洗濯機

 思いが募って、募り切っても吐き出されることをしらない言葉は悪臭を放ち、かごの中で一杯に、山積みになっていた。

 「あんたには口がついてないの?」

 そういわれ、私は重い籠を持ち上げると、一人の人間分を処理出来るとはとても思えない、コンパクトな洗濯機に中身をぶちまける。ボタンを押すと、汚い音を発して、ごろごろと中身を回転させ始めた。当然、詰まり切ってない。天井の扉は開け放たれたままだから、びちゃびちゃと中の水は外に跳ねていた。

 幾つも跳ねたうち、そのどれかが私の頬にぶつかって、涙のように顎へと流れた。私は笑う、小さく、誰にも聞かれないように。

 洗濯機の音が激しくなってくると、その音に身構える。処理しきれない量を入れたから、その報いが私に向かおうとしているのだ。

 私は以前こうして、濡れて重くなった自分自身の言葉に圧し掛かられたことを思い出して、足を竦ませてしまった。

 逃げればいい。誰かがそういった気がしたが、自分が溜め込んだ言葉の行く末を誰かに任せるわけにもいかず、私は今日も今日とて、自分の言葉に羽交い絞めにされていた。

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