碧き詩集

碧木 愁

誇り

 分かっている。このかび臭い部屋から飛び出さないことには何も成しえないことは。だが、今の僕はといえば扉の前に立つと腰を抜かしてしまうばかりで、とても外なんて歩けはしない。

 誰だ、僕をこんな人間にしたのは。そう思いたい、思うのもつかの間、襲い来るはもう一人の自分。人のせいにするなと、自分さえ敵に回してしまっているなら余計世話ないなって嘲笑ってみる。

 突如インターホンがなって尻もちをつく刹那、尻が燃えたかのような感覚と共に、埃が舞った。だがそれさえも僕にとっては生きる為の何かでしかない。吸いなれた悪臭が生活に必然へと変わるように、僕の日常には常に埃が付きまとっていた。

 もう咳き込むこともなくなったぜ。咳をするのなんて勿体ないから。

 君にとっての幸福が、僕にとっての害になるように。君が吐き出したものが、僕にとって大切だったりするんだ。

 何もない人間には、それなりに何かで胸の中を蓄えなきゃいけない。そう、僕はまだ自分自身の誇りを充電しきれてないんだ。

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