第460話 電話越しの本人確認

俺「えーっと……」

どうしようかな


Y「その、こんな事に巻き込んでごめんなさい」

いや、多分……今の話は全部俺のせいだ


俺「大丈夫だと思うから、ね」


男性「それで、どこの誰なんだね?君に情報を漏らした不届き者は!」

不届き者か……


女性「情報元を話してくれるなら、謝礼を払おう」

いや、えっと……


俺「ご迷惑をおかけしたくないので」

言いたくないなぁ

下手したら、アナタ達クビになっちゃうかもしれないし……


男性「大丈夫だ。悪いようにはしないと約束しよう」


俺「どうなっても知りませんよ?」


男性「うん?」


俺「私に話してくれた知り合いというのは……四季島太一君です」


男性「四季島……太一、だと⁉」

う、うん


俺「そうです」


男性「き、きき、君は何者なんだい⁉」


女性「落ち着いてください所長!こんなわけの分からない女と御曹司様が知り合いなわけないじゃない!!出任せに決まってる!!」

いや、まぁ、そう思うよね……


もうこの人達に説明するのも面倒だし、スマホで電話しちゃおうかな

どうせ、四季島には謝らないといけないだろうし


俺「ちょっと失礼しますね」

スマホを取り出して、四季島へ電話する

数コールの後に通話が繋がった


俺「あ、もしもし」

出来るだけ高く、且ついつもの感じにも近づける


四季島『どうした?……というか、お前Aか?』

怪しまれてる⁉


俺「そうよ。今は訳があってこんな話方なのだけど」

察してくれ……!


四季島『お前、気持ち悪い事してるな……』

酷いな⁉

まぁ、気持ち悪いだろうけどさ


俺「そんな事より、ちょっと聞きたい事があるの」

いいか?


四季島『話し方は戻せないのか……分かった、また何かに巻き込まれたのか』

そうだよ!

悪かったな!!


俺「うん、そうなの。聞きたい事って言うのはね、えーっと「関西DNA研究所、特別試験技術室」って知ってる?」

そこの人とトラブってるんだけど……


四季島『そりゃ、知ってるが……どうしたんだ?』

やっぱり、知ってるのか……


俺「そこの室長って人に、えっと、絡まれちゃって……」

どうしたらいい?


四季島『何をどうすれば、その人物と接点が生まれるんだ……』

俺だって、接点なんて欲しくなかったよ


俺「兎に角、四季島と友達だって説明してほしいのよ。(それと、俺がAだって事は伏せてくれ)」

小声で念のため付け足してお願いをする


四季島『それは、まぁ構わないが……とりあえず変わってくれるか?』

良かった


俺「うん、今変わるね」


四季島と繋がったまま、スマホを男性に渡す


俺「お話ししてください」




男性「もしもし?」


男性「は?太一?そんなウソは止めなさい!」


男性「私は騙されないぞ!君の声など聞いた事もない!!もし君が本人だと言うなら、証拠を示しなさい」


男性「…………は⁉いやいやいや、そんなはず……そんな、なんで……健太郎様⁉」

あれ?

健太郎さん?

今日は一緒にいたんだな……


男性「は、はい⁉すいません!!はい!!えっ⁉この子が……すいません!この方は、健太郎様ともお知り合いだったなんて……はい、はい、失礼します」

途中からペコペコ頭を下げながら通話していたけど

相手にはその動きって伝わらないんじゃ……


男性がぎこちない動きで俺にスマホを返却してくれる


男性「その、失礼しました……」

渡してくれたスマホはまだ通話が繋がったままだった


俺「はい、もしもし?」


健太郎『やぁ、私だよ』


俺「健太郎さん」


健太郎『A君、今君の置かれてる状況はリアルタイムでこちらに届いているよ』

え⁉


俺「それは、どういう」


健太郎『彼女が緊急で連絡を入れてくるから、何事かと思ったけど……大丈夫そうで安心したよ』

彼女?

一体、誰が……?

きょろきょろと周囲を見るけど、それらしき人は一切見当たらない


太一『父さん、もういいだろ?』


健太郎『そうだね。それじゃ、楽しい文化祭を』


太一『はぁ……、簡単に説明すると、お前を監視している者から通報があったんだよ。お前に危機が迫っているってな』

監視してるって……あ!


俺「あの人、今ここにいるの?」


太一『ああ、今もすぐそばでお前達を監視している。それと、お前は俺の近しい友人と言っておいたからな』

ありがたい……


俺「ありがとう、助かるよ」

これで、あの人達に絡まれないで済むな


太一『あとはお前に任せるから、上手くやれよ』

え?

何それ⁉


太一『それじゃ、また明後日に学校でな』


俺「ちょ、まっ」

切られた……


通話を終えて、スマホをしまうと

俺に視線が集まっていた


男性「非礼をお詫び申し上げます」

女性「申し訳ございませんでした」

2人の大人が俺に頭を下げる


俺「え⁉」

何でいきなり謝ってるの⁉


男性「太一様と、その近しい間柄だとは知りもせず……どうか、お許しください」

え?


Y「えっと、お姉さま?これは……?」

あ~、えっと……


俺「後で説明するから、ちょ~っと待っててね」

さて、この2人どうしようか……


男性「その、お嬢様をお連れするように所長から頼まれて」

あ、そうだよ!

最初はその話だったじゃん!!


俺「Yちゃんは、まだ帰りたくない。そうだよね?」


Y「はい。私は、最後まで参加していたいです」


俺「と、言うわけだから無理やり連れ帰るのは止めてもらいたいのだけど?」


男性「はい。畏まりました……所長には私が」


女性「でも、そんなことしたら室長は」

何か訳アリっぽいなぁ


俺「Yちゃんのお父さんって、怖い人なの?」

だとしたら、ちょっと困るなぁ

この状況の責任として、俺が話そうと思ったんだけど……


Y「いいえ。お父様はとても優しいわ」

え?

でも、そこの男性は悲壮感漂わせてるんだけど……


俺「じゃ、じゃあさ。自分でお父さんに電話して許可貰おうよ」

今日は最後まで文化祭を楽しみたいって


Y「はい!」

Yちゃんが電話する気になると、男性がスマホを取り出した

少し操作をして、すぐにスマホをYちゃんに渡す


Y「あ、ありがとうございます」

耳に当てるYちゃん


通話が繋がった瞬間、音漏れにしては大きすぎる声が聞こえてきた

はっきり聞こえてしまった声は

こう叫んでいた


「いつまで時間をかけているんだ!!早く娘を連れて帰ってこい!!!」と

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