第459話 男性と女性の正体は……

男性「なんだね?私達は今取り込み中なんだが?」

大人ぶってんじゃねーよ


俺「私はそこのYちゃんに用があるだけですから」

お前らは帰っていいよ?


女性「聞こえなかったの?取り込み中って言って」

お前こそ聞こえなかったのか?


俺「私が用があるのは、Yちゃんだけです。関係ない方は黙っててくださる?」


Y「え……、お姉さま⁉」

余計な事かもしれないけど、割って入らせてもらうね


俺「ええ、迎えに来たわ」

ほら、俺の手を取って

ここから離れるよ


Y「あっ……その、ごめんなさい」

何故かYちゃんは、俺の手を取らずその場から動こうとしない


俺「どうしたの?」

ほら、来るんだ


Y「その、私……私」

上手く言葉にできないのか

または、何を言っていいのかすら分からないのか

言葉に詰まるYちゃん


しかし、その手は固く握られていて

何かを我慢してるのは、一目瞭然だ


男性「どうやら、お嬢様は行きたくないようですので。どうぞお引き取りください」

勝ち誇ったような声で、俺に放った


俺「そうはいかないわ、この後まだステージがあるのよ。Yちゃんにも出てもらわないと」

バンドでキーボードが居ないなんて、ダメだと思うからね


女性「ですが、お嬢様は行きたくないと」

そう言葉にしたか?

いつ、Yちゃんが、俺に言った?


俺「そんなこと、私には関係ないですよ。同じグループのメンバーに途中で帰られたら迷惑なんですよ。やるからには最後まで、きっちり終わらせてもらわないと困ります」

寧ろ途中抜けが許されるのは、ゲストの俺だけだろ?


Y「でも……」


俺「言いたい事があるなら、言って頂戴。私は貴女の言葉が、気持ちが聞きたいの」

本心では、どう思ってるの?


Y「私は、まだ、帰りたく、ない……でも、私は」

父親に逆らえないって?


俺「なら残りなさい。私もその方が嬉しいわ」


男性「困りますねぇ、そんな勝手な事をされては」

こいつ、ホントうぜぇな


俺「どうぞ、勝手に困ってくださいませ。私はアナタに毛ほどの興味もございませんから」

寧ろ、もっと困れクソ野郎


女性「アナタねぇ!」

んだよ?


俺「そもそもアナタ方、何者なんですか?いくら文化祭だからって関係者以外は立ち入り禁止ですよ?」


男性「私どもは歴とした関係者ですよ。こういう者です」

渡してきた名刺には

関西DNA研究所 特別試験技術室 室長

の文字があった


なんだよ、SPとか秘書とかそういうのかと思ったら違うのかよ……


俺「これの何処に関係者である事が書かれてるのですか?」

ただの名刺じゃん


男性「その研究所の所長が、私達の雇い主でありそこにいるなお嬢様の御父上なんですよ。ご理解いただけましたかな?」

へぇ、Yちゃんのお父さんも所長なんだ


俺「そうですか。ではやはりなんですね。家族でも親戚でもなくて、招待されてすらいないのですから」

だったら警備員でも呼べば解決するかな?


女性「お嬢ちゃん、屁理屈が得意なようだけど。あんまり大人を困らせるのは良くないわよ?」

それで、脅してるつもり?


俺「わー、怖い……とでも言うと思いましたか?」

残念でした!

もっと凶悪な奴らと、何度も遭ってきたから

その程度の脅しじゃ、全然怖くないんだよ


女性「大人を揶揄うのも大概にしなさいよ!」

は?


俺「揶揄ってなんていませんよ。それにアナタは何なんですか?部外者のくせに話に割って入らないでほしいのだけど?」


女性「部外者ですって⁉」


男性「まぁまぁ、落ち着いて。彼女は私の補佐をしてくれてる同僚なんだ」

へぇ~

ってことは2人とも研究所の人なんだ


俺「無知なもので申し訳ないのですが、その研究所ってそんなに凄い所なんですか?」

研究機関なんて、全然知らないからさ

知ってるのは、四季島の所と父さんの所くらいだし


男性「まぁ、には理解できないだろうけどが教えてあげよう」

それは、ありがたいね


男性「我々の研究所は、名前無しと名前持ちの遺伝子の違いを調べているんだよ」

へぇ、そっか

なら、四季島や父さんたちの研究に近いのかな?


俺「M-DNAとN-DNAの違いかぁ」


男性「な、なぜ一般人である君がその単語を知っている⁉」

あれ?

コレって、機密事項だったの?


俺「知り合いにも研究してる人がいるので」

言っちゃマズかったのかなぁ


男性「知り合いだと⁉誰だね、そんな重要な情報を漏洩してるのは⁉言いなさい!すぐに対処しなければ」

あ~、言っちゃマズかったのか……

ゴメン、四季島と父さん!!


俺「えっと……」

どうしよ……コレ言って大丈夫なのかな?


男性「早急に上層部へ報告しなければ……今日のうちに連絡が付くだろうか……付かない場合は直接面会に行って……」

何か大事になってきてる⁉


俺「そ、その上層部って一体……」

何処の誰なんだろ……?


男性「上層部とは、我々研究所に資金援助をしてくれてる方達だ。何か情報が漏洩していれば、すぐに報告するように言われている。我々には報告義務があるんだ」

へ、へぇ……


俺「資金援助って事は、大きな企業とかですか?」

頼むから、違ってくれ……


男性「そうだとも!我々を支援してくれてる大事なスポンサー様だよ」

スポンサー様、か……


女性「室長、あまり詳しく話しては……」

うんうん!

俺が聞いておいてアレなんだけど、あんまり詳しく言っちゃダメだと思うな


男性「その子から、情報元を聞き出せばより大きな支援が受けられるかもしれないんだ」

な、なるほど……

マズい事になったな……


俺「どうしよ」

何か、話が逸れまくったな……


Y「お姉さま……?」

あ、うん


俺「大丈夫だろうから、ちょっと待っててね」


Y「は、はい……」


男性「公開情報ではあるが、調べる手間を省かせてあげよう。我々の研究所のバックには……あの、四季島グループが付いているんだ!どうだい?四季島グループは知っているかい?」

あ~……


俺「国内医療のトップの」

もしかして、違う四季島グループがあったりは……?


男性「そうだとも!四季島グループが我々の研究を支援してくれているんだ!」

しないよね……


俺「その、それは……えっと、お疲れ様です」

俺って、その研究の関係者なんだよなぁ




俺(あ~~……どうやってあいつ四季島に謝ろうかな……)

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