第7話 僕はあの子のこと何も知らないんだよな
僕はリビングのソファーに座って、彩がくるのを待っていた。彼女がいつ来てもいいようにテーブルには塗り絵と色鉛筆、コピー用紙をスタンバイしていた。
その間、暇を潰すためテレビをつけた。
そういえば、、、。
僕は兄の住む町にある高校に通っている女子高生が行方不明になっていることを思い出した。
今の時間、ニュース番組はやっているだろうか。
しかし、どこの局でもニュースはやっていなかった。
そこでシゲルはケータイ電話のインターネットで調べてみることにした。
なかなか見つからない、、、。
そうだ、SNSなら誰かが呟いているかもしれない。
“◯◯高校” “女子高生” “行方不明”
検索、、、。
あった。
◯月◯日投稿
ユーザーネーム:たぬき娘
あっちゃんは、まだ見つからない。
元気そうにしてたのに、、、。
ケータイも繋がらないし、、、。
無事でありますように。
早く元気なあっちゃんに会いたいよ。
いいね 26.846
◯月◯日投稿
ユーザーネーム:ぱっつん坊や
前日まで普通だったよ。
その日は部活ないって言ってたから、すぐに帰ったんじゃないかな。わかんないけど。
いいね:21.662
僕はいくつかの書き込みを読んでみたが、有力な手がかりはないように思った。
「なにを見ている?」
彩の声で我に帰った。
「ん、いや、なんでもないよ。」
彩は「ふーん」と言うと、さっそく塗り絵をチェックした。
「すごいではないか!明らかに上達しているぞ。細かい部分もはみ出さずきれいに塗れているぞ!」
僕は照れてしまった。とても嬉しかった。
「今まで苦手意識が強すぎたみたいだね。
それに、体調が良くなったら頭の回転ももとに戻った感じがするんだ。」
彩は今までで一番の笑顔で言った。
「それは本当に良かったな!」
僕は照れ笑いしながら鼻をこすった。
彩の美しい海のような色のロングヘアは艶々と輝き、凛とした印象の美しい目元には、やはりさくら色のアイシャドウが塗られていた。
着ているカラフルなドレスも新品のようにシワ1つなかった。
「ねえ、彩の世界ってどんなところなの?」
彩は少し難しい顔をしたが、それは不快感を表現しているのではなさそうだった。
僕には彩が考えているように見えた。
「別の世界など本当は存在しないかもしれないぞ。もしくは“世界”ではなく、何か別のものなのかもしれない。」
彩の言う“何か別のもの”とは何かを考えてみた。
しかし僕にはわからなかった。
僕は彩のことを何一つ知らないのだ。
彩のペディキュアは今日も完璧だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます