第6話 神の龍

※ 鈴木真理雄。主人公。異世界に落っこちる。あだ名はマリオン。

※ 〝あいつ〟〝彼〟長年封じ込められていた半神霊的存在。よくわからない存在。


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 第六話 神の龍



「神の龍…という感じかな…いや…」


 それはまさに龍だった。日本式の長い胴を持った龍だ。

 台座を中心にしてとぐろを巻いている。


 全身を覆う鱗は透き通って光を屈折させ、まるでダイヤモンドのように輝き、肩から生える三対の巨大な翼はやはり透き通り宝石のように七色に彩られている。

 腕も三対あって人の腕のような構造をしているがあるのは肘から先だけで、宙に浮いている。つまり体につながっていないのだ。

 そして六枚の凸レンズのような形の飛翔体が彼の周りをゆっくりと回っている。


 確かに龍なのだが、いや、龍など見たことがないから分からないが、龍という見た目と同時に神のような存在感を感じる。

 例えば雄大な大自然の中で絶景に感動するような厳かで嬉しい感覚だ。


 大きさは見上げるほどでビシビシとものすごい力を感じる。これは多分すごい存在だと誰でもわかるだろう。


『はははっ、友にそのように言われると気恥ずかしいな。だが嬉しいよ』

「うん」


 やり遂げたのだという喜びが湧き上がってくる。

 そう、やり遂げたのだ。俺達は。


『約束通り、友をこの部屋から外に転送しよう。吾は空間を司る故にそれもまたたやすい。だがその前に友に教えねばならぬことがある』


『気づいているだろうか、自身の中を流れる魔力に』


 そう言われてハッとした。

 魔力というのは意識すれば感じ取れる存在ものでそのための訓練をあれやこれやとひたすらにやってきたのだ。自分の魔力の流れは手に取るように分かる。だが、その感じが今までと違っている。


 今まで魔力は呼吸と共に外から入ってきて、あるいは皮膚から浸み込んで来て、それが丹田の所で練り上げられる感じだったのだが、今は体の奥から湧いてくるような感じがある。

 それに触れた感じが今までよりもずっと濃度が上がっているような…


『うむ、良い感性だ。それは吾の力を『源理力』を大量に浴びすぎたせいだな、魔力回路が変質してしまったのだ』


 源理力というのは世界の根源的な力であるという。世界そのものの生命だ。


 魔力というのはこの源理力が下位のエネルギーにシフトした一つの形だそうだ。


 “彼”はこの源理力とともに存在する獣だそうで、それを魔力に変換できる。


 世界に力として振るうためには魔力という形にする必要があるのだそうだ。


 この施設は彼の特性を利用して世界から無尽蔵の魔力をくみ上げるための施設なのだ。


 だが彼の力は本来は源理力だ、力が解放されれば源理力がまた解放される。


 そしてこの炉の中にいた俺も彼の源理力を大量に浴びてしまった。


『そのために友の中に源理力の【核】と呼ぶべきものが形成されてしまったようだ。源理力の核だから源理核という所か、これは世界の欠片だ。源理力の湧き出す力の泉のようなものだ。

 今、友は外から魔力を取り込んで練っているのではなく吾と同じように源理核から湧き出す力を変換して魔力を得ている。

 

 友の中にある魔力回路を流れているのは生成された魔力ではなく源理力ということになる。だがまあ健康への悪影響はないと思うぞ』


 つまり魔力が極端に増えて、源理力のおかげで体も良好と…

 ならいいのかな?

 いや、良くなかったとしてもどうしようもないしな。


『うむ、その前向きなところは長所だぞ。ただいくつか注意点がある。まず友は【権能】を持つに至った。吾と同じものだ。とりあえずは重力操作と考えればいいだろう。

 なぜなら源理力というのは世界を支え動かす力だからだ。

 つまり源理力を持つということは司る事象がおのずから追随するということである』


『魔法などとはちがい、そのものを自分の手足のように動かせるようになる。これを権能というのだ』


 魔法というのはそこにあるエネルギーに『こうありなさい』という命名を撃ちこむことで事象に干渉している。だが源理力はその司る事象そのものにちょせつ干渉できる力だそうだ。

 自分の手や足を動かすようにそれを動かせる。それが権能。

 そして俺の場合、その事象とは『重力』であると??


 それはものすごいことなのでは?


『逆に言えば重力が操れるようになったというだけのことでもある』


「ああ、そうか…魔法があるんだからそう言うのがあってもおかしくはないか…だが便利そうだな」


『うむ、魔力消費がない、つまりタダだからな』


 おおー。それは素晴らしい。『タダ』なんて魅力的な!


『使いこなすには練習が必要だ。理解が進めばできることは増えていく。なれてくればより自然にできるようになる。

 …しかしこれも友のたゆまぬ努力のたまものだな。友の中に魔力回路がしっかりと構築されていたから対応できたのだ。でなかったら順応できずに体が分解していたかもしれない』


「おいおい、物騒な話だな」


『うむ、吾も初めてのことなのでなまったく思い至らなかった。友は運がいい、また一歩先に進んだのだ。例えばこんなこともできるようになる…と思うぞ』


 そう言って彼が見せてくれたのは『龍気鱗』と呼ばれる“技”だった。魔法とは違うようだ。


 自分の体の外側にエネルギーで出来た鎧を構築するものだ。


 竜が妙にメカニカルでカッコイイ装備を付けた感じだな。オプションも強化されている。


 たぶん魔力が見えない人でもはっきり見えてしまうぐらいの高密度の力で出来ている。


『これは強固な鎧であり、同時に強力な剣でもある。源理核を持つ今の魔力回路ならこのぐらいの処理はできるようになる。頑張ってみよ』


 うん、これはかっこいい。

 だが難しそうではあるな。


『そこはほれ、お得意の継続は力なりだ』

「なるほど」


 アハハハハと笑い合う。


 しかしそうか、俺は重力操作ができるようになったのか…


 重力による攻撃、浪漫だ。それ以外の何物でもない。

 ブラックホール×××××とか、プレッシャー○○○とか、グラビトン▽▽▽▽とか…


 ああ…オタク心が…治ったはずの中二病が…

 まあ、あれは完治はしないんだけどね。


『あとはいくつか贈り物をしよう。今の友ならできるだうろ」


「え?」


 まだなんかもらえるらしい。

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