第30話 とりあえずこれで一段落

■ 鈴木真理雄。異世界に落っこちてきた。現在、異世界を探索中。

■ 〝あいつ〟無限炉の中で会った存在。真理雄に魔法を伝授した。

■ ネム。獣族の女の子、ものすごい美少女。白虎の特徴を持つ

■ ミルテア・大地母神ステルアの神官。ハーフエルフ。ものすごい巨乳。司祭様。


■ ロイド。森であったハンター。体格のいい重剣士

■ リリ。森であったハンター。微妙に露出のおおい魔法使い。

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 第30話 とりあえずこれで一段落 



「そうだ、マリオン君」


 部屋から出てすぐ俺たちはギルマスのセルジュさんに呼び止められた。いや、俺がか。

 セルジュさんのうろからはアレイシアさんもついてきている。

 なんだろう? と思っていたら。


「君のイヤリング、収納の宝具ではないかな? あの魔石もそれで持ってきたんだろう?」


 と声を潜めて告げられた。

 げげっ! なんでわかった?


「なに、以前同じようなものを見たことがあっただけさ、それは登録しておいた方がいい、アレイシアくん、あとを頼むよ」


「ええ、任せて」


 セルジュさんはすぐに部屋に戻って副ギルマスのロンダミスと話し始めた。

 いつの間にか依頼統括の人もやってきている。


「さっ、こっちにいらっしゃい。少し宝具について説明しましょう」


 アレイシアさんも小声でまるで誰かに聞かれたくないと思っているみたいな…って、ロンダミス氏か?


「与えられた環境の中だとそこそこ優秀なんだけど、すぐに余計なことを考えるから」

 

 以前にも宝具を持った冒険者から屁理屈をつけて宝具を取り上げようとしたことがあったらしい。

 もちろん報酬を払ってのことではあるんだが、報酬もかなり低め。ギルドのためになるならその方がいいという考え方の人らしい。


「自分の欲望に素直な人なのかな?」


「よく言えばね」


 ミルテアさんの表現は控えめだね。


「さて、じゃあ宝具の登録について話すわね。まずこれは高価な宝具アーティファクトや魔道具の所有者をギルドに登録してギルドで証明するシステムのことね。登録できるのは何でも」


 これは登記のようなものだった。

 宝具の特徴を調べて登録し、その所有者も併せて登録する。

 宝具は同じものがほとんどないのでそのまま登録すればいいし、魔道具に関しては登録番号みたいなものを刻印しておけば問題なく識別ができる。


 これをしておくと盗まれた時などに所有者が誰なのかギルドが証明してくれるわけだ。当然返還も請求できる。まあ手続き的に時間はかかるらしいが。


 しかし盗品なので見つからなことも多かったりする。


「なのに結構お金がかかるのよ。登録になんと金貨五枚」


 おお、五〇万円相当…結構高い…


「やっぱり何度聞いてもすごい高いわね~」


 ミルテアさんは同意見だ。でもネムちゃんはスルー。ひょっとしてネムちゃんていいとこの娘さんなのかな?


「確かに高いですよね。でねマリオン君のイヤリングって本当の古代魔道具ですよね。しかも誰もが欲しがる収納宝具。

 登録はしておくべきだと思うのよ。それはきっとばれるとトラブルを呼ぶから」


 話を聞くと収納の魔道具というのはそれなりに出回っているらしい。

 だが古代宝具は別格で珍しいものだそうだ。収納力が大きい。しかも大きなものもしまえる。しかもしまったものがほとんど劣化しない。


 商人や貴族でも喉から手が出るほど欲しがっている人もいるらしい。

 商人は商売のために。貴族は兵站のために。


 貴族などは無理やり売らせようなどという者もいると予測される。だが登録した宝具の売買にはギルドの立ち合いが必要で、結構チェックが厳しいので無理やりというのは難しくなるようだ。


 それでも盗んで隠されればどうしようもないが、それでも抑止力にはなる。

 まあ、そういうことならここは登録しておくべきだろう。

 とりあえず『しまうぞう君』と『AUG』だな。


 金貨一〇枚は結構でかいが、まとまった収入があったので楽に払える。よかった。


 これがなかったら寄ってくる悪党と切った張ったの大太刀回りとか?

 まあわからんけどね。


 その手の処理もあるのでアレイシアさんと一緒にカウンターに移動して手続きを済ませる。


 俺の冒険者証も無事完成していた。

 そしてやっぱりマリオン・スザキになっていた。

 もうマリオンでいい気がしている。


 そしてネムちゃんたちの獲物の処理も行なわれた。


 ネムちゃんたちの収入は『依頼・月光魔草を手に入れろ』で金貨三枚。

 ゴブリンの魔石×五四個で銀貨二枚、銅貨十八枚。

 一角ラビ×三で銀貨一枚銅貨十三枚。

 始祖雉×二で銅貨十五枚。

 ガモガモ×六で銀貨四枚。銅貨二〇枚。


 後学のために細かい値段を教えてもらいました。

 始祖雉はあまりおいしくないらしく、買取値段が安いそうな、逆にガモガモはお味が良くて羽毛も質が良く使い勝手が良いので結構高く買い取ってくれる。


 他にも薬草とか果物なんかも少しは取ったらしいがここら辺は生鮮品なので直接小売り店に持ち込むんだそうな。

 魔物素材でなければギルドもあまり細かいことは言わないらしい。


 お金をカバンにしまうふりをしながらしまうぞう君に収納。

 とりあえずこれでギルドでやることは終了か…


 後は…


 と思っていたらギルドの職員が出てきてでっかい張り紙を張り出した。

 かなり大きく、手書きのものだが色使いがなんか毒々しく妙に不安感をあおる。


「くそ―あいつら…何もわかっていない。今ここで強力な魔物の存在を公表すればギルドの職務に差しさわりが出るのに…」


 その張り紙を眺めていると後ろからぼそぼそと悪態をつく声が聞こえてくる。

 多分本人は気が付いていないのだろう。誰にも聞こえないつもりでいるのだ。だが周りの獣族の人たちの耳が動いているから…多分聞こえているな。


「しかしロンダミス様…今ここで注意を喚起せず被害が出てしまえばギルドの信用問題です」


「そんなことは分かっとる。だがすでにエルダーゴブリンは討伐されたのだ。しかも買取をせずにオークションにかけるだと…黙って買い取って転売すればどれだけ利益が出るか…」


「それもギルドの規約で決まったことですし、信用のためであれば…」


「馬鹿を言いなさい、冒険者なんぞ適当に金を与えておけば問題にならないよ。被害に関してもだ。冒険者は放っておけば勝手に増えていくんだ。多少被害が出てもその程度問題にならない。全体の損耗を考えれば誤差だよ。誤差。その程度のことでもしこの時期しか収穫できない月光アイテムを取り逃すことになれば、その方が被害が大きい。私のギルドが大きな損失を出すのだ…公表などせずに秘匿しておけばいいものを」


 なんか身もふたもない話だ。

 ロンダミスだからさっきの副長だろう。ある意味優秀といっていたが、こういうことか…このやり方ってうまく嵌っているとすごく効率がいいんだよね。実際。

 だけど一つ歯車が狂うと問題が噴出するし、組織の信用もガタガタになる。

 で大概このタイプはその手の責任を取らずに何とか責任逃れをしようとするんだ。

 こういうのを上に行かせちゃいけないんだが…地球でもね、普通にいるし…


 ただこいつはましな方だ。

 頭が悪い。


 周りで聞いていた獣族の人たちは仲間たちとひそひそ話している。

 これだけ聞いている人間がいれば逃げるのは無理だろうし、こいつ個人の信用も落ちるだろう。というか落ちるところまで落ちているかも。


 自分の悪だくみの証拠をあちこちに残してくれているという意味で、こいつは社会にやさしい迷惑野郎だ。


 さて、張り紙の方はなんて書いてあるのかな?

 読めないから読んでもらうしかないのだが…


「注意喚起の張り紙です。

 森の奥ここからラナ川を三日ほどさかのぼった位置にエルダーゴブリンに発生を確認。

 すでに討伐されるも安全が確保されたわけではないので注意されたし…

 ですね」


「立ち入り禁止とかにはならないんだね」


 その方が安全確実だと思うんだけど。


「そこらへんは自己責任だからね。

 ギルドとしてはどの位置にどんな魔物がいたか公表して、注意を喚起する以外にできることはないのよ」


「それでもこのギルドの反応はかなり早いです。

 普通は一日や二日は会議でぐだぐだするものですから」


 俺はさっきのロンダミスを思い出す。


「なるほど、あれが『グダグダ』か」


 ギルドは冒険者同士の互助組織として始まったもので、情報を公開して危険を知らせることはできても冒険者の行動を制限したりはできないらしい。というかしないらしい。

 冒険者の行動は自己責任。


 まあ、それが多くの人の危険につながるというのなら話は別なんだろうか、このぐらいは行くか行かないか、戦うか戦わないかを自分で判断しなさいということらしいね。

 しかしこうして速攻で注意喚起をしているのだから…結構いいところなのかな?

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