盲目
「何で僕と友達になってくれたの?」
僕はついに耐えかねて彼女にそう云った。彼女は顎に手をやって、暫くしてから答える。「分からない」
僕はため息を押し殺し、公園のベンチで項垂れた。本当は理解していたのに、人間常に合理的とはいかないものだ。知らなくていい事を知ろうとするし、知っている事を余計に知ろうとする。僕の問いの答えは彼女にない。当たり前だ。それは僕だけが理解出来る領域にあるのだから。
昨日は雨が降っていた為、どうも蒸し暑かった。公園にも疎らだが水溜りがあって、その内一つは僕の目の前にあった。そこには青い空とむさ苦しい日照りと、この世のものとは思えない人間の顔があった。
通常、この公園には多くの人が押し寄せる。しかし今は、葉が水面に落ちた音さえ気掛かりになる程、静寂に支配されていた。僕らがここを訪れる時は決まってそう。いや、僕、か。
「今日も静かね」
彼女はそんな僕の心境も知らずに、銀のロングヘアーを指で弄りながら云った。
もしも明日彼女の目が見えるようになったとして、彼女はまだ僕を望むだろうか。胸の中には、どす黒い感情が渦を巻いていて胃を圧迫している。
今僕は、自分の幸せと彼女の幸せの丁度境界線上に屯ろしていた。
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