女の前に顔を出してケタケタと不気味な笑い声と笑顔で聖女の衣服を破り捨てる。


「なっ、なっ、何する? 私は聖女よ!!」

「あぁ、聖女と交わえるなんて。 国が違えど交わえるなんて」

「きっ、気持ち悪い! 汚いそれ早く退かせ!!」

「私の心は汚く、異性と交わる快楽を知ってしまった神官。 高貴で尊い聖女様、私に教えを」


 男神官の物が聖女の秘部と交わり、光悦に浸る男神官は、睨む聖女の顔を笑いながら腰を振り続ける。


「あぁ。 なんて気持ちいいのだ。 まるで神エウラロノース様に頭を撫でて貰っているようだ」

「チッ、そ、そこで。 うっ。エウラロノース様の……。 名を言うなっ!!」

「あぁ、ああぁ。 いぃやぁ」

「……」

「うっ!」

「いっ。 まっ」

「ハァハァ。 聖女様が、体内に私を受け取って下さるとは。 あぁ感激で」

「なんで、なんで。 こんな事に……」


 すうっと涙が零れる聖女の顔をみて、男神官は、聖女の右手に突き刺さったナイフを奪う様に取り、それをそのまま自らの喉に突き刺す。


「ぎゃぁぁぁぁぁああぁぁぁっ!!」


 男神官の喉元から血が噴き出し、聖女の顔から腰に血で肌も衣服も赤く染り、青ざめていく男神官の体から黒い靄が現れ、次第に炎のよう揺らめき、徐々に翼の形へと変化する。そして男神官の頭上に黒い靄を纏わせた頭蓋骨が、浮き出て眼光が赤く光る。

 命を立ち喉に穴が空いているのにも関わらず男神官の口が動き出す。


「面白い。 実に面白い!! まさかこんな面白い物が見れるとはっ。 勇者を殺すだけにこの男に取り憑いていたんだがな。 まさかこの男ここまでやるとは!!」

「だっ誰?」

「おお、聖女様と言ったな。 目の前だ。 このひょろっとした男だ」

「そいつは、死……」

「あぁ、こいつはもう死んでいる。 あの女にこき使われ、その憎悪がこんな形で吐き出されるとはな。 だがこれも運が良い。 聖女の、貴様の身体を頂こうとする」


 聖女の目が微かな青に光ると、声を失い目を丸くすると、直ぐに戦争は、拒絶しようと泣き喚く。


「男の行為でお前と繋がっているのだ。 こう意図も簡単に奪えるとは。 ハッハッハッハー!!」

「ぎぃっ! いっ! 嫌ァァァアアァ!!」


 聖女は、背中を大きく仰け反り白目を剥き口を開けたまま叫び声ぶ、その声は、ロビーに響き渡り、数秒後急に止まり仰け反っていた背中を床に落ち聖女は、動かなくなる。

 聖女の右腕右脚に重くのしかかっていた瓦礫が、宙に浮き粉々に砕け散ると、血と有り得ない角度に曲がっていた腕と脚が現れる。

 瞬きすらして無かった目が、右腕右脚へ傾くと一瞬にして右腕右脚が元に戻り、立ち上がる聖女。

 目の前にある抜け殻のように座り込む男神官に手をかざす。男神官の肉体が、小さな破裂音と共に細々しい肉片と共に血が、扇状に飛び散った。

 第八騎士団長バクムと勇者パーティ三人の元に歩み止める聖女は、顎は引かずその死体に目をやる。

 うつ伏せに倒れた騎士団長バクムと重なる勇者パーティの女二人の死体に手をかざすと、聖女の手に吸収されていく。


「この汚い男の肉片、要らんな。 この騎士団長と言ったか、こいつと女二体。 防具と武器を頂くか

。それよりも少し臭うな。 今は聖女様だからな。 少し身綺麗にして戦場……。 行く必要も無いか……」


 聖女の身体でありながら発せられる低く不快な声は、次第に大きく笑いながら城の奥に入っていった。

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