第39話 武器屋をのぞいてみる。見るだけ。

■ マリオン。異世界に落っこちてきた。マリオンに改名する勢い。

■ 〝あいつ〟無限炉の中で会った存在。真理雄に魔法を伝授した。

■ ネム。獣族の女の子、ものすごい美少女。白虎の特徴を持つ

■ ミルテア・大地母神ステルアの神官。ハーフエルフ。ものすごい巨乳。司祭様。


■ ロイド。森であったハンター。体格のいい重剣士

■ リリ。森であったハンター。微妙に露出の多い魔法使い。


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第39話 武器屋をのぞいてみる。見るだけ。


「ここが武器屋か…」


 とりあえず武器屋にやってきました。

 看板に剣と盾の絵が描かれていてなんとなくわかりやすい。

 そういえばここはどんな店でも施設でも看板に絵が描いてあるな。


「字を読める人があまり多くありませんから、字だけだと商売にならないんです」


 それはちょっとがっかり案件だな。偏見かもしれないが学がないというのはよくないことだと思う。

 高学歴が良いとは言わないが、ある程度の教育はないと秩序が保てないと思うんだよね。


 ネムちゃんと店に入ると店の中は狭かった。

 いや、店自体は大きいのだが商品が所狭しと置いてあって面積を圧迫している。


 剣があり、槍があり、斧があり、槌がある。

 丸い盾があり、四角くて大きい盾があり、ホームベースのような形の盾もある。

 しかもそれぞれにまたいろいろ違うものがある。

 まあゲームのように整然と言う訳にはいかないか。

 あれ、そういえば…


「鎧とか弓矢とかはないのかな?」


「鎧は防具屋ですね。弓矢は専門店があります。ここは手持ちの武器を扱う店です」


 盾って武器なの? と思ったのだが、ネムちゃんか盾は持つ武器と合わせて選ぶものだから武器屋にあるのだと教えてくれた。


 防具屋は金属や革の鎧。あと戦闘用のアンダーウエアーとか、鎧の上に着るサーコートとかを扱っているらしい。

 弓は矢と合わせて買うし大きさや強さも様々なので独立しているそうだ。

 なるほど。


 他にも鍛冶師が工房と一緒にやっている武器屋防具屋なども何件かあるらしい。

 ここはそういった所からいろいろな武器を仕入れ、あるいは中古品なども扱う総合武器屋であるようだ。


「武器などが欲しいときはこういった店で買うか、鍛冶師の工房で見繕うか、あとはオーダーメイドにするかです。

 いろいろな武器を試したいならこの町ではこの店が一番です」


 なるほどなるほど。

 確かにいろいろな武器が置いてある。


 それにランクもわかりやすい。

 一番安いものは十把一絡げで傘立てのでかいやつにさしてある。

 もう少しいいものになると一本ずつ立てかけてあって、さらにいいものは壁に飾るように展示してある。


 それが剣とか槍とかの種類ごとにコーナーを持っているようだ。


「しっかしいろいろあるなあ…」


 何というかここまでくると何を買っていいのかわからないレベルだ。

 だがほかの客を見るとみんな自分が使いたい武器は分かっているようで、種類。値段で範囲を決め、その中で気に入ったものを探しているらしい。

 俺のようにどの武器を使うかすらわかっていないものは…見当たらないな。


「さて、何を選ぶべきか…」


 とりあえず近くにあった大剣を手に取ってみる。ロイド君が使っていたような人の背丈ほどもある大剣だ。

 グレートソードというらしい。


 ここは狭いのであまりぶんぶんは振り回せないが、ゆっくりと自分の周りを旋回させてみる。


「うーん、結構振れるけど…」


 何かが違う。


「兄ちゃんなかなかやるじゃないか、グレートソードをお探しかい?」


「いや、そういうわけじゃないんだ。あまり武器は使ったことがなくてな…自分に何が合うのか…と現在考え中」


 話しかけてきたのはごつい感じのおっちゃんだ。背も高く、筋肉もすごい。

 油で汚れた革のエプロンをかけていて、ベルトには何種類かの工具がさしてある。間違いなく店の人だろう。


「驚いたな…グレートソードを軽々と振り回していて大剣士じゃないのかい? そりゃ大した力持ちだ。

 いや、そういうスキルを持っているんだな。

 だったら剣は一先ず見送った方がいい、力が強くなるスキルは確かに威力のある武器を扱えるようになるが、その分、細かいコントロールが効かなくなる。

 剣てのは刃筋を立ててやらんと威力が落ちるし剣も痛む。これはもう練習だ。このグレートソードでもそうだ。ある程度修業を積んでからにした方がいい」


 そういう知識は俺も持っている。オタクだからね。だからおっちゃんの言うことがまともなことは分かった。まあ、スキルに関してなどは的を外しているけどね。


「では、武器初心者の場合、どんな武器がいいですかね?」


「おっいい心がけだな。そうさな、武器を持つのが初めてなら最初は槌がいいぞ。あれなら刃筋など関係ない、意外と重量も高いしな、ほどほどのものでぶんなぐれば普通の敵なら対応できる。

