第398話 掲示物

俺たちは、まず3階へ上った


俺「なんで、3階?」

階段キッツイ……


佐々木「勘!」

勘なの⁉


俺「はぁ……」

しんどいなぁ


佐々木「ふふ、こうやって二人で歩いてると……デートみたいだよね!」

デート?


俺「いや、全然違うんじゃない?」

学校でデートは無いでしょ


佐々木「だから、何で君はそうやって即否定するのかな⁉」

違うもんは違うと言っておかないと……

誤解を与えちゃダメだし


俺「デートにしては、場所が悪いよ」

学校だよ?


佐々木「た、確かに……ムードが足りないね」

ムードのある学校は、通いたくないなぁ

そんなくだらない事を話ながら歩いていると


ふと、1枚の掲示物が目に留まった


何々……『佐々木乱子、またやった!』

壁新聞か


内容は……


2年生名前持ちのTOP3に入る佐々木乱子氏が、またも男子生徒達を泣かした。

事の発端は佐々木乱子親衛隊(通称・乱親)のメンバーに、こう呟いたのが原因だという

『眼鏡って素敵よね』

この発言を受け、乱親メンバーは一斉に伊達眼鏡を購入

翌日には2割程眼鏡を装着した生徒が増えるという、珍事が発生した


(何やってんだよ……)


しかし、この時はまだ眼鏡を装着した生徒達が泣くことになるとは誰も思わなかっただろう。


(眼鏡をかけた生徒が、泣く?)


翌日、我々新聞部が乱子氏にインタビューを試みた結果

驚愕の回答が返ってきた!!

『え?眼鏡?別に好きじゃないですけど?』

先日の『眼鏡って素敵よね』とはなんだったのか⁉


その事について質問すると

『あれは、小説の中に眼鏡をかけた素敵な登場人物がいただけですよ?』

という事だったらしい


では、現実で眼鏡をかけた男子には何か思い入れはないのか

と質問をすると

『無いですね』との事だった


このインタビューの一部始終を聞いていた乱親メンバーが、泣きながら教室を飛び出した

この事で眼鏡を新たにかけた乱親メンバー及び、元よりかけていたメンバーは涙を流し膝をついた


これが、今回の騒動『眼鏡勢の敗北』の全てである







俺「う~ん……」

なんとも酷い記事だな


佐々木「ん?どうしたの……ちょっ、何読んでるの⁉」

見て分かるでしょ?


俺「壁新聞」


佐々木「それ、デマだから!偽物だから!!」

え?

そうなの?


俺「そっか」

なら良かった


佐々木「私は『眼鏡って素敵よね』なんて一言も言ってないし!」


俺「そうなんだ」

じゃあ完全なフェイク記事か


佐々木「私は『眼鏡いいなぁ』って言っただけなの!」

うん?


俺「それは……」

どういう事?


佐々木「眼鏡をかけたキャラが、中指でクイってする仕草がいいなって言ったの!」

あ~、あれね


佐々木「しかも、読書中に呟いた独り言なの!」

無意識に口を突いて出た言葉か


佐々木「それをあたかも、私が眼鏡好きみたい拡散して……」


俺「なるほどな」

そういう事だったのか


佐々木「それに、自称親衛隊の人も簡単に泣きすぎなんだよ。傷付きやすいにも限度があるよ!」

それは、可哀そうじゃない?


俺「まぁまぁ」

落ち着けって


佐々木「はぁ、ホントこの後大変だったなぁ」

まだ、何かあったの?

多少気になるけど、遠い目をしてるし

聞かないでおこう……


俺「えっと、とりあえず手掛かり探そう!」

その為にここまで来たんだし


佐々木「うん」

少しだけ元気が無くなったな


それくらいのテンションでいてくれると、会話しやすくて助かるんだけどなぁ……

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