第24話 日本人だものお風呂ぐらい作るよね

■ 鈴木真理雄。異世界に落っこちてきた。現在、異世界を探索中。

■ 〝あいつ〟無限炉の中で会った存在。真理雄に魔法を伝授した。

■ ネム。獣族の女の子、ものすごい美少女。白虎の特徴を持つ

■ ミルテア・大地母神ステルアの神官。ハーフエルフ。ものすごい巨乳。司祭様。


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 第24話 日本人だものお風呂ぐらい作るよね



 翌日。ロイド達パーティーはここに拠点を設けて周辺を探査くすべく活動を開始した。森の異変は冒険者にとって重大事だし、冒険者同士の連携も重要なのだそうだ。


 といってもテントしっかりと固定して周辺に炊事の環境を作るぐらいなのだけどね。

 リリさんが収納の魔道具を持っていてかなりいろいろ持ってきていたらしいので快適に過ごせると彼らは喜んでいた。

 やっていることはキャンプだよね。


 冒険者って大変そう。


 俺達は彼等と一緒に朝食を採った後、ターリの町に向かって出発した。

 彼等とは一先ずここでお別れだ。


 そういえば彼等のチーム名を聞かなかったな…まあいいか。


 町まではあと一泊する必要があるようで、考えてみれば森の中、三日も歩く場所まで探索にでるのだから冒険者という仕事も本当に大変である。


 それでも俺には冒険者一択しかないだろうけどね。


 どんな世界でも仕事はしなくてはならない。

 人は生活して行かなくてはならない。

 彼女たちがここにいるのもその故なのだ。


 その日も一日話をしながら歩き、獲物を見つけたら獲る。その繰り返しだった。


 通算で一角ラビが七羽。

 始祖雉が四羽。

 ガモガモ(水鳥)が十三羽と結構な稼ぎになった。


「凄いわねえ…その宝具は…」

「はい、凄い威力です」


 ビームAUGのおかげだね。


 食べるわけではないので獲物は血抜きをし、内臓を抜き。冷やして俺の分は俺の収納に、彼女たちの取り分は彼女たちの収納鞄にしまわれていく。


 この収納鞄だがわりと一般的なアイテムらしい。


 形は巾着型が多く、彼女たちの持っているものは肩に担げるぐらいの大きさ。ずんぐりむっくりしたナップザックという感じのものだ。

 そんなサイズなのに内部が広くなっていて大きさとしては三m四方ぐらいの収納力がある。


 巾着という形もいい。

 このタイプの収納は口をくぐれないものはしまえないというルールがあるそうなのだが、巾着型というのか以外と口が大きいし、大きくできる。彼女たちのものでも猪ぐらいなら楽に入るのだ。


 それなりにお高いアイテムなのだが、百花繚乱ぐらいに続いているパーティーならば持っていても不思議はないんだそうだ。


 この巾着型の魔法道具は割と普通に売られているらしい。品薄で製作が追い付かないところがあって順番待ちは当然らしいが、お値段的には金貨五〇枚ぐらいだせば手に入るもののようだ。

 

 さてこの金貨五〇枚だがどのぐらいの価値かというと五〇〇万円ぐらいではないかと考えている。


 この世界のお金は主に四種類。【金貨】【銀貨】【銅貨】【銭貨】となる。


 金貨は銀貨一〇枚。

 銀貨は銅貨二五枚

 銅貨は銭貨二五枚。


 これが交換レートだ。

 

 なかなか複雑。

 なので銀貨に注目してみる。

 この銀貨一枚で大体宿屋暮らしで二日分ぐらいらしい。


 なので一万円と仮定してみる。

 まあ仮定で、どうせ食べ物の価値や物の価値が地球と同じなんて訳はないのでとりあえずでいいのだ。


 でそうすると銅貨は四〇〇円ぐらいだ。


 普通に飯屋に入って飯を食うと大体定食で銅貨一枚ぐらいらしい。

 ちょっといいもので銅貨二枚とか、すごくいいもので銅貨四、五枚とか…


 宿屋だと一泊銅貨一〇枚から。四〇〇〇円ぐらいかな。

 高級宿は銀貨二枚。つまり二〇〇〇〇円ぐらいから。


 ふむ、まあ、前述の通りとりあえずの目安だからね、こんな感じでいいだろう。

 全く指針がないとお金も使えんしね。


 ◆・◆・◆


 一日歩いて日が暮れる。


 この世界の人達は基本“目”がいい。

 多分視力も三とか、四とかあるんじゃないか? なんでも視力が七あると昼間でも星が見えるんだとか。

 なので多少暗くなっても平気な人達だったりする。


 つまりたぶんここにはテレビとかはないんだな。


 さらにネムちゃんなどは【狩猟眼】とか【夜視覚】のスキルで夜でも問題なく目が見える。

 基本暗くても関係ないのだ。


 異世界って異世界人の方がチートじゃね? なんて思う。

 運動能力も高くて歩くのを苦にしないんだよね。


 俺は魔力による知覚があるし、魔力回路で身体能力が上がっているから何とかなるけど、ひ弱な現代人に対応できる世界とは思えん。

 異世界転移、なめてたわ。


 さて、異世界ではあるが日本人として譲れないものがある。

 それはお風呂、きっとお風呂。

 お風呂入りたい。


 この世界にも風呂はあるという。ただ個人風呂というのは珍しく、公衆浴場があると言う形らしい。

 日本の銭湯やローマのテルマエみたいなものなのかな?

 だが毎日入るわけではない。

 一週間に一回とか、二回とか。


 だが日本人にそんな生活が我慢できるだろうか? いいやできない!


