第469話 文化祭に向けて始動

昼休みは、静かに終わり

午後の授業を真面目に受けて、放課後になった


担任が教室に入ってきて、黒板に

メインキャスト・A、四季島

と書く


続けて、登場人物を数人書きだしていく


思ったより登場人物は多いんだな……

そして、事前に決めてあったのかどんどん役者が決まっていく

これ……もしかして、俺待ちだったの?

だとしたら、滅茶苦茶申し訳ないんだけど⁉


担任「あ~、まずは役者組と裏方組に分かれろ。それで裏方組で裁縫とかできるやつは衣装を担当してくれ、それ以外のやつは小道具や大道具の準備だ」

裁縫が得意だという男女数名が役者組の方へ合流して、それ以外のやつら(BやD)は工作道具を用意したり何が必要か確認したりと作業を始めた


担任「それじゃ、役者組はこっち付いて来いよ」

教室を出てどこかへ向かう担任に付いて行くと、少し離れた空き教室の中へ入って行く


担任「全員揃ったな?それじゃ、まずはナレーションとメインキャストの2人だ」

ナレーションって、モノローグとか天の声とか

そういうのか?


堀北「はい」

え⁉

堀北さんがナレーションやるの⁉


担任「そっちの隅で出だしの練習始めておいてくれ」

なんか、俺達に対してはテキトーじゃない?


四季島「はい」

俺と四季島と堀北さんの3人は教室の隅で台本を手に集まる


担任「それ以外の役者組は採寸を先に終わらせておけ」

なんか、普段やる気ないのに……今日はやたら気合入ってないか?

俺達以外に、だけど


俺「先生、どうしちゃったんだ……?」


堀北「あ、そういえば知らないのよね。先生って大学の頃演劇サークルやってたらしいのよ」

演劇サークル?


俺「それで、今回こんな張り切ってるの?」


堀北「そうみたい。もちろん、先生としての責任もあるでしょうけど……それよりも血が騒ぐってことじゃないかしらね」

マジか……


俺「練習とかキツそうだなぁ……」

そういうの、苦手なんだよなぁ


四季島「まぁ、多少はキツいだろうな。何せ時間がないからな」

そう、だった……


今日が11月17日で……本番が今月末の30日だから

2週間しかないんだよな


間に合うのか……?


俺「セリフ覚えるの、自信ないな……」


四季島「大丈夫だろ。ある程度覚えれば、後は流れで身につくから」

そんな事ができるのは、お前だからだよ!!


堀北「一緒に頑張りましょう。きっと千秋達も手伝ってくれるから」

そう、だけど……


俺「ホントに俺と四季島が主役なのか?」

他にいるだろ?

俺じゃなくて、適任のやつとかさ


四季島「俺が相手じゃ不服か?」

そういうわけじゃないんだけど……


俺「お前、女装する事になるのに良いのかよ?」

まぁ、お前なら女装だろうとバッチリ映えるだろうけど……


四季島「構わないさ。何事も経験してみないとな」

うわぁ……


俺「そうかよ……」

前向きっていうか、なんていうか……


堀北「もしかして、イヤだった?」

まぁ、好き好んで女装したいとは思ってないけど


俺「もう、慣れたから」

別に構わないよ


四季島「お前、普段から女装してるのか……?」

なんでそうなるんだよ⁉


俺「違う!ただ、最近はその、そういう機会が多かっただけで」

なんか、ちょっとづつ俺が自分から女装してるみたいな認識になってきてない?


四季島「そうなのか……その時の写真とかないのか?」

あるわけねーだろ⁉

誰があんなもの残すか!!!


堀北「あるわよ」

ちょっと待って⁉


俺「堀北さん⁉」

なんで写真なんて撮ってるの⁉


堀北「え……?ダメだったかしら?」

そんなキョトンとされても、俺の方が困惑してるんだけど⁉


俺「なんで、って言うかいつの間に写真なんて」

カメラを向けられた記憶ないんだけど⁉


堀北「舞台上で頑張ってる姿は、やっぱり残しておきたいのよ」

そんな決意の籠った感じに言われても……


四季島「舞台?」


堀北「そうよ。妹ちゃんの文化祭でね」

あ~あ……


四季島「見せてもらえるか?」

なんでそんな興味津々なんだよ⁉


堀北「ええ、いいわよ。コレよ、この真ん中がそう」

スマホで撮った写真を四季島に見せる堀北さん

確かあの時後ろの方にいたはずなのに、よく撮れたな……


四季島「なっ、コレがそうなのか⁉」

まぁ、驚くよな……


堀北「ええ、そうよ」

化粧をした堀北さんが自慢気にしてる……


四季島「これは、凄いな……」


俺「それより、練習しないでいいの?」

何か、俺達だけ分けられたって事は何か意味があるんでしょ?


堀北「そうね、そろそろちゃんと練習しましょう」


四季島「ああ、そうだな。すまない」

やっと練習始められるな……


一番最初は、演目タイトルと簡単な説明をナレーションが言って

その後、美女こと俺のセリフが入る


場面転換して、今度は四季島のセリフが入って


その後、街の様子とかで領民1とか2と俺が会話する感じなのか




練習を始めて少し経つと、裁縫が得意という事で衣装係になったクラスメイトがやってきた


「さ、採寸いいですか⁉」

と緊張した女子が四季島に声をかける

あんなに緊張してたら、手元が狂うんじゃないか?

大丈夫なのかな……


俺の方へ来たのは男子だし、何か慣れた感じで各部を計測していく


俺「手際がいいね」

妹と買いに行った服屋さんの人みたいだ


「そっすか?これくらい俺にはフツーっすよ」

へぇ、凄いな


俺「それで、衣装ってどんな感じの」

「黙っててください。ズレると困るんで」


俺「そっか、ごめん」

黙って採寸されて、採寸が終わるとそのまま離れて行く男子


そして、四季島はまだ採寸が終わっておらず

4人の女子に囲まれていた


俺を採寸した男子が担任に何か話をしてる

何か報告してるっぽいけど、何話してるんだろ?


そんな風に思ってみてると、担任とさっきの男子が戻ってきた⁉


担任「すまないが、お前の衣装は当日ぎりぎりになるかもしれない」

え?


俺「そうなんですか?」


担任「ああ、間に合うかどうかも怪しいそうだ」

あ~……だとすると、やっぱり俺は適任じゃなかったって事になるんじゃないかな⁉


俺「衣装が用意できないなら、やっぱり俺は主役を降りて」

どうせなら裏方組の方へ入れてもらえないかなぁ


堀北「あっ、……でも、あの衣装はどっちかって言うと」

どうしたの?


担任「堀北、どうした?」


堀北「先生、彼の役を変える事はできますか?」

役を変えてくれるの⁉


担任「それは、主役から降ろすって事か?」

おお、マジで⁉

やった!!


堀北「いえ、そうではなくて」

うん?


堀北「彼にジュリエット役をやってもらうんです」

な、何言ってるの⁉


担任「それは、四季島次第だが……なんでだ?」

まさか、あの服をコッチの文化祭でも着ろって言うんじゃ⁉


堀北「これを見てください」

スマホを取り出して、さっき四季島に見せた画像を担任達に見せる


担任「これが、どうかしたのか?」

ヤメテ!


堀北「ここに写ってるのが、彼なんです」

あ~~~~~~……

俺、堀北さんに何か悪い事した⁉

何か恨まれるような事したかな⁉


担任「……冗談ではないようだけど、この服は」


堀北「彼の持ち物です」

いや、間違ってはないけど!!

その言い方だと、俺が女装趣味みたいに聞こえるでしょ⁉


「もうちょっと詳しく見せてもらってもいいっすか?」


堀北「ええ、どうぞ」

食い入るようにステージ上の俺を観察する衣装担当君

そういえば、こいつ……誰だっけ?

クラスにこんな奴いたか?


担任「A、コレはまだ持ってるんだよな?」

そんな簡単に捨てはしないよ


俺「それなりに高かったんで、捨ててはないですけど」


担任「明日、持ってきてくれ」

これ、学校に関係ない物だけど⁉


俺「え……」

マジで?


「俺も見たいっす」

俺は持ってきたくないっす!!


担任「四季島、お前の意見を聞きたいんだが」


四季島「問題ないです。お任せします」

まだメジャーを巻き付けられて動けない四季島

早く、解放されるといいな……


担任「それじゃ、四季島とAの配役は入れ替えよう」

あ~、はいはい

どうせ、俺の意見は聞かないんですよね~


あ~あ……、折角の文化祭が

思い出したくない感じの想い出になりそうだなぁ……

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