 欠点は打撃に強い魔物だな。あいつらには鈍器は効かないからな、だがこんなのもある」


 おっちゃんはそういうとカウンターの向こう、きれいに飾られていてしかもかぎのかかった武器を見せてくれた。

 メイスと呼ばれるタイプの武器で長さはショートソードほど。

 頭はごつごつした金属の板を組み合わせたような構造で、殴ると同時に突き刺し、引き裂く攻撃ができるものだ。

 俺は魔力視でじっくり観察する。そして気づいた。

 これはあの地下施設の隔壁に使われていた材質と同じものが使われている。


「おお、気が付いたか。こいつはすごいものでな、なんとゴルディオンで作られているハンマーだ」


 あー…ゴルディオン…でハンマー…殴られると光になっちゃいそうだな…

 そもそも何なんだゴルディオンって…


「ふむ、いい質問だ。

 このゴルディオンはな魔鋼を使った合金の一種でな、魔鋼に金やなんやかやを混ぜて作るんだ」


「なんやかや?」


「うむ、まあ、基本は魔鋼と金だな、腐食に強くとても長持ちする。他にも色々混ぜられているんだが、その配合は作ったやつが秘伝にしていてな…まあ作る工房によって差があるのさ。

 こいつは王都の【パルパ工房】の作でな…まあなかなかの名品だ。

 ここらじゃなかなかお目にかかれないものなんだぜ」


 親父の鼻がひくひく膨らんでいる。


『また始まった…おやっさんの武器自慢』

『まあ、あれが生きがいのようなものだからな』


 あー…あまり違和感なく話してしまったが理由が分かった。こいつはマニアだ。

 それで妙なシンパシーが発生したんだな…うん、畑は違うが根は同類と見た。

 このタイプは…


「おやっさん。その武器が欲しいんだけどいくらするんだい?」


「何だと、これが欲しいだと…馬鹿言うな、これはいくら金を出されても売れねえ。こいつが欲しけりゃこれと同等以上の武器と交換だ」


 うん、わかりきっていた返事だ。そしておそらくそれ以上の武器がやってきたらそっちも欲しいとか言い出すに違いない。そんなんでよく武器屋とかやってられるな…

 これだからコレクターってのは…人のこと言えんけど。


 おやじはそそくさと武器を飾り棚に戻して鍵をかけた。

 これ以上は見るものもない。俺は最低限ということで中古の剣を一本買って店を出た。

 武器が全くないというのも問題だと思ったからだ。だからとりあえずありさえすればいい。


 攻撃力に関しては殴ればいいのだ。素手で。


 ◆・◆・◆


 さて防具をどうしようか? と考えた結果。とりあえず買わないことにした。

 はっきり言って防御力に関しては今着ているつなぎの方がずっと防御力が高そうなのだ。さすが古代の作業服。だったらもうこれでいいんじゃね?

 てなもんだ。


 後は旅に必要なあれやこれやだな。つまり鍋、釜、ヤカンなんかだ。まああればだけどね。お米があるんだから飯盒とかあるといいよな…

 ここら辺はネムちゃんと一緒に回って同じものを買えばいいでしょ。


 そんなことを考えながら歩いているとドワーフの人とすれ違った。

 別に俺は含むところなどないのだが、どうやら向こうにはあったようで、俺の腰の剣を一瞥して『ふん』と鼻で笑って通り過ぎていった。

 かなり感じが悪い。


「たぶん鍛冶師のドワーフだと思います。それも武器職人ですね…彼らはできの悪い剣などをとても嫌いますから…」


「あー、なるほど、いい加減な剣を持っていたから馬鹿にされたのか」


「はい、もう少しいいものを買った方がよかったんじゃないですか?」


「いや、いいさ、あそこにあったどんな武器より、俺が殴った方が攻撃力が高いから」


「ぷっ…そういえばそうですね。エルダーゴブリンの胸板を撃ちぬけるぐらいですから」


 そうそうそういうこと。


「にしてもやっぱりドワーフは鍛冶に一方(ひとかた)ならぬ思い入れがあるんだなあ…」


 多分そういうことなんだなあ…なんて思った。


「そうですね、ドワーフの種族特性として火に強い、石に強いというのがありますから」


 ん? 種族特性?


「はい、ドワーフですとかエルフですとか、種族的な加護を持っているんですよ。私たち獣族にもあります。

 ドワーフは火の声、石の声が聞こえるそうです。しかも火と土の加護を持っていて人族では使えない高温の炎か仕えて、やけどもしないそうです」


 そりゃすごい。


 石に関してもそういう特殊な感覚、能力が働くらしい。

 対してエルフの能力は主に森や風に関するものが多いらしい。


 しかしそういうことであれば彼らが鍛冶師に向いているのも納得できる。

 炎の温度というのは鍛冶仕事には直接影響するのだ。


 人間の歴史でいえば青銅器から鉄器への移り変わりがそれにあたる。大きく高温の炎を扱えるようになったから鉄器が普及したのだ。


「まあ、おれはドワーフじゃないからあまり関係ないかな?」


 鍛冶仕事なんて俺には関係ない。この時は本気でそう思っていた。

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