第15話 初異世界人、そしてゴブリン殲滅

■ 鈴木真理雄。異世界に落っこちてきた。現在道を模索中。

■〝彼〟or〝あいつ〟無限炉の中で会った《なにか》。真理雄に魔法を伝授。


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 第15話 初異世界人、そしてゴブリン殲滅



「うげっ、気持ち悪い」


 川の上を滑るように移動し、その流されてくる存在ものを引き上げた。

 最初は人間かと思ったのだがどうも違う。


 緑色で角があって、小さい。一三〇センチぐらいか…

 耳と鼻が大きく、醜悪。すぐに思い浮かぶのはゴブリンという名前だ。


「まさかこれがこの世界の人間じゃないよな…」


 一瞬心配になったが地下で手に入れた服から考えても、“あいつ”から聞いた話からしてもこの世界の人間は俺とそう大きくは違わないはずだ。

 であればやはりこれは魔物だろう。


 本当にゴブリンなのかも知れない。


 なかなかに醜悪な顔で、なぜか股間のイチモツだけがやたら大きい。

 なんかいやーんな感じだなあ…


 そしてその死体には明らかな刀傷か付いている。

 と言う事はこの上流で刃物を使うような存在とこの魔物が戦っていると言うことだ。


「この世界の人間かも知れない…」


 ひょっとしたら『初異世界人』である。

 俺は川面を蹴って跳ねるように上流に向かった。


 ◆・◆・◆


 しばらくすると案の定、戦闘の声や音が聞こえてきた。


 いったん大きく飛び上がって上から接近。木の梢に隠れながらさらに接近する。

 そこでは二人の人間と多数のゴブリンが戦闘を繰り広げていた。


 いや、人間は五人だったみたいだが二人しか残っていないのだ。


 一人はずたぼろに切り裂かれて地面に倒れている。


 後の二人はゴブリンに集られ強姦されている真っ最中だ。

 …いや、この二人も死んでいる。

 なぶり殺しにされたのだろうか?

 そして死んだ後も多数のゴブリンにありとあらゆる辱めを受けている。


 生きている二人はまだ果敢に戦っていた。


 ゴブリンの方は先ほど見た標準サイズが三〇匹ほど。死んでいるが二〇匹ほどだ。

 その他に人間サイズの大きいやつが三匹。結構強そうだ。

 そして人間の倍はありそうなごついのが一匹。これ怪獣じゃね?


 人間の方は白と緑のローブを着た神官風の女性がいる。

 頭に大きな帽子を被り、手には錫杖のような杖を持っている。

 ローブは白が基調で緑の糸で刺繍が施されている。大地から延びる蔓草とそれによって描き出される紋様と言うところか。


 髪の色は金色で目はエメラルド。ものすごく胸が大きいのが印象的だ。

 うん、巨乳美女。二〇代半ばと言うところだろう。


 もう一人はなんということであろうか、あろう事か獣人というべき人だった。


 年の頃は十六、七。フワフワウエーブの白い髪に白い猫のようなシッポ。目の色は優しい赤色でけぶるような美少女だ。

 しっかりとした作りの上着と膝丈ぐらいのスカート、革のブーツを履いてスカートを翻し縦横無尽に駆け回りゴブリンを切り倒している。

 この娘もスタイルはいいね、小柄だけどふかふか。揺れ揺れ。

 

 神官の人がバリヤのようなものをはり、そこから獣人の娘さんが飛び出して戦闘。危なくなるとバリア内に戻って回復。という戦いかたでゴブリンの数を減らしている。


 だが劣勢の感は否めないな。数が違いすぎるのだ。


「ネムちゃん…まだいける?」


 神官の女の人が紡ぐ声もかすれている。かなり疲弊しているみたいだ。


「はい、大丈夫です。というか諦めるという選択肢は無いと思いますよ。諦めたら巣穴に連れ込まれて犯され続けるだけですから…

 わたしゴブリンの子供を産み続けるなんて絶対に嫌です」


 そういう獣人の娘さんも肩で息をしている。

 気合いは十分だが体力が限界なんだろう。


「そうね。私もまっぴらだわ。諦めずに頑張りましょう」


 二人は励まし合って気合いを入れる。

 悲壮な決意という感じで申し訳ないのだが、それを見た俺は少し安心していた。


 やはり人間はいたのだ。と言う思いと、幸運なことに言葉が通じるという安心感だ。彼女たちの会話は普通に聞き取れる。

 となればこの子達を助けなくてはいけない。


 神官さんのバリアはフィルターのような機能があるようで獣人の娘さんが帰ってくると素通りできるのにゴブリンは境界で苦しんで退いている。

 俺の目で見ると後ろにある木を中心にして円形の魔法陣が広がっていて、その魔法陣からきれいな光が立ち上っているように見える。その球形の範囲がゴブリンの入ってこれない安全地帯。つまりバリアではなく結界というやつなのだろう。


