第146話 懐かしい顔、懐かしい・・・
第146話 懐かしい顔、懐かしい・・・
かつて学生を経験した身としては補習漬の仲間の苦労がしのばれる。
いやー、いい思い出だよ。若者が苦労しているのを見るとついにやにやしちゃう。
だけど考えてみるとこっちも暇なんかないのだった。
あの二人が戻ってくる前に出発の準備を整えないと行けない。
「乗り物はあのままでいいとして…」
一応黒曜をつなげばあまり怪しい感じはなくなるだろう。
人目がないところなら俺が動かしてもいいわけだしね。
他に何が必要だ?
「武器防具は…必要ないか…」
「はい。武器は壊れませんし、防具もラーン男爵領でドワーフの親方衆にメンテしてもらってますから。
あとは服ぐらいですか?」
男の俺としてはなぜ服が出てくるのかいまいちわからない。いたんだりはしていないから。
だが女性が服を必要だと言ったときに文句を言ってはいけないのだ。
「わかったよ。じゃあ、明日はネムはみんなの服の調達を頼むよ」
「マリオンさまはどうします?」
「とりあえず飯だな。食い物だ」
そう、とりあえず必要なものは衣食住。
キャンプの準備はもともとできているし、衣はネムの担当なら俺は食を担当しよう。
かくして翌日からネムはラウニーやメイドを連れて買い物に行く。
僕はメイドを連れて市場に買い出しに。
「旦那様、こんなに買い込んでどうするんですか?」
「僕の収納は入れた物が劣化しないからね、だったら作った料理を大量にしまい込んでおけばいいんじゃね? と気が付いたのだ」
つまりそういうことだ。
基本はワンディッシュメニュー。使い捨ての弁当箱とかあると便利なんだけど、ないものは仕方ない。
手軽さというのであればフィッシュ&チップスではないが、ハンバーガー。ホットドック。フライを挟んだやつも作る、コロッケとかメンチとか大変好きだ。
大量のフライドポテトも作ってしまっておく。
屋敷のみんなにもふるまうが大好評だ。
他にもおむすびもいい。
大量に炊いたご飯をどんどん握り飯にしていく。塩でいいのだ。
野菜も必要。なのでキュウリを大量に入れる。きれいに洗ってすぐに食べられるようにしてだ。あとみそは必須。
肉も用意する。
ハーブを混ぜた塩コショウで串刺しにした肉を焼いて入れておく。
あとバーベキュー用に下味をつけた肉を小分けにして入れておく。
スープも大量に作る。
とりあえず四日ほどかけてかなりの領の食材を収納できた。
すごいぞしまうぞう君。
しかし料理が得意でないのがかえすがえす悔やまれる。
男やもめだったからなあ…俺の作れる男料理なんて大したもんじゃないし、あとは外食だった。
マーヤさんは…たぶん無理だな。料理をしようとしているところ自体見たことがない。
醤油も酢もあるのにすし酢の作り方とかも分かんないよ。
はー、残念。
■ ■ ■
準備が整って少しするとシアさんたちがお勤めを終えて帰ってきた。
「はー、思いっきり暴れたいです」
「迷宮まで待てない。新武器の実践訓練をしたい」
「うんうん、その気持ちはわかるよ。早速明日出発しようか。日程をゆっくりめに組んでいけば休みにもなるでしょ。
街道だから魔物もあまり出ないし」
「「「さんせー」」」
「せー」
まあ、仕方がないか、俺はセバスにそれを告げ、あとのことを頼んでおく。
ほとんど留守にしているので申し訳ないが、まあ、そういうものだと思ってくれ。
翌日は黒曜を馬車につないで粛々と出発する。
家に残るメイドたちの『お気をつけてー』の声を受けての出発だ。
ただあまり気を付ける要素があるとは思われないのだけど…
「いえ、ところがそうでもないようです。結構危ない迷宮の様ですよ」
そういったのはシアさんだった。
彼女は鞄から資料を取り出す。
それは今度発見された新しい迷宮に関する資料だった。
「へー、さすがですね、すでにこんな資料ができているんですか」
「学校の資料室にあったのを写してきた。
誰かコピー機を作れ」
マーヤさんがメタな発言をしてみんなが首をひねっている。
だがコピー機はあったら便利だろう。
その発言でマーヤさんが地球で料理をしていたか思い出したので聞いてみた。もししていたのであればいろいろと楽しい展開が。
「母は偉大。偉大な母を持つと子供は何もできなくなる」
つまりお母さん任せで料理などはしたことはないと言いたいらしい。
まあ、そんなもんだろう。
そして資料の中身だが、シアさんが読み上げるところによるとその遺跡は地下階層型の迷宮らしい。
階層はとりあえず20階層まで確認されているようだ。
出てくるのは動物系の魔物とアンデット。
魔力がかなり濃くて、ただのスケルトンですらかなり良い魔石が取れるらしい。
つまり稼ぎになるということだ。
それに加えてこの迷宮。古代の遺物がけっこうな量出土している。
魔導ペンとか照明とか資料を見ると文具系が多い?
「文具も大昔のものはお宝ですよ。今の技術力では作れないものとかも多いですし、それに古代の服とかも見つかっているみたいです。
何かにコーティングされていて、現代までもったらしいって」
んん? 服?
どこかでみたような…
「あと未確認情報なんですが、かなり強力な魔物が徘徊しているといううわさもあります。
これに関しては目撃情報が少なくてうわさなんですが…」
話によると霧で出来たような空飛ぶ頭蓋骨…って…あれ?
心当たりが…
資料には迷宮の場所も一応記されていたが…これは意味がないな。あの遺跡の場所はよくわからないし。
しかし話を聞く限り、あの遺跡が暴かれた。ということなんだろうか?
でもあそこはただの遺跡で迷宮ではなかったよね?
それに20階層もなかったし。
まあ、行ってみればわかるか。
そんなこんなで一日目の野営地に到着。
キャンプに適した場所。というだけなんだけど、そこで懐かしい顔に出会った。
「きゃーーーーっ、ミルテアさん、お久しぶり~。一昨日神殿の方に行ったらいなかったから。こんなところであうなんてー」
「ネムちゃん。元気そう。幸せそう、よかったわーーーっ」
ミルテアさん登場。
現在は新しく結成した新生、百花繚乱のパーティーリーダーをやっているはずだ。
とすると後ろにいるのがそのメンバーかな。
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