第22話 本当の自分

 俺は昔から『いい子』と言われてきた。

実際、俺はいい子としての努力を惜しまなかった。いい子でなければ認めてもらえないからだ。


俺の一番古い記憶は辛いものだった。

理由はわからないのだが、父親に殴られている記憶だ。


まだ俺が4歳位の時だ。


弟が生まれて母が病院に入院していたことは覚えている。


家には父と俺のふたりきりで、理由は忘れてしまったが、父にひどく殴られている記憶だ。


それが関係しているかどうかはわからないが、俺はなるべく両親の機嫌を損なわないよう日々、気を付けながら生活していた。


小学生になった俺は、どうも算数というものを好きになれなかった。


これでは両親の機嫌を損ねかねない。


考えた結果、俺は自分の得意分野を極めることにした。


俺は走るのが得意だった。


だから、『勉強は苦手だけど、体を動かすのが大好きな子供らしい少年。』になろうと決めた。


あの時から、俺はずっと演じてきたのだろう。


そのうちに本当の自分と、いうものがわからなくなったのだろう。


燃料切れだ。



弟がいなかったら俺の人生は、もう少し違ったものになっていただろうか。




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