第19話

 豪華な装飾を揃え、綺麗に片付けられた城の一室である客室に俺とペルセポネは、いる。

 この国カツオフィレの王が、勇者を匿っていたのかなど、事情を聞きたいらしく、俺たちはこの部屋に軟禁されているのだ。

 その客室にの壁には、小さな額縁に風景画など飾られてはいるが、一つの壁だけ、一面に大きな額縁に男の肖像画。

 その肖像画を眺めるように俺とペルセポネは、立っている。


「なにこの男……」

「――――この男、コベソみたいな体型だな」


 その肖像画の男性、見るからに体型はコベソと同じく丸く、服装が明らか様に王様と言ってもいい程煌びやかで宝石を散りばめた装飾品を身につけている。そして、男性の顔は、鼻が大きく目もキリッとしているが、口髭があり、顎が割れている。


「凛々しい顔だな」

「えっ! そう思うの? 丸デブパートツゥーじゃない!?」

「顔だぞ!体型は言ってない」

「顎割れだし、でも目の奥が変態っぽい」

「何を言っているかわからん」


 そんな肖像画に対し話をしていたら、ドアをノックされ扉が開く。

 この城の文官らしき役人が、きて俺たちを謁見の場へ連れられ、大きな扉を開け中に入れられる。

 それは、透き通ったガラス細工やら宝石の輝きが溢れる柱や壁に、シルクであろう綺麗な垂れ幕と丈夫な作りをされ統一感ある柄の絨毯といった豪華な目移りしそうな装飾で彩られたこの謁見の間。

 扉を潜ると目に入るのが、これも装飾が煌びやかな、椅子の背もたれにもたれかかってそうな態度をしている男性がいる。

 その男、客室に飾ってあった肖像画と同じ顔に体型、多分この男がこの国の王だ。

 その王の隣に、王と同じ椅子に座る女性は、白い法衣を着た細身、派手さが目立つ装飾品、そして少し波打った金色の長髪女性がいる。

 そして、王のいる所から一、二段下がった場所で膝を付いてコベソとトンドがいて、壁伝いに文官やら兵士がこの場を見守っていた。


「お前ら、ここに座れ!」


 俺とペルセポネを連れてきた役人が、俺たちの背中を押すが、背中触られた感触しかない。

 だが、コベソと同じく膝を付いてしゃがみ込んだ。


――――あの役人力無さすぎだろ。


 壁に向かっている文官は、息を切らしているがその呼吸が部屋に響く。

 椅子に座る丸い体型の顎割れているこの国の王が、口を開くのだが、白い歯と幾つかの金歯を見せてきたのだ。


「ヒロックアクツのコベソよ。 もしお主の言う、ランドベルクの王が仕向けた事ではなく、たまたま勇者とその仲間だという事を知らずに、アテルレナスに向かう所、行く先が同じだったから乗せてやったと――――。 言うことだな」

「はい、そうです」

「隣のトンド、お主もその話に間違いないんじゃな?」

「はい、その通りです」

「そこの、黒い髪の男。 ワシが言った言葉に間違い無いか?」


――――俺を指してきた?


 コベソとトンドの方をチラッと目を動かすが、二人は何も動かない。


「ええ、そうです」

「お主ら二人とも冒険者というが、コイツらの専属護衛と聞いたがそうか?」

「はい、そうです」


 俺は、丁寧に落ち着きながら答えるが、極小の音での舌打ちが何度も何度も、隣から聞こえる。


「まぁ、良い。 そんな事どうでも良いのじゃ。 ランドベルクが勇者を召喚した時から、どうせ我らの土地を通るのじゃ。 それは、ランドベルクが侵攻してきたものと捉えおる」


――――この場、関係なくない?

――――で、なんで俺たちこの場にいる?


「お主らヒロックアクツの者だと言うのが分かったからな。 しかも勇者に加担しているわけでもあるまい」

「王よ」


 丸い体型で顎が割れている王は、悩みながら横にいる女性を見てから、俺たちを見下ろす。


「まぁ、お主らの道具や薬など、我が国も民も助かっておる」


 丸い体型の王は、若干揺れる程すっぽりハマってた椅子から立つと壁伝いにいる文官や兵士に向かってい手広げ突き出す。


「――――だがな、勇者を我が国に入れた罪、この戦争が終わるまで牢に入れておけ」


 兵士達に、手錠着けられ連行される俺たち。

 ペルセポネも我慢してそうだが、その気になれば無双出来そうだが、今回は、あの女の神に見られている可能性もある。目立つ事は避けるべきだ。

 謁見の間を出る直前、女の声が響き、この場にいる者全てその声の主に集中する。


「我が国の聖女として、言い渡す!! その黒い髪の男も勇者っ――――なり!」


 周りの兵士や文官は、動揺が隠せないほど驚いたいる。コベソとトンドは、落ち着いている。


「――――聖女よ。 誠か!?」

「ええ、勇者しか持ち得ないスキル【神意を授かる者】が見えます」

「ヌヌヌッ! ランドベルク勇者二人も召喚してるのか!? そいつらを早く連れてけ! 戦争が終わったら覚悟しとけランドベルクの犬よ!」


 怒りの唸り声が、階を離れ地下に潜った今でも微かに届く。付けられた手錠を外した途端、俺たち四人共、順々に牢屋へ押し入れられた。



「おい、おまえら、静かにしろよ」


兵士は、汚い物を見るような目をし、去っていったが、そんなことお構い無しにコベソとトンドは、この部屋を見回している。

 鉄格子の中は、誰でも牢屋と分かるほど長方形の石で覆われひんやりと冷たく、清掃が行き届いてないのか隅々汚れが酷い。ただ、手洗い場などは個室になっているのには違和感を感じた。

 そんな所に入れられるのは異世界物のイベントと感じれば自分だけなら楽しんで置けるが、自分の妻が入れられている、しかもこんな汚い所、牢屋と言うなの場所に入れるなんて言語道断だ。

 コベソもトンド、ペルセポネも何故か落ち着いて壁に沿って設けられたベンチに座わり、俺もペルセポネの隣に座ると、光を落とす鉄格子が備てあった小窓が高い位置に合った。


「ハーデスさんのスキル見破られると分かってたんだけどなぁ」

「あわよくば、聖女が見てないでっと祈ってたけど。 まぁそんなん有り得んかったな」


 軽い笑い声を出しながら腰掛けに腰下ろすコベソとトンド。そして、ペルセポネも静かに座る。


「で、二人はどうするの?」

「そりゃ、ここから出る」

「どうやって?」

「お二人方が、必要なんだ。 冥王とその妻……」


 コベソのその言葉を聞いた俺は、薄々この二人地球の者だと言うのが分かっていたんだが、ペルセポネは、目が泳ぎ、指で耳を塞ぐ。


「その名前聞いて、ピンときて驚いた。 まさか元いた世界の神が来ているというか存在してたなんてさ」

「ハーデスと言うより【ハデス】や【プルート】を知っていたが、貴女の名前を聞いたら即理解したからな」


 コベソとトンド、笑いながら話していたら、見張りが注意したきてた。


「だが、俺たちの目的は」

「それは、ハーデスさんの立場を考えて……っと。 多分、『転移とやらを阻止する』とかじゃないか?」

「なんで、わかるの?」

「俺たち、この世界に十数年いるからな、何回ぐらいか、あのお嬢ちゃんみたいに転移された子いるんだよ。 勇者であればいいんだけどな」

「巻き込まれ転移者もいるんだ。 すれ違うぐらいなんだが、そいつらを見るとな」

「だな。 見知らぬ土地に何にも、無しに放り込まれるんだ。 あっちの世界から、突然この世界に着いたら、普通なら気が狂うんじゃないか」

「ハーデスさん。 俺たちは『その召喚が無くなれ』と思っている。だが、方法がわからん」


 この小さな窓から注ぎ込まれる光が、徐々に薄くなる。鉄格子の外の壁に灯りが点ると共に地下であるこの場所も少しずつ暗くなる。

 コベソとトンドが、この状況に打開する考えを伝えなくても、何となく理解出来る。

 それでも今は勇者絡みの事態なだけに、ユカリが何処にいるかも分からない今、あの女の神が現在こちらを見ているかもしれないし、迂闊に行動が出来ないんだ。

 それが分かっているのか、コベソとトンドは、俺の顔を見てくる。


「俺もだ。 女の神に合えばわかるんだが」

「人族の神エウラロノース……」

「そいつだ。 だがここを突破しても」

「ハーデスさん。 分かってるお嬢ちゃんは、この牢屋の一室にいる」

「なんで分かるの?」


 ペルセポネの疑問に答えるコベソは、その目が微かに青色に光る事を伝えて、【鑑識眼】を使って探してたと言う。


「なら、さっさとここ出るべき」

「――――待っ!!」


 ペルセポネは、俺の制止を振り払う前に、この部屋の鉄格子を二本の剣で木っ端微塵し終わっていた。


「マジか!」

「ペルセポネさん、流石」

「やはり、ですな」


 コベソもトンドも拍手し、「お嬢ちゃん、探しに」と先に進む。

 ペルセポネも、口角を上げ笑顔で着いていく。

 おいおい、兵士が来たらって……。

 武器を構えて叫んでいる兵士が、既に目の前におた。

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