第118話 ドラゴンの影響は大きかったみたいです

第118話 ドラゴンの影響は大きかったみたいです



 怒られた、めっちゃ怒られた。

 まあね、ちょっと様子を見てきますとか言って出かけて思いっきりドンパチしてきたからね…


 でもまさか戦闘の余波がここまで届いていたとは思わなかった。


 で帰ってきたらびっこ引いているんだから怒られても仕方がない。というところだ。


 心配されて怒られて、まあ、幸せってやつなんだろう。


 ラウにも『めっ』とか言って怒られた。うん、かわいいな。


 ドラゴン? 置きっぱなしだよ。

 あの後魔力をドンドコ注いだら繭が卵の殻みたいに変化して、それで安定しちゃったからね。

 多分さなぎが孵るのに時間がかかるのだろう。


 偶に様子は見に来ようと思う。


「でも、この後どうしますか?」


 という話が持ちあがった。

 数日は狩りにかけるつもりだったんだけど…ドラゴンのせいで随分環境があれてしまったみたいで魔物の分布がね。


「継続希望」


 マーヤさんはやり足りないと。

 

「というかまだ何もやってない」


 ともいうな。


「マーヤちゃんがやるんなら私も継続で」


 決まったな。この辺りが継続を希望したらもう決まりだよ。

 なぜって…


「みんなで狩りって楽しいですね」


 と本気で楽しそうなネム。


「きゃあ~。うい~」


 とよくわかっていないラウ。

 この二人に早く帰るなどという発想はないだろう。


「じゃあ、私たちは近場で狩りをしてますからマリオン様は休んでいてください。

 足はもうずいぶんいいみたいですけど無理しちゃだめです」


「はいはい」


 嫁の忠告は素直にききます。


 というわけでマーヤさんのライフルに魔力をチャージして四人を送り出した。

 さて、あとは…武器でも作るか…


■ ■ ■


 ネムは泣き言など言わない娘さんだ。

 あの子が泣くのは夜攻められている時ぐらい? あれは〝鳴く〟か?


 いやいや、下ネタはいいんだ。

 今回ネムが『一緒に戦える武器がなくてつらい』みたいなことを言ったんだよね。

 言われてみれば尤もだ。


 シアさんの戦力はあの盾で格段に上がった。

 マーヤさんは暫定だがAUGがある。


 ネムの武器とラウニーの防具を何とかしないといけないだろう。


「さて、どうするか…」


 俺はイアハートの所で手に入れた魔導書を引っ張り出してページをめくる。

 どんな魔法式を組み込むか、それによって使う武器が変わってくると思うんだ。


「まずホーミングはあった方がいいよね」


 投擲だよ投擲。

 投げた武器が勝手に敵を攻撃する。

 なんか素敵だよね。


 となると…『双頭斧』かな?


