第6話

 フォルクス達のパーティ【タリアーゼ】は馬車の護衛の依頼で、南の街クエンツから城塞都市ローフェンに向かっていた。

 馬車で通るとなると、この森【異界の樹海】の脇にある舗装された道を通る事が、一番進みやすい。そして、異界の樹海の魔物は樹海から出てくる事はほぼ無く、さらに樹海の外にいる魔物も樹海に近づく事は殆ど無いので、基本魔物と遭遇しないそうだ。

 だから、この道を選ぶのが推奨されている。

 しかし、絶対では無いので商人や往来している者は、護衛の依頼して通行するのが一般的らしい。

 そう、フォルクスが説明してくれた。

 この馬車の護衛の依頼だが、ヒロックアクツ商事と言う企業の護衛と言っていて、なんでも各国にまたがる大企業らしい。そして、城塞都市ローフェンを本拠地としているともフォルクスが言っていた。


 ローフェンに着くまでには俺達とタリアーゼのパーティと出会った所から馬車で丸一日掛かるそうで、それを聞いた時ペルセポネを見たら、そっぽを向いた。

 馬車が三台直列して走行し、前の馬車にはヒロックアクツ商事の人にフォルクスとマイクが危険を巡見し、そして後尾の馬車には、マラダイにダナーとライカに俺とペルセポネが乗っている。

 前と真ん中の馬車には荷物が積んであり、

徒歩で向かってたらどれだけの日数が必要だったのかと苦々しくと思い、あの場面に遭遇して良かったと痛感している。

 ペルセポネがブラウンコボルトの首を一刀両断してしまった事で、マラダイがペルセポネを褒めてたらスキルの話をしていた。


「スパーンッ! でしょブラウンの首。 どんなスキルなんですか? 俺なんてリーダーと共に強撃のスキル使ったのに、殆どかすり傷だもんな!」

「え? スキルなんて……」

「マジか! ペルセポネさん、どんなレベルなんですか?」


 マラダイの質問に、あっけらかんと答えるペルセポネの回答を聞いてライカもダナーも目を丸くしている。


「いやいや、俺も剣技のスキルではっと思ったんだけどなぁ」

「そりゃそう思うよ。 俺自身、戦斧技を使うけど、剣のスキル持ってない俺だって剣で攻撃したりして使えるからな。 でもあの切口、絶対スキルだと思ったんだけどな」


 眉をひそめるマラダイとダナーに、黙って話を聞いているライカを見て俺が口を開く。


「スキルってみんな持っているんですか?」


 その言葉に驚く三人。特にライカは『えっ?』と小声だが漏れていた。


「いや、持っていない人もいるけど……」

「その質問……」


 ダナーとマラダイが、目を合わせ変な質問してきた俺を遠くにいる様な目で見てくる。


「いや……」


 すると、ダナーが何か察したのか答えてきたのは、スキルと魔法を持つこの世界の人族の構造。

 魔法を使える者は、魔石という魔法を使う為の組織を体内に持っていて、スキルを使える者は、その魔石を細かく砕いた物が体内全体に散りばめられているとの事。

 魔法使えてスキルも使える者もいるし、その逆に両方とも使えない者もいると、使えない者は殆ど街に居たり、農民や商人とか、後貴族でもいるらしい。

 スキル無くても極普通の生活も出来るし武器を振るう事も出来る。スキルがあればそれだけ、より効率の良い作業もでき、武器を扱うスキルがあれば兵士や冒険者になったりする者が多い。

 そんな、説明をダナーは得意げに話を進めてきた。


「――――で、俺は火と土の魔法が使える。 つまりその二つの魔石がこの体内の何処かにあるらしい」

「らしい?」

「魔石は、特定の場所じゃなくて至る所に移動していると聞いた事があるが、正直自分でも何処にあるか分からないんだ」

「そうなんです。 私も!」


 ライカも魔法を使う人間として、ダナーの説明に入ってくるが、そのダナーの説明に俺が一つ引っかかる。


「なら、魔物の魔石は? ペルセポネがブラウンコボルトの胸をほじくり返してたじゃないか?」

「魔物は胸にあるのが殆どなんだけどな、その他に体から生えるように出てたりするし、そんなのが多いんだよ。 しかも色でどんな魔法使うか分かるしな」


 俺の質問をダナーが答えると思い気や、意気揚々とマラダイが答えるが、ライカが「それ、ずっと前にダナーさんが言ってたやつじゃないですか! 」とマラダイに注意している。

