第397話 厨二の佐々木さん

「そこの男子!アナタ、何者⁉まさか、私を倒しに来た勇者⁉」

え?何?

勇者?


俺「えっと……?」

横にいる佐々木さんに助けを求めるが


佐々木「もう……いやぁ……」

厨二の自分を目の当たりにして、心が折れてるな


俺「えっと、初めまして?」

でいいんだよな?


「え?あ、はい。初めまして」

ペコリとちゃんとお辞儀をする自称魔王の女の子


俺「俺は……こっちの佐々木さんの友達です。決して勇者とかじゃないです」

隣で放心状態の佐々木さんを使って自己紹介する


「ふむ、ならば……私も歓迎します」

そこは我じゃないんだ……


俺「ありがとう」

何だ、話せばわかる子じゃん


「……えっと、その」

なんだ?

キャラぶれっぶれだけど、いいのか?


俺「何かな?」


「あ、あの……いいいいい今、付き合ってるひ、人いますか⁉」

う~~ん……

なんでその質問が最初に出てくるのかなぁ?


俺「なんでそんな事聞くのかな?」

会って間もない人に、交際してる人がいるか聞くなんて

不躾にも程があるよね?


「そそそそ、それはっ」

視線を上下、右左と動かして必死に理由を考えてるのが分かる

そして、あ!と何かを思いつく


「ふっ、ソナタには強い魔力を感じるのだ!その魔力の強さ、我の伴侶になるに相応しい!よって、ソナタには我の伴侶と!」

顔の前に手を持ってきて、恰好つけてる……

色々残念な子だ!!


俺「ならないからね?」

この子、大丈夫かな……アタマ


「えぇー⁉なんで⁉なんで即答なの⁉」

むしろどこに一考の余地があると?


俺「当たり前だろ……」

佐々木「そうだよ!アナタなんか相手にされるわけないでしょ!」

いや、佐々木さん?

アナタもそうだったでしょ?


「くっ、さてはさっき言った事は嘘で本当は付き合って」

俺「ないから!」

なんでそうなる⁉


「なら、なんで⁉」

泣くな!

それは卑怯だろ⁉


俺「なんで……?いや、えっと……」

どう言えば傷付けないで済むかなぁ


佐々木「彼にはもう心に決めた人がいるんだって!」

え⁉


「そ、そっか……なら仕方ないね」

そんなあっさり納得するの⁉


俺「ごめんね」

もう何でもいいや

とりあえず乗っかっておこう


「ううん、そういう事なら……」


俺「さて、それじゃ何か手掛かり無いか探しに行こう」

ここに突っ立ってても手掛かりは得られないだろうし


佐々木「うん」

厨二の佐々木さんと別れて、校舎の方へ向かう



少し歩いて、気がついた


廊下を歩く足音が、1つ俺の……2つ佐々木さんの……3つ誰の


バッと振り返ると、そこには別れたはずの厨二の佐々木さんがいた


「ひっ⁉」

驚いて硬直してるけど……


俺「何で、付いてきてるの?」

驚いてるのは俺の方だよ!!


「何か、手伝えないかなって」

あ、そういう事か


俺「いや、大丈夫だよ。気にしないで遊んでおいで」

そして、その病を治しておいで


「……わかりました」

チラっと隣の佐々木さんを見て、渋々といった感じで俺達とは反対の方向へ駆け出して行った

マントを翻して


俺「佐々木さん」


佐々木「何かな?」


俺「1つ聞いていい?」


佐々木「何?」

今、明らかに不機嫌そうな“何?”になったな……


俺「あのマントなんだけどさ」

よくはためいてて、気になったんだけど


佐々木「マント?」

そうそう


俺「どこで買ったの?」

それと幾らくらいしたのか、気になる


いや、欲しいわけじゃないんだ!

ただ、知的好奇心というかなんというか……!


佐々木「あれ、私の手作りだよ」

え?


俺「手作り?」


佐々木「うん。モノ作り、得意だったから」

マジか……


俺「すげーな……」

器用だなぁ


佐々木「因みに、あの仮面も手袋も手作りだよ」

思い出したくない記憶なのか、段々と声のトーンが下がっていく


俺「えっと、凄い特技だね!」

ここは、褒めておこう


佐々木「ははは……ありがと」

目が死んでる⁉

ヤバイ!

話題変えないと⁉


俺「あ、そうそう。まずはドコに向かう?」

どこかの教室?

それとも職員室とか?


佐々木「う~ん……ま、テキトーに歩いてみよ」

テキトーか


俺「おっけー」

まぁ、目的はあるけど目的地はないし

歩きながら探すしかないか







旧校舎を出て、渡り廊下を通り


いつも授業を受ける校舎へ戻ってきた

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