 なんでかって? そりゃもちろんダブルトマげほんげほん。埃がのどに入った。

 うん、そんな感じでいってみようか。


「あとは…アポート。呼べは手元に戻るのか。これいいな。それから強度を上げる術式は…いらないな。ペークシスを使おう。同じ理由で斬撃強化もなしだ。

 あれで作った刃物はほぼ無敵。

 魔法で強化するよりペークシスの方がずっと切れるのだ。

 芯と刃の部分をペークシスにしてゴルディオンで肉付けをして…」


 うん、イメージとしてはこんなものだな。

 少しずつ行こうか。

 俺はおもむろにペークシスを取り出した。

 いっぱいあるからいっぱい使おう。


■ ■ ■ side ネム


「いったい何だったんですかね?」


 そんな疑問を発したのはシアちゃんだった。

 マリオンさんが戦ってきた魔物の詳細を話さなかったからだ。

 二人とも興味津々ではあるらしい。


「あやっ、てふ~」


 ラウは気にしてないわね。ちょうちょを追いかけて…


 ぱくっ


「こらー、そんなのたべちゃだめー」


 奥地に手を突っ込んで吐かせようとしたけどその直前に『ごっくん』って…

 おなか壊さないかしら…

 大丈夫かしら…


 マリオン様がいれば問題ないと思うけど…


「ネムさんはどう思いますか?」


「えっ? ああ、魔物の話? そうねえ…なぜ黙っているかというと…あの感じはサプライズをねらっているっぽいよ」


「サプライズ?」


 なんか悪だくみしている感じ? がするんだよね。

 後でびっくりさせてやろう…みたいな。


 でもそれだけでもないと思う。

 言っていいのか悩んでいるかんじがある。


「さすが夫婦」


「そう言うのわかるものですか?」


「私たちは勘がいいから。それに夫婦として暮らしているのよ。なんとなく呼吸とか、そう言うのは読めるようになるわ」


「読めないと気持ちよくなれない?」


 マーヤちゃんはすぐにエッチなところをついてくるわね。


「まあ、そう言うのはあるわ。お互いに呼吸を合わせないとギコチなくなるとか…」


「特に合体とか?」


 うんうん、興味津々よね。

 二人ともまだ生娘だし。

 わたしも生娘だったころ、誰かと何かがこんなにシンクロして合わせられるものだなんて想像もしなかった。

 あれは夫婦の対話の究極の形ね。


「「きゃあぁ~~~~~~~~~~♡」」


 ラウがいなければ後学のために少し話してあげてもいいんだけど…子供に聞かせる話じゃないからここらへんで。

 ただマリオン様に関しては…そのうちわかるかも? そんな気がするわ。


■ ■ ■ side マリオン


 三日ほど狩りをしてのんびりと帰る。

 その間に周辺の魔物もだいぶ落ち着いてきたようだ。


 元の場所に戻ったというのではなく新しい場所に新しい秩序が生まれつつある。ということだろう。


 一度ドラゴンの繭を見に行ったが変わりはなかった。

 深く静かに眠っている感じだ。

 一応また源理力を注ぎ込んできた。


 ついでにラウにもやった。

 指先に吸い付いて源理力をチューチューする姿はなかなかにかわいい。

 赤ちゃんみたいだ。でっかいけど。


 いやね、蛇の下半身ってのは本当に体積かあるんだよ。


 そして帰還。

 森での出来事はギルドではそれなりに騒ぎになっていた。


 奥から魔物が押し出されて来てすわ氾濫か!! という騒ぎになったらしい。


 反乱というのはスタンピードのことね。

 魔境の魔物が大挙して魔境の外に押し寄せる現象。


 実際弱いながらも魔物が数種類町に押し寄せ、騎士団や冒険者たちが防衛戦を展開したらしい。


 魔物の量が少なく質も低かったために割と簡単にしのげたようだが騒ぎは騒ぎだ。

 もしあのまま黒竜を放置していたら逃げる魔物を追いかけて黒竜が町を襲い、大きな被害が出たのかもしれない。


 いやー、いいことしたなあ…


「皆さん魔境の奥で何もなかったんですか?」


 ギルドの人がそんな質問を投げかけてくる。


 みんなどんな返事をしていいのか首をひねる。

 だけど俺は言っちゃうよ。


「ドラゴンが出ました」


「ふえぇぇぇえっ」


 まあ吃驚するよね。


 ドラゴンは俺たちがいたあたりからさらに奥で狩りをしていたらしい。

 そしていつの間にかいなくなった。

 うーん、嘘のような、嘘でないような…


 その日の夜、ギルドマスターが家を訪ねてきた。

 あの時は外で活躍していていなかったんだね。

 でも話せることなどそれほどない。


「つまりドラゴンを見たのは最初の日だけど、ドラゴンがいなくなった後は森の奥も落ち着いてきたと…」


「ええ、そんな感じです」


 これは全く嘘ではない。


「まあ、魔境の奥ですからね。ドラゴンぐらいはいるでしょう…

 何らかの理由でちょっと狩りに来るぐらいのことはあるかもしれません…

 今までも何回か魔物の氾濫はありましたから、ひょっとしたらそれらもそういうことだったのかもしれませんね…」


 どうなんだろ。


「まあ、すべてがそうではないにせよ、そういう原因のものもあったのかもしれませんね…」


「そうですよね、ドラゴンって生態がよくわからない魔物ですから…特に風竜なんかは本当に適当にどこに現れるかわからんのですよ…

 まあ、ドラゴンですからね、街中でなくても影響は出る。ということですか…」


 彼らは俺たちがキャンプした場所を確認して帰っていった。


 黒竜の繭はあそこから随分離れているからまず見つからないだろう。うん。


 そんなこんなでさらに三日ほど武器づくりに専念し、出来ました。

 ダブルトマホークです。


 ふっふっふっ、ふふふのふ。

 かっこええっ!

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