第149話 ターリの町のあれやこれや
第149話 ターリの町のあれやこれや
翌日は予定通り俺たちが先行する形でウイナの町を出た。
馬車の速度を考えるとこれは仕方がないことだ。
宿泊に関してだが極端にお高い部屋だけのことはあり、お風呂もご飯も最上級だった。と思う。
いや、俺も庶民だからね。本当の意味での最上級など知らないから、なんとなくそう思うだけ。
ただ貴族のお嬢様であるシアさんでもテンション上がるレベルだったようだから、かなりすごいのではないだろうか。
ネムは普通だったけど。
分かれるにあたってミルテアさんに透明クライム(空間属性)を一匹預けた。
自由に出し入れというのは無理なんだが、こいつらは収納用の亜空間を持っていて、コンテナ一つ用意してそれにいろいろ詰め込んで、それを収納してもらうという形でかなり便利になったりする。
コンテナの大きさは6畳間ぐらいかな。
ここら辺はこの能力を目覚めさせた…のか、解明したのかわからないが、ライムさんの手柄だろう。
ただ結構危ないやつなので取り扱いには注意するように伝えた。
ミルテアさんたちがではなく、スライムを盗もうとか、変なちょっかいを出すやつが危ない。こいつはシャレにならない攻撃をするのだ。
うん。
それから途中で隠れ里に顔を出すという名目でティファリーゼが離れた。
鬼娘とか蜘蛛娘とか心配しているだろうから説明に行く。ということだった。
それにイアハートが引っ越す気満々で、その準備を進めているので彼女たちも移動するのだと思う。
他にもイアハートが保護しているあれやこれやがいるので、そういったやつらの引っ越しも考えないといけない。
多分俺が運ぶことになるのではないだろうか。
まあねいいけどね。
それが平和のためだ。
■ ■ ■
さて、ターリの町につくとこの町もかなり発展している感じがあった。
ただ極端にというわけではない。なぜだ?
あの宿屋に顔を出してみるが当然のように満室だった。
それでも焼き肉事業の話があるから女将さんと軽く話などする。
細かいことは公爵家に任せたからということであまり口を出すことはないようだ。
品質を落とさないこと。定期的に相応のタレを納品すること。これが女将さんの条件だ。
あとアイデアの使用料として年間決まった額が支払われるらしい。
宿屋の売り上げよりは多いようだ。
しかし女将さんは宿屋を続けるという。
「こいつは私の天職だからね」
見事なお腹をスパーンスパーンと叩くその姿はお相撲さんというより某コメディアンをほうふつとさせる。
さすがの貫禄である。
部屋を開けさせるから泊っておいきよ。と女将さんは言うけどそれはまずいので遠慮した。
いざとなったら森の中で家を出してもいいのだ。
無理して恨まれたりするのは勘弁だ。
その後冒険者ギルドに行くと相も変わらず活況な様子だった。
「お久しぶりですね」
と迎えてくれたのはギルマス補佐官のアレイシアさん。エルフの人だ。
「はあ…今は補佐官じゃなくてサブマスターなんです。変則ですけど、セルジュ様の下で私とロンダミスが副長を拝命しました。
現在セルジュ様とロンダミスは迷宮のそばに建設中のターリ冒険者ギルト迷宮支所に行ってます」
というわけでこの町の発展が限定的だったのは迷宮の入り口に程使い場所に新しい街というか施設が建設中だったからであるらしい。
大きい冒険者ギルドやそれを支援する各種の施設。
当然宿泊所などもある。
ではこの町の価値はというと別に下がったりはしないようだ。
迷宮のそばというのはそれだけで危険があるもので、見張りや防衛戦力があっても完全にくつろぐというのは難しいし、それだけの経費も掛かる。
なので少し離れて安全なこのターリの町は言ってみればベッドタウン。
その新しい街よりも安全を確保したい人たちに人気であるようだ。
でそこにロンダミスのジジイがいる。
覚えているよ、なかなか問題の多い年寄りだった。まだやってたのか?
「ええ、あの時の対応で一時は更迭という話も出たんですけど、その後魔族討伐でお祭り騒ぎになって、その後迷宮発見で大忙しになってしまって、外すに外せなくなってしまったんです」
アレイシアさんの文句を聞くと魔物討伐の英雄であるロイドさんやリリさんを歓迎して即座にいろいろ便宜を図り、さらに英雄に祭り上げたのがロンダミスだったらしい。
有能なギルド職員で英雄とも懇意。という印象を周囲に見せつけたわけだ。
こういうところは優秀なんだよな。
これによって更迭の話が先送りになったらしい。
そうこうしているうちに新しい迷宮が見つかり、迷宮ひとつ見つかるというのは俺が想像するよりもずっと多くの人や金が動くらしい。
ギルト本部からも結構人が送られてきたがそれでも人手不足。
猫の手よりもましな彼は九死に一生を得た。みたいな感じになったようだ。
「いやー、命冥加というのを地で行っているね」
「まあ、ギルドのためなら手段を択ばないところがあって、短絡的にろくでもないことを考える人なんですけど、こういうとにかく忙しいときは本当に役に立つんですよ。
忙しいと悪だくみもしませんし」
小人閑居して不善をなすの典型みたいなやつということだ。
なのでここよりもより忙しく、しかもギルマスのセルジュさんが監視できる場所という意味で新しい街に連れていかれたようだ。
「新しい街って何という名前なんですか?」
「それが聞いてよネムちゃん。ロイドシティっていうのよ」
うぷぷっとか笑っているし。
「ああ、英雄の名前にあやかったわけか」
「ええ、縁起がいいでしょ?
それにロイド君とリリさんもその町にいるのよね。何といっても魔境の中だし、それに最近は二人とも一段と腕を上げたわよ。
はっきり言って魔族を倒したと聞いた時は『よく倒せたなあ』というのが正直な感想だったけど、まあ、運も実力のうちって言うのかな。その後は貫禄もついてきて、実積もどんどん積み上げてきていて…
まあ、もともとはベクトンの子だから帰りたいのかもしれないけど、今は忙しくて動けない感じかな」
ロイド君か。まあ、酒好きの兄ちゃんだった。という印象が強いな。
「あとキルシュ公爵家の方が来ていると聞いていたんですが、そちらもロイドシティですか?」
「ええ、向こうだと建物に余裕があるからね、
それに勇者が向こうでのたくっているから、対処はその方がやりやすいみたい。
ご苦労様よね」
「ということは勇者はやっぱり問題を?」
アレイシアさんは少し困ったように。
「まあ、実力はあるみたいね、迷宮の攻略には力を入れているみたい。雑魚相手だと無双しているみたいよ。
大物との戦闘の話は聞かないから、どこまでやれるのかはわからないわね。
ただ、気が弱いというのはあるみたい。
セルジュ様に威圧されるとビビっているわ」
まあ、あの人は筋肉の巨人みたいな感じだから迫力はすごいもんね。
「ではとりあえずそっちに行ってセルジュさんと公爵家の人に会ってみようか…」
「大変です、また犠牲者がでました」
ドカンとドアを開けて人が走りこんできた。
ギルド内に緊張が走る。
「今度は目撃者ありです、魔物に襲われたようです」
ギルドは蜂の巣をつついたような騒ぎになった。
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