 にしてもやっぱりゴブリンなんだなこいつら。


 さて、問題は俺が通れるかどうかだが…


 俺は空中を移動して彼女たちがよりどころとしている大きな木にとりつく。

 うん、エアカーテンを押しのけたような感じがあったが問題なく結界の中にはいれた。

 よし、この二人を助けるか。


 俺は獣人の娘さんが戻ったタイミングで重力制御点を飛ばして二人を捕まえ木の上にすくい上げた。俺のいる位置は高さ一〇メートルもある梢の上だからまず安全だろう。


「ひゃっ」

「いやっー!」


 いきなり自分の体が宙にういたらそりゃ吃驚するよね。

 俺は二人を回収して抱き上げ、木の幹に掴まらせようとする。


 実にやわらかくて良い感触だ。


 獣人の子はかなり冷静で俺をみて驚きはしたが特に暴れるようなことはなく。俺の指示に従って木の幹にしっかりと掴まった。

 だが神官の女の人はかなりパニックを起こしている。


「いや、いやー、犯される~。助けて~」


 涙目でぱにくっている。

 うん、これは仕方がない。

 仕方がないのだ。


 俺は彼女のお尻を思い切りたたいた。


 ぺちーん。といい音がする。


「ひゃう!」


「おっ、やっと見てくれた。ほら、木に掴まれ」


 俺は彼女を木に幹に押し付けると先に掴まっていた獣人の娘さんがサポートしてくれて。しっかりと安定したようだった。もう心配は無いだろう。


 しかし手に残るお胸の感触はすごかった。スイカップではないがメロンはあったな。

 すごい破壊力だ。

 うん。


「さて」


 俺は木の枝を進む。重力制御のサポートがある俺は足場に不安がない。細い枝の上も平気で歩いて行く。

 そして進んだ先で掌のショートカットからライフルを取り出すとゴブリンに狙いをつけた。


 っぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱっ!


 実際のアサルトライフルは毎分七〇〇発から九〇〇発ぐらいらしいが、これは電動エアガン(元)なので毎分一二〇〇発に及ぶ連射速度を持っている。

 それは魔力駆動に変質しても変わっていなかった。多分。しかも銃弾はエネルギーパックなので弾切れもないと来ている。

 いや、使えば減るんだが使う尻から俺の魔力で回復している。

 撃ち放題だ。


 そしてゴブリン(並)を打ち抜くぐらいの威力はあるらしい。

 あっという間に蜂の巣になってバタバタと穴だらけの死体が積み上がる。


 枝の陰であろうとも魔力視を持つ俺が見逃すことはない。俺は枝の上を渡り歩き下でうごめくゴブリンを射殺していった。

 

 その光景に大きいゴブリンが怒って突進してくるがそいつらが木にたどり着くまえにゴブリン(並)は全滅した。


 そして木に登ってこようとするゴブリン(大)。

 だが銃を持つ相手にそれはどうなんだろう?


 木の幹にしがみついて登ってくるところを真上からビームの雨をたたき込む。

 こいつらはそれなりに丈夫で、ゴブリン(並)みよりも持ちこたえたが顔面に何百発ものビームをたたき込まれればひとたまりもない。


 俺が加勢してからわずかな時間でゴブリンは全滅した。

 やたらでかいやつを残して。


「す…すごい」


 後から聞こえるのはどちらの声だったろうか。まあとりあえずつかみはOKというやつだ。


 だが簡単なのはここまでだった。


 特大ゴブリンはどっしりと構えてこちらを睨んでいる。手下がやられたのも気にしていないのだろうか…

 俺は当然そいつにもビームをたたき込むがたいして効果を発揮することなく砕け散っていく。

 確かに当たり表面を穿つが致命傷には程遠い。そしてこの巨大ゴブリンは多少の傷など気にしないらしい。

 ほとんど豆鉄砲扱いだ。


「丈夫なやつめ」


 さてどうするか。

 そんな事を考えていたらあっという間に特大ゴブリンが突進してきて木に体当たり。

 ずどおぉぉぉんと音がして木が大きく揺れる。


「きゃーっ」

「ひっ」


 俺は慌てて落ちそうになった二人を支える。

 手が嬉しいところに触れたのは事故です。事故。


 その証拠に俺はさっと手を放し、なんの未練もなく断腸の思いで(未練たらたらでした)下に降りた。


『おそらくこの世界はあんなのがごろごろいる世界なんだな…そうでなかったらこんなところで女の子が襲われているはずもない。

 であればあいつがどの程度の強さなのか確かめなくてはならない。

 まっ、危なくなったら跳んで逃げりゃいいのさ』


 あの二人をかっさらって空に逃げるぐらいは簡単なことだ。

 どっちに逃げれば良いのかはあの二人に聞けばいいわけだしね。


 木から飛び、大きく離れたところに着地して特大ゴブリンに向き直る。


 さあ、第二ラウンドの始まりだ。


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