第7話
しばらく焚き火の周りでタリアーゼのメンバーと共に会話をしていてると、ヒロックアクツの二人がプレートに載った食事を持ってきて、俺とペルセポネにタリアーゼのメンバーと共に食事をご馳走になる。
辺りは、暗くなるが、見えなくなるほどでは無く、空に月や星があり、木や山が見える程度の明るさであった為、思えばこの世界の夜は、俺達がいた人間界も同じような夜だと慣れているせいか、異世界って月が多かったりとか思っていた。
ざっくばらんな会話をしていた団欒の中、ライカがペルセポネに向かって話を切り出した。
「あっ、先程、何の話してたんですか?」
「馬車の時? 魔族ってどんなのって話」
すると、俺とペルセポネ以外ピタリと止まり、この場の空気が張り詰める。
「なんで、魔族?」
フォルクスが、静かな口調で聞いてくると他の全員一斉に俺とペルセポネを冷たい目でみる。
「私たち、魔族という者を見た事が無いの。 で、魔族というのはどんなんだろうって話をしてたのよ」
宥めるような声でペルセポネは見事な説明したら、冷たい目が一瞬にして溶け、この場がホッコリとした雰囲気に包まれていく。
「そうだったんですか! 魔族というから」
「まさか、この森超えて魔族が来たのかと」
「ペルセポネさん容姿端麗だし、ハーデスさんも顔整いすぎて、もしかして魔族じゃない? って話してたんですよー」
和やかに会話するフォルクスにダナーだが、ライカの失言で今度は一斉にライカに目をやる。
ライカは、やってしまったと言う顔をして、顔を下げるが、その後ペルセポネの言葉でライカは顔を上げた。
「容姿端麗だなんて。 ありがとう。でも魔族ってそんなのいるんですね?」
「ええ、人族の世界にもエルフと言う美形な種族もいるんですが、魔星族というエルフの上位種族の魔族がいます」
エルフが居るってと言うダナーの言葉を俺は、改めて異世界に来て楽しみが増えた。
架空の生物が実際に存在する世界にいるし、もし、エルフに会って話をする事も出来る。
――――でも、エルフの上位って良くあるハイエルフじゃないの?
だが、それを聞いたらエルフって事知っているって思われるし、魔族がどういう存在なのかを知らないのだから時が来たらわかるだろう。
だが、そんな事お構い無しのペルセポネ。
「えっ? エルフの上位ってハイエルフじゃない?」
「ハイエルフ? いくら高いからって『ハイ』付けてたらエルフもアホでしょ」
マイクが、スプーンを持ち上げマラダイに言っているが、あまりの声の大きさにマラダイは、焦りマイクに喋るなと小声で大人しくさせていた。
「でも、種族間でどんな爵位かランクかそれぞれだしな」
フォルクスの何かをフォローする口調は乾いていた。
「でも、魔星族の魔王。 美男子って昔の勇者の話から語り継がれてるじゃない。 なんでも女勇者とイケメン魔王のラブストーリー」
「ライカ。 お前神官なのにそんな俗の本見ているのか?」
「あっ、私聞いただけですよ。 教会の先輩から」
「ライカっ。 魔族は敵なんだぞ、俺たち人の。 ラブストーリーなんて存在しないし、ある筈がない」
「そうですよね。 それはわかってます」
あの女の神が、魔族とその神である魔神を目の敵にしていようだが、人族にもその考えが植え付けられているのか?