 だが、俺の質問は「いや、皆さんスキル持っているんですか?」と聞きたかったんだが、それに付いても俺が訊く前にマラダイとダナーが、自分達のスキルとか話をしてきたので、聞くことを辞めてしまった。

 そんな中、かなり時間が経ったのか幌の中にいる俺たちでも、外からの光がやがてオレンジ色になり、外を見るとそろそろ日が沈み、馬車を停めて野営に備えると教えてくれた。

 そして、フォルクスが前の馬車からやって来て三人に指示をだす。

 勿論、俺も何か手伝えるかと尋ねるが、「いや、大丈夫。俺達がやるんで」と回答。そして、にこやかに準備へと向かっていった。

 俺とペルセポネは、野営の準備をしている五人と御者を眺めている。


「ペルセポネ?」

「な、なんですか。 冥王さま」

「この世界に、来たこと、やはり有るだろ?」

「そんな事ないよ……」

「今までの言動みてきると薄々、いや殆ど、むしろ完璧に来ていると確信した」

「それは、冥王さまの勘違い」

「なら、何故魔石という物が、この世界にあると知っている?」

「それは、ヘカテーの資料の中に」

「それは、無い! だが、そんな事どうでもいいんだ」

「へ?」


 ペルセポネの『何言ってる?』と言うキョトンとした顔で俺を見る。


「俺が、この世界に来た事の目的忘れるな」

「転生や転移を止める――――」


――――うんうん、流石我が妻、正解だ。

 ペルセポネの回答に、忘れてないと解り、相槌を打って安心したんだが、その後握り拳を前に出しての言葉で俺は目を丸くする。


「――――そしてヤツをぶっ殺す。 そしてこの世界をぶっ壊すだよね?」

「は?」


――――なんで!?


 いやいや、最初の言葉は、合っていたよ。だけど殺さないし、この世界壊さないから、何処でどう聞き違いした?

 あの時、俺の後ろで聞いてた筈なのになんで?


「いやぁ、あの女が、神なんてどんな壊れ方するんだろぅ」


 ペルセポネが、日が暮れ焼ける空を馬車の荷台から覗き込むように眺めてながら平然と恐ろしい言葉を呟く。

 俺は、再びそれを正すためと、ペルセポネの思考を変えるため。


「違うからな! また変な事言うな。 転生や転移を止、そして二度とさせない。 これが今回の第一目的だ」


 俺は、ちょっとだけ大きく声をだすが、それを見上げているペルセポネは、俺の言葉を右から左へ受け流して、笑顔で空を眺めていたが、急に俺を見ては。


「そう言えば、あの姿形の人間。 人族と言うんですよ!」

「あぁ、あの女の神が言ってたな。 魔族と言うのがいるって」

「その魔族って、この森の向こう側にいるんですよ!!」

「森の横を通る時に言ってたな」

「魔族見てみたいなぁ。 どんな姿なんですかね? 目が大きく黒くて銀色の体で背が低く、要人と手を繋いでいるとか!」


――――目が大きく黒くて……。

――――銀色の体……。

――――背が低い……。

――――しまいには要人と手を繋ぐ?


「それ、人間界でいう宇宙人だろ!?」

「てへっ。 未知なる生物楽しみ」

「えっ!?」


 俺たちの所へ駆け付けてきたライカが、ペルセポネの言葉と不気味な笑いを目の前で見てしまい、少し引き気味で冷や汗をしているような顔だった。

 ライカが俺達の所にやってきたのは、野営の準備が終わったらしく、馬を休めている御者とヒロックアクツ商事の二人は、馬車の中で作業していると言う。

 それにしても、馬車から良い香りがしてきのは言うまでもない。

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