 日本人は朝寝、朝酒、朝風呂が大好きで身を持ち崩すヤツもいるのだ。それほど風呂好きなのだ。(拡大解釈)


 なのでお風呂が欲しいなあ…なんて思っていたら目の前にでかい木が現れた。

 直径三m、高さ二〇m越え巨木だ。

 これくりぬいたらお風呂にならんか?

 なりそうな気がする。

 試してみよう。


「これ切っちゃっていいですかね?」


「えっ、その大きいのですか? それ石の木ですよ」


 だから何?

 なんて角を立てるようなことは言わない。思うけど。もうちょっと説明プリーズ。


 俺が首をかしげていたら説明してくれた。


 この木は『石の木』と呼ばれる非常に堅い木で、武器の柄や、場合によっては盾に使われるほど丈夫なものらしい。

 硬くて軽くて(と言っても金属に比べれば)とってもしなやか。


 当然切るのも一苦労で、木こり集団が偶にみんなでプロジェクトを組んで切りに来るらしい。


 思わず歌い出したくなるような木だね。


 だけどいけると思うんだよな。


 試しに高さ三m辺りのところに水平に平らな板をイメージする。

 そこに魔力を流し込んで…すぱっと…


「切れないねえ…」


 やり方は間違ってないと思う。


 魔力というのはある程度塊になると互いに作用し、力場を発生させる。

 これを利用すればプレスの型としても使えるし、素手で魔物をぶち抜くこともできる。

 しかも物の中で実体化させることもできるのは分かっている。(地面を切りぬいた時の方法だ)


 だが失敗した。なぜだ?


 もう一度やってみよう。


 魔力を流そうとしても木の表面に壁があるような感じで力がうまく通っていかない…

 なんだろう。変な感覚だ。

 だが諦めるのは嫌だね。


「そうだ、あれを使おう。謎ナイフ~!」


 ファンファーレが無いのが残念だ。


 刃渡り二十五cm程のナイフだがこれなら簡単に切り込みが入ると思う。切り込みが入ればそこをとっかかりに何とかなるかも知れない。

 しっかし、刃も付いてないのになんで切れるんだこれ?


 俺は魔力を流そうとしているそこにナイフを突き立てた。案の定なんの抵抗もなくすかっと刺さって…

 それと同時に“ぱんっ”という音がして木が切断された。


「おおうっ」


 いきなり力場が顕在化したのだ。そして木を切断というか分割したのだ。それはもうすっぱりと。


 巨木がメキメキと軋み音をたてて倒れていく。

 メキメキメキメキメキ…バサバサバサバサ…ズッズゥゥゥン。


「あー…世の中不思議なことってあるよな」


 うしろでは美女と美少女があっけら取られていた。


 ◆・◆・◆


 そこからはなんとなくコツがつかめた。


 いきなりだが電気の話をしよう。

 人間の体というのは実は電気を通しやすい作りになっている。


 まあ考えてみれば脳からでる電気信号で全身がコントロールさているのだから当然といえば当然だ。

 ものすごく効率的に電気が流れるのだ。


 だが、世界には結構電気的なものが存在してる。

 つまりそのままでは安心して暮らせないのだ。感電してしまう。

 だから人間の皮膚は強い電気抵抗を持っている。

 電気を弾いて内部に入れないようにする機能があるのだ。


 だから人間は電気に触れても簡単には感電しない。


 ところが体内に直接流したり、あるいは皮膚を水で濡らすなどするとこの電気抵抗は激減する。役に立たなくなる。

 人間は簡単に感電し、死んでしまう様になる。


 良くミステリードラマでお風呂でドライヤーで感電ビリビリというのはそういう意味なのだ。

 ちなみにドライヤーでビリビリというのはアメリカから入ってきた話ね。日本の一〇〇ボルト電流では感電『死』までは行かないんだってさ。


 まあ、何が言いたいかというと、俺は魔力というものにも魔力抵抗というようなものがあるのではないか? そう考えたのだ。


 どんな生き物も自分の魔力以外の魔力を表面、あるいは界面と言っても良いかもしれないが、そこで弾く性質があるのだ。と思う。

 だから地中などには簡単に力場を構築できたが樹木にはできなかった。

 表面で弾かれたからだ。


 そこでナイフを差し込んだ。


 すると界面が壊れ、中に魔力が浸透する環境ができた。

 だから力場の板が実体化し、木を分断したのだ。


 と、こう考えることができる。

 まあおいおい検証していこう。

 今肝心なのは木を加工することができる様になったと言う事だ。


 そしてこの推測を元に切り株を根から切り離す。

 地面すれすれに一枚の板をイメージし、魔力を流す。やはり弾かれる。だがそれに合わせてナイフを刺してやると…


 ぱんっ


 と音がして切り株が丸太に変身した。


「よし、推測どおり」


 これで素材はOK。


 後は余分なところを切除していく。


 まず一〇cmほどの幅を残して内部をくりぬく。深さは二m弱だ。底の厚さ一m強のコップ型になった。

 さて次に壁になっている部分を切り取る。四分の一ぐらいの幅で切り取る。

 これが出入り口になる。

 

 これで三方向を壁で囲まれた幅三m弱の小部屋ができあがる。

 床になっている部分の半分ほどをさらに六十cmほどくりぬくと…

 あら不思議。立派なお風呂の完成だ。


 余った木材は全て収納。


「マーベラス」


 美少女と美女は興味津々で俺を見ている。

 なにか不思議なものを見る目つきだね。

 いやん恥ずかしい。

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