俺は、その考えにポロリと口にすると、ペルセポネ以外みんな目を丸くして俺をみる。
「なんで、魔族を敵だと?」
「なんでって。えっ? ハーデスさんどうしたんですか?」
「魔族は敵ですよ。 それ当たり前じゃないですか!?」
「そうです。 魔族は敵!」
「なんで敵と言う訳が……」
俺は、皆から『何言ってるんだ?』という視線が突き刺さってくる。
「いやいや、魔族は敵。 これ当たり前!」
「理由なんて、無いけど。 魔族は絶対敵」
「過去から魔族によって人族は苦痛を受けましたからね。 その事が後世になって受け継がれているのでしょう。 魔族は敵なんです」
神官であるライカの言葉に、みんな頷く。
その後、質問してみるが、最近魔族からの被害は無いらしい。
その理由は、勇者が攻めてきた魔族を倒している。
「みんな勇者見た?」
「見たぞ、俺たち出発する前にローフェンに来ただろ! あの時見たぜ」
「くっ、女性って聞いたんだけど、どうだった?」
「マイク見てないのか?」
「その顔! マラダイだけじゃなく、ダナーもリーダーも見たのか?」
「じつは、私も……」
「マジかー。 もしかしてあの時か! 俺だけ出発の準備させておいて」
マイクの責める声の中、他のメンバーはそっぽを向いている。だが、マラダイが、ニヤニヤと口角を上げマイクに自慢していた。
「美人な人だったぜぇー。 黒髪のすらっとした。」
「あの髪。 綺麗でしたよねー」
フォルクスとダナーも頷くのを、スプーンを噛み締めて睨んでいるマイク。
「勇者か!」
「でも、あの勇者どうなんだろうな。 なんせ女って言っても若そうだし」
「神から選ばれた勇者なんだから、実力は折り紙つきだろ!」
「折り紙? そんなの付いてたらアホだろ」
フォルクスの言葉を取って笑っているマイクを見ていたマラダイは、呆れてマイクを正す。
「折り紙つきとは、太鼓判押されたって事だよ。 つまり神から実力を認められているって事」
「マジか! 折り紙付けられて、太鼓判押されれば実力者か!」
変な解釈をするマイクを、皆呆れていた。
「すみません。 こんなヤツいて」
「こんなヤツって」
「戦闘とかだとまともなんだけどな」
「なんだよ!」
食事を終えたフォルクスとマラダイが、俺とペルセポネに笑顔でマイクの事を誤る。
そのマイクは、「俺間違ってない」ってマラダイを責めていた。
そんな団欒の中、俺は、もうひとつ疑問を問い掛けた。
「勇者って神に選ばてると言っていたが、どうやって選ばてる?」
俺の質問を飛ばしてみると、男四人数秒目が泳ぎ直ぐにライカに目をやると、驚きの顔をするライカだが、直ぐに分かったのか答えてくれた。
「私も詳しくわからないんですが、教会の話では神託を受ける【聖女】が居るんです。 城に居たりです。 神託を受けると国が何処からか呼ぶとか。そんな事言ってたような」
ライカは、最後の方で眉間に力入れて首を傾げながら話を進めるとダナーが、思い出したかのように話を加える。
「そう、呼ぶとか。 なんでもこの世界とは全く掛け離れた所からってな」
「なんで、ダナーが知ってるんだよ。 普通、ライカみたいな神官とかならわかるけどよ」
「アレだよ、女勇者と魔王のラブストーリーの本に書いてあったん……」
「ダナー。 それ読んでいたのか?」
「いや、お前の妹が、たしかぁ〜。 思い出せないけどな。 話してたんだよ」
フォルクスの身内の話になり、その後殆ど関係なさそうな事柄だったので聞く振りをして、適当な相槌を打っていたが、案外バレていなかった。
それにしても、勇者召喚をするには神託を受ける聖女が居ないと出来ない。
勇者召喚は、異世界から呼ぶって事は分かるが、召喚してから女の神が、俺たちの世界の人間界から喚ぶのか?それとも喚んでから勇者召喚をさせているのか?
どっちにしてもあの女の神に会う必要がありそうで、召喚された勇者に会って神に会うための手段を取らねば。
そう考えていると、話は別に変わっていてペルセポネも笑顔で会話を楽しんでいた。
野営の見張りはタリアーゼのメンバー交代でやってくれるそうなので、俺とペルセポネは馬車で休み、そして夜が更けて